見出し画像

【映画;FLEE】自分を偽ることで被る、心の傷について

まずは少し自分のことについて、お話しさせてください。
最近、長野県の中で引っ越しをしてより田舎で暮らすことにしました。

バスを一時間ほど乗ると街に出られるのですが、そこに小さくて古い映画館がありました。

そういった小さなシアターって、古い映画とかアニメ映画しかないイメージなのですが、なんだか割と面白い映画を上映していたので、見に行ってみました。

その時上映していたのがFLEEというアニメーション映画です。

実写ではなくて、アニメーションで撮影された理由も、この映画の題材に深く関係していて、気軽に観に行くには少しハードな内容の映画でした。

タイトルをよく見ると
「free」ではなく「FLEE」です。

FLEEとは、「逃げる、逃亡する」という意味です。

この映画の主人公は、アフガニスタンからの移民で、戦争によって祖国を追われ、ロシアや北欧に安息の地を求めて移動を続けます。

日本で暮らしている私にとって、「移民、難民」はニュースで聞くけれど、あまり馴染みのない存在でした。

ただ悪いことをしていないのに自分を偽って逃げなくてはならないことや、たった1人で家族もいない土地に、逃げていかないといけない不安とか、暗い船の中に大勢で閉じ込められて、嘔吐物の匂いが立ち込める最悪の状態の中で、逃げている時とか。非人間的な状況というのでしょうか、想像を絶する環境を体験することで、自分の中の不安や恐怖にリンクして、すごくみていることが辛い場面がありました。

彼の壮絶な体験を、映画によって知ったことで、今まで距離を感じていた移民や難民という状況に置かれた人たちに思いを馳せることがでるようにました。

彼らだって、大切な故郷を持っていたのです。

一度目の亡命で辿り着いたロシアは、移民が通常の生活を送れる環境ではありません。警察には不信感があり、見つかれば暴行されるか賄賂を要求されるため、隠れるように過ごさざるを追えませんでした。

亡命するためには、大金が必要で、警察や国家も移民から金銭を搾取していたために簡単には正規ルートで出国することはできなかったのだそうです。

そのために、家族を犠牲にして出国しなくてはいけなかったり、警察に見つからないようにしないといけなかったり、家族のことなど本当のことを誰にも話してはいけなかったり(詳細については是非本編をみてください)そういった体験が、徐々に人間の心を痛めつけることを知りました。

祖国を追われてから主人公を取り巻く状況は終始厳しくて、それでも、この映画を身終えたあとに、希望を感じることができました。

それは、彼がこの辛い体験を打ち明けて心の傷を認識したこと。それによって恋人との関係を改善したこと、そして新しい生活をスタートさせようという場面で物語が終わったからです。

自分に何ができるかと問われれば今すぐ、思い当たることはないのだけれど。

彼の物語を等して、大切なものを大切にするための勇気を分けてもらいました。


この記事が参加している募集

#映画感想文

66,776件

いただいたサポートは、花と民芸の表現の追求にあてさせていただきます。