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『ブラックアダム』感想

お気に入り度:★★★・・ 3 / 5 

軍事組織 インターギャングに支配される中東 カーンダックにて、英雄とも破壊者とも伝えられるテス・アダムが5000年の時を越えて復活を果たす。これを受け、アメリカ合衆国はカーンダックにスーパーヒーロー集団 ジャスティス・ソサエティを派遣。カーンダックで三つ巴の戦いが巻き起こる。

敵は躊躇なく進んで殺すけど、民衆に人気で、子供に優しく、わりとノリが良い破壊神! DCコミックス映画の傾向からしてあまり期待していなかったが、思っていた以上に「最恐アンチヒーロー」ではないな……。目的の為なら子供も殺すようなコミックスでの苛烈さがまるで見当たらない。アンチヒーローなら「ほっこり」より「ドン引き」させてほしい。

とにかく敵を殺すブラックアダムと無闇な殺生を許さないジャスティス・ソサエティ、両者は異なる正義を持つものとして一応対比される。しかしながら、カーンダックの民衆からすればジャスティス・ソサエティは根本的に頼りない余所者で、アダムは普通に救世主。加えて、アダムの暴力は大抵の場面でギャグにされているので、この対比はあまり効いてこない。

第一、ジャスティス・ソサエティがいくら人命救助をして「ヒーローは殺さない」と主張したところで、アマンダ・ウォラーなんかと協力関係があっては空虚すぎる。しかもDCEUには天下のジャスティス・リーグにも結構無闇に人を殺しているヒーローがいるんだから、「人を殺すヒーローもどきは退治するってのなら、あっちはいいんですか?」と冷めた感情も抱く。

せめてホークマンに「昔はかなり横暴なヒーローだったが、他国の政治問題に下手に首を突っ込んで厄介事を起こしてしまい、今は反省している」とか「到底容認できない非人道的なやり方でウォラーが介入するのを防ぐべく、自分が代わりに動いている」とかそれなりの事情があれば良かったのだが、そういったことを描かないのが本作である。

まあ、2時間だけでジャスティス・ソサエティのことまで描くのは難儀だとは思う。ホークマンの転生に触れないのは面倒だからのようだし(前世がクフ王という設定をアダムとのやり取りに活かしたら面白そうなのに)。メンバーをあの4人にしたのは、MCUに似た感じのキャラクターがいて観客が受け入れやすいからなんだろうな。

戦闘シーンはどれも凝っている。特に中盤の戦闘には目を見張る。されど、話としては大方アダムが一方的に敵を叩きのめすだけなので、次第に単調に感じてくる。ラスボスがもっとアダムが苦戦するくらい強ければと思うが、そうするとアダムの格が下がってスーパーマンに並べなくなるから駄目なんだろう。…お前の宿敵はシャザムじゃないのか?

全体的に戦闘ばかりでドラマが薄い上、深刻な話の最中にギャグを入れてくるのに興醒めさせられたが、コレット=セラ監督作らしくテンポは良いし、ロック様のスター性は流石のものなので、何やかんやで面白くはあった。これで戦闘シーンを削ってでも必要なドラマを盛り込んでくれていたら、もっと面白くて心に残る映画になっていただろうに。

本編後のオマケ映像は、『がんばれ!スーパーペット』のオマケ映像の焼き直しで笑った。ただ、『がんばれ!スーパーペット』のオマケ映像の方が単純にギャグとして笑えるし、「スーパーマンがアマンダ・ウォラーの言うことなんかを?」と引っかるものがなくて良い(カヴィル版スーパーマンなんて結局そういうキャラ、という感じはある)。

…本作が「アマンダ・ウォラーがヒーローたちを管理しているパラレルワールドに、管理されない叛逆のヒーローが現れる話」ということなら色々腑に落ちるのだけれど。広報がブラックアダムをアンチヒーロー扱いするのも腑に落ちる。シャザムの敵のブラックアダムは凶悪なのが別にいる、ということにもできて喜ばしい。


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