心が疲れたら動物園に行こう
動物園が好きだ。
マニアほどではないが、旅行先に動物園があったら寄ってしまう。そのくらい好きだ。
水族館も好きだ。
でも、水族館はちょっとお洒落な時に行きたい。
デートとか、プラネタリウムと一緒に、とか。
動物園はそうではない。お洒落な雰囲気は必要ない。そこにいる動物たちがただのびのびとしてくれていれば良い。
また、動物園には家族連れが圧倒的に多い。カップルや友人同士もたまに見かけるが、大抵は家族連れだ。
動物園の、そこも良い。
羊に興奮して「かわいい!!!かわいい!!!」と叫びまくる子どもや、熱帯の鳥にビビりまくって固まってしまう子ども。まだ食べられていない動物がいるからといってエサやり体験を無限にせがむ子どもたちと、それを止める親たち……。
普段あまり子どもに触れずに生きているため、そういった光景を見ると親御さんたちは大変だろうとは思いつつも、にこやかになってしまう。
一体、あのくらいの頃の純粋な気持ちは、どこへ行ってしまったんだろうか?
私は、動物園へはいつも決まった友人と行く。
その子と私は好みが似ており、私たちは一日中でもモルモットふれあい広場にいることができる。(実際はモルモットにも他の人にも迷惑なのでしない)
↑共同の飲み水に遠慮なく手を浸けるモル
つい先日も、その友人と動物園に行った。
平日だったので人は少なかった。山中の広大な土地だったので、そう感じただけかもしれない。
友人は、都会の生まれなので山や田園風景を見るだけでジブリみたい!とはしゃいでいた。
そうか、都会の人からしたらこれも新鮮な光景か…と感動したのだが、私も初めて渋谷に行った時はビル群に大興奮だったので、黙っていた。
訪れた動物園は、色んな動物がエリアごとに放し飼いされているのが印象的だった。
特にカンガルーが柵なしで見られることには驚いた。
距離だけでいえば一歩前へ進むだけでカンガルーに触れるのだが、私も含め、誰も近づこうとはしなかった。なんとなく、近づき難かった。
私は動物が好きだが、動物に触れるのは割と怖い。
動物の中でも特段カピバラが好きだが、カピバラを目の前にすると一定の距離をとって話しかけてしまう。
カピバラは結構でかいというのもあるが、心のどこかでこいつには勝てないと思ってしまうからだと思う。
↑意外とデカい 大型犬と同じかそれ以上?
他の動物にしたってそうだ。亀や鳥も、触れる距離だとなんか少し怖い。色鮮やかな鳥は特に怖い。柵があれば綺麗だと思うだけなのにどうしてだろう。
私が動物園を好きなのは、柵や檻によって無力化された動物を見ることができるからなのだろうか?
なるほど、動物園批判者の気持ちも少しわかった。
確かに無力化されて見せ物にされる動物たちは可哀想だ。
でも、私が動物園を好きな理由は、ただ安全な場所から動物をかわいい〜と見ていられるからという理由だけではない。
もう一つの理由は、普通に生きていては出会えない生き物たちと出会うことができる場ということだ。
私は必ず、動物園で動物を見る時、説明文を読む。
水族館でも同様だ。まず動物をみて、説明文を読んでから、もう一度動物を見る。
そこには種名、生息地、主な餌、習性など、簡単ながらもわかりやすい説明が載っていて、とても勉強になる。ぜひ読むことをお勧めしたい。
あの説明文を読むと、目の前にいる動物が野生で生きている姿を思い浮かべることができる。
多くの肉食獣はエサ欄に「鼠」と書かれているので、私がさっき餌やりをしたモルモットのことを思い浮かべてしまったりもする。
ハイジに出てくるような山岳地帯や、ライオンキングに出てくるサバンナ、ジャングル、人の立ち入らない森林……平凡に生きていればそのような土地に赴くことはない。
しかし、動物園に行けば世界中のあらゆる自然と、そこに生きている生き物に会うことができる。
総じて思ったよりもデカい動物たちは、自然の迫力や凄みを直に教えてくれる。
また、説明文を読んでいると「絶滅危惧種」に出会うことがある。多くは人間の手によって絶滅の危機にさらされた動物たちだ。
時には、特集パネルが貼られていることもある。
今回行った動物園では乱獲によって死に至ったヨウムたちが袋からゴロゴロと出てくる写真が貼られていた。かなりショッキングだった。
写真や文字で絶滅について知るのも良い。
しかし、実際に生きて動いている動物が目の前にいると乱獲の惨さが本当によくわかるのだ。
↑絶滅危惧種ツシマヤマネコの近縁種 アムールヤマネコ
目の前で生きているこの生き物と、同じ姿形の動物がかつてはたくさん自然にいたはずなのだ。
しかし、利己的な人間の行動により、その数は減少し、そして人間の手によって保護される対象になった。
このなんとも言えぬ衝撃は、実際に見てみないときっと経験できないと思う。ネット記事を読んでいてもどこか遠い世界の話のように思ってしまうだろう。
ちなみに水族館が好きなのもこの理由だ。
地上よりも簡単には行けない海の世界を知ることができる水族館は、とても有難い。水槽の中で悠々と泳ぐ巨大なサメやクジラが、海にはたくさんいると考えるだけでワクワクしないだろうか。
↑昔行った美ら海水族館で撮影 また行きたい
動物園に行くと、普通に生きていては会えない動物たちに会うことができる。
そしてその動物たちは、確かに地球上のどこかの自然で生きている。
そんな動物を見ていると、自分の生きている世界はなんで小さいんだろうという気持ちにさせられる。
私の生活範囲には、ライオンやチーターはいない。
派手な色をした鳥も空を飛んでいないし、大きな亀が池で休んでたりもしない。
キリンは二階の窓から顔を覗かせたりしないし、象が車道を歩くこともない。
いるのは犬や猫、カラスやスズメ、狸や鹿や猪と、たまに熊だ。
世界は広い。
私が一生を過ごす範囲はとても小さい。
なんだか悩みがどうでもよくなってきた。
私が仕事でミスをしたり、誰かと喧嘩して落ち込んでいる時、世界のどこかではライオンとシマウマが生と死の駆け引きをしているかもしれない。
私は仕事がうまくいかなくても死にはしないが、シマウマは一瞬足を滑らせただけでライオンに捕まってしまう。
仕事の悩み、小さ。
全て嫌になったら海外旅行にでも行こうと思う。
今の自分の行動範囲で一生を終えるのがもったいなくなってきた。
私はまた、休日が終われば働かなくてはいけない。
しかし、動物たちを通して世界の広さを知った私からすれば些細なことだ。
ありがとう動物たち
ありがとう那須どうぶつ王国
夏が終わったら、またどこかの動物園に行こう。