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『秋山とパン』

舞台は東京都港区麻布台。キャストはロバートの秋山さん一人。街をゆっくりと歩き、正面から手持ちカメラが捉える、いわゆる「街ブラ」風の構図。目的のパン屋がわざとらしく紹介され、VTRが詳細を説明する。アコースティックな「オシャレ系」のBGM。光量の多いカメラ。奥のイートインに腰掛ける秋山さん。パンを片手に持ちながら、店員相手に「高輪ゲートウェイ」の話を語り始める。



テレビ朝日の新番組『秋山とパン』が面白かった。Twitterで飲用さん(@inyou_te)の紹介で知ったのだが、“異質”で、"新しい”感覚の“お笑い”番組で、とにかく面白かった。



「ボケ」は大きく3つ。

①冒頭のVTR部分、フランスパンをじかに持った秋山さんが屋外をキザに歩く。(衛生面を挙げるまでもなく、「普通」なロケ番組ではない、不吉な予感がただよう。)

②パンをなかなか食べない(片手に持ったまましゃべり続けるため、絶えず意識されつづける)

③「高輪ゲートウェイ」駅の名前の由来が語られるが、内容がデタラメ。(「だってそうだから絶対そうだ」の論理が、無根拠に続けられる)



ただ、水面下に

④ロバート秋山がパン屋を紹介する

という、そもそもの大きなボケがあって、そのため最終的にパンが食べられたところで、番組としての満足感が全く生まれない。



構造として、③のボケが盛り上がりかけたところで、パンの紹介VTRが“②のボケへのツッコミとして”入るという特殊な形が反復されて、番組が進んでいく。
パン屋という「間借り」の空間で、全体に手持ちカメラ・小型のクリップカメラの画が多様されるため、全体にふわふわとした不安定な印象を受ける。



この番組の面白さについて考えていくと、それは「パン」のほうに行き着くのではないだろうか。

番組全体に、パン屋特有の「オーガーニックなものの狂気」があって、それが「遅さ」「明るさ」「小麦の香り」という形で番組を充満している。
弱いドラッグを使った快感のような、「パン屋」的なものへの違和感があって、それが番組の異常さを生み出している。

(つまり「パン屋」と「秋山さん」の関係は、「フリ」と「ボケ」ではなくて、「ボケ」と「ノリボケ」の関係にあるといえる。パン屋という空間のほうが異常なのだ。)



「ロケ番組のパロディ」という認識では割り切れない面白さが、番組全体に広がっている。(触れられなかったけれど、椎名林檎さんも狂ってて最高!)次回以降どう展開していくのか楽しみ。

Tverでは10/14まで配信予定らしいので、お時間があえばみてみてください。すごく面白かったので、書いてすぐ投稿することにしました。



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