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コンビニのおしぼり

今回はサービスはやると決めたら徹底したほうがいいですよ、というお話をしたいと思います。

わたしのコンビニでの体験を例にあげて説明します。

コンビニはちょうどいい品揃えとサービス、そして身近なロケーションが特徴です。

みなさんもこれまで、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなどに何十回、何百回と足を運んで“顧客体験”していますよね。

2017年現在、コンビニは全国に55,000店舗存在するそうです。その大半はいわゆる「チェーンストア理論」に立脚し、商品構成や店舗デザイン、オペレーションなどすべてが標準化され、本部主導で効率的に運営が行われています(まれにスーパー風、ドンキ風、ビレバン風のような異端児店舗も見受けられますが)。コストダウンを実現することによりさらなる多店舗展開を推進していく、というビジネスモデルで全国各地、はたまた世界各国にまでその勢力を伸ばすことで常にわたしたちにとって身近な企業であり続けています。

コンビニはもちろん、ファーストフードやレストランチェーンなどには厳然としたマニュアルが存在しており、これを“徹底”することでブランドを保っています。

わたしが日常的に通うコンビニはいくつかあるのですが、その一つにお弁当などを購入した際に「おしぼりを渡すときと渡さないときがある」店舗があります。

おしぼりを渡されなくてもわたしはそれを気にはしませんが、「気にする人はいるだろうな」とは思ってしまうわけです。この事象の背景に「おしぼりくれなかった!」と怒る人がいることが容易に想像できます。それを言葉にする人もいるでしょうが、黙って立ち去る方が大半でしょう。

おしぼりは本来“付加価値”という位置づけで、必須のサービスではありません。少なくともわたしはそう認識しています。実際に渡さない店舗がたくさんあるからです。付加価値だと分かっているからこそ、「おしぼり下さい」と要求せずに立ち去るのです。一方、もし箸を入れ忘れられたら、「入れてください」と店員に直接お願いをします。それを必須サービスと認識しているし、実際にそれがないと困るからです。

こういう風に、サービスの種類によって客側の認識やリアクションは変化します。

では店側はどうなのか。

お店にとってすべてのお客様が大事だということは建前としては大前提となりますが、お客様にもいくつか種類があり、本当のところわれわれは序列をつけて応対しています。あなたも一見のお客様より常連様を大事にしていますよね?

潜在客(Suspects):買う可能性がある人
見込み客(Prospects):買う可能性と能力のある人
お客(Buyers):初めて買ってくれた人
顧客(Customers):2度以上買ってくれた人
得意客(Clients):いろいろ買ってくれた人
贔屓客(Advocates):いろいろ買って、紹介してくれる人

などなど、調べればたくさんの分類がみつかります。わたしたちは営業の中で、どうやったら業績を最大化できるのか頭をひねらせ、これらの階層それぞれにリソースを適宜配分しているのです。

間違いなく言えることは、一番大切にすべきは贔屓客=常連客ということです。これはたぶんどの業界でも同じ。有名なパレートの法則で、上位2割のお客様が全体売上の8割を占めていると言われていますからね。

わたしは“おしぼりをくれなかったコンビニ”の常連客です。常連客だからこそ、おしぼりを渡すときと渡さないときがあるという店側のサービスの不徹底に気づくわけです。

もしわたしが一見客だとしたら、この店舗では通常行われているはずのサービスが自分には提供されなかったという事実に気がつきません。

コンビニ側としては本来親切心で多額のコストを払っておしぼりサービスを提供しているはずが、それを一番伝えたい常連客の印象に残るのはお店の親切心ではなく不手際の方かもしれません。そして接点が多くなればなるほどより印象が強くなる。

これは不幸な関係と言えます。

お客様思いのコンビニとそのコンビニを気に入り足繁く通う常連客。いわば相思相愛の関係です。本来なくても困るわけではない付加サービスだからこそ客側は不備を指摘しづらく、ゆえに店舗は気づきづらいし改善も遅れる。知らず知らずに擦れ違い、お互い気づくことなく徐々に距離が離れていく・・・。

こういった不幸な状態を防ぐためには、自分たちでチェックすることが必要です。はたしてわたしたちは“徹底”できているのかと。

具体的には定期的に研修を行ったり、マニュアルを確認しなおしたりといったところでしょうか。

できているつもりになるのが一番危険です。

常連のお客様は優しいです。好きで通ってくださっているわけですから簡単には離れていきません。でも、仏の顔も三度まで、が通用するうちに改善しましょうね。

“徹底”を貫くことで信頼が積み重なり、そしてお客様の信用の上にブランドが築かれるのです。

このように自分自身の一消費者という側面から物事を見返してみると、見える景色が変わり、よりお客様の気持ちに寄り添った考え方ができるはずです。

そしてそれを、今度はサービスを提供する側の立場から、どのようにしてお客様に喜んでいただくか、あるいは不快な思いをさせないで済むか、具体的な施策として落とし込んでいくのです。行動が変わらなければいくら考えても効果が上がりません。伝わりません。

わたしが通う「おしぼりを渡すときと渡さないときがあるコンビニ」はしっかりした人が多いので、きっと近いうちに「おしぼりをきちんと渡すコンビニ」になっていると信じています。

せっかく特別なサービスを行うなら徹底しましょうね、やってるつもりにならずに自分たちでちゃんと確認しないとだめですよ、というお話でした。

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