いま『ナウシカ』をみるということ
6月26日からジブリ旧作映画の劇場公開が始まりました。『ナウシカ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『ゲド戦記』の4作品です。
多くの映画館では、フルタイムで上映しているので、1日で全ての作品を観ることも可能です。いかねば。
ふたりのナウシカ
『風の谷のナウシカ』は2種類の作品があります。原作漫画版と、その連載中につくられた映画版です。この2作品は、多くの点で異なっています。
ジブリの教科書に収録されている内田樹さんの解説をみていきます。映画版についてです。
この「明るさ」と「わかりやすさ」と「さらさら感」(略)がこの映画の興行的成功の理由の一つであったことは間違いありません。(ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ)
これと正反対なのが漫画版で、「暗い」「わかりにくい」「どろどろ感」です。1巻では、世界観の紹介の印象が強いのですが、続く2巻になると、登場人物が増え、多くが怪しげなキャラクターです。
映画版は、やはり、シンプルで力強いストーリーで、友愛とラブと戦いを幻想的なラストで盛り上げています。
いま『ナウシカ』をみるということ
それでは、いま『ナウシカ』をみるということの意義を考えていきましょう。
私は、映画版が2020年の「今」を描いた作品で、漫画版が「未来」を描いた作品と考えます。
単純に腐海の猛毒は、現在を象徴しているように思われます。歴史は繰り返すのでしょうか。
宮崎駿監督のインタビューから引用したいと思います。1992年の『紅の豚』公開時のものです。バブル経済崩壊後の管理社会について語っています。
「もちろん没落期になるともっとヒステリックになるから、一段と管理が強まったりするだろうけど、同時にそれも力を失っていくだろうと。」(『風の帰る場所』)
どこか未来を予言しているように思えます。監督自身が、建設的で自然を愛する人というよりは、破壊的で社会やシステムの方に関心がある人だとしたら。
それは
わたしと
あなただけの
秘密です。
『風の谷のナウシカ』7巻
最後に
まとめます。宮崎監督自身は、「対立」する概念について「矛盾」を感じながらも、「昇華」し素晴らしい作品に仕上げています。その矛盾を含んだ作品としてのアート性が、宮崎ワールドの魅力のひとつではないでしょうか。
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