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読書日記 2024年3月

2024.04.03
いつまで続くかわからないけど読書記録を軽くつけてみる。結構自由に脱線しながら書いちゃおうと思う。最初は3月に読んでいたこちら。

絵画を読むイコノロジー入門 (NHKブックス)  – 1993/7/1

大学で学んでいたイコノロジー(図像解釈学)・イコノグラフィー(図像学)を、具体的な絵画をもとに学び直す試みで選んでみた。

イコノグラフィー
「画像(eikon)」を「記述する(graphein)」というギリシャ語をその語源とし、日本語ではしばしば「図像学」と訳される。

イコノグラフィー – artscape 2024/04/03

伝統や集団による約束の上に成り立っている主題表現の形式や、人物表現の形式を研究する学問を「図像学(イコノグラフィー)」と呼びます。

例えば絵画の中で聖母マリアは、
・真実を意味するのマント
・神の慈愛を表すの衣服
・乙女の純潔を示す白百合

これらのモチーフの組み合わせによって断定できます。誰がどう見ても聖母マリアだと分かることにより、絵画の持つ宗教的感動、ざっくりと言ってしまえばストーリー性が分かる。

「聖エミディウスを伴う受胎告知」 The Annunciation with Saint Emidius カルロ・クリヴェッリ Carlo Crivelli 1486年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵

私が好きな受胎告知を主題とする絵画を紹介したい!

建物の中にいる女性が聖母マリアなんですが、ちゃんと青のマント・赤の衣服を着ていますし、受胎告知を伝えにきた大天使ガブリエルは白百合を持っている。手前に転がってる単体のリンゴの意味は「罪」だけど、瓜にはどんな意味があるのか、手前に書かれている文字は「教会のもとの自由」だが、他に世俗的なストーリーも込められているのか…。おもしろい。

西美で見た気がする、たぶん。

衣服や持ち物でキャラクターを断定できる考え方は、現代で言うと漫画とかアニメでのキャラの書き分けとも言えそう。キャプテン翼のジュニアユース編の途中、岬くんと松山くんの見分けがつかなくなって離脱した記憶が蘇ります。だって、顔がもともと似てて、髪色もユニフォームが同じなんですもの!

西洋美術史を学ぶときに知った考え方だけど、仏像を見分ける際にも持ち物や体の分厚さなどを見るので、美術作品を「解釈する」ための手がかりとしては東洋美術史でも活用されていると思っている。

まあ…ここまで美術作品を「解釈する」と言ってはいるけど、解釈がマストではないと思っています。視覚的な感動ができたらそれだけでとんでもなく最高です。

しかし、作者が思い描いた「美」を知るために、宗教的な時代背景を知ったり、その前後に描かれた同主題の作品と比較することは役に立つと私は思います。作品に時代性が紐づいていれば、保管する理由にもなりますし。

本の中のお気に入りの部分です。長いんですが、全部必要!

絵を好きであったり、あるいはそれを研究しようと思っている人間は、必ずしも哲学的なことや、文献学的なことが好きではない。したがって、画面の美しさを見て感動するだけではなく、難解な思想や哲学を参照しなければならないのは苦痛であるかも知れない。このことから、私の先輩や同僚の学者のなかにも、そのような探索を無意味だという人がいる。かれらはしばしば、頭の単純な画家がそんなに難解なことを考えていたはずがないと言う。実は私も画家には画家の固有の頭脳があって、それは哲学者のそれではないと思っている。

画家は、哲学者のようには考えなかったであろう。もし、そうであったならば、彼は哲学者になっていたであろうから。だが、画家は、まさに哲学者が考えられないようなかたちで、やはり考えたのだ。画家だけが考えられる形式で、彼は考えたのである。

それはイメージによる思考である。イメージによる思考は、赤や白、青や金、星や花、右や左、明るさや暗さ、対角線や平行線で表現されている。哲学思想そのものを知ることは美術史の目的ではない。画家がどんな思想の枠組み(パラダイム)のなかで思考していたか。それが重要なのである。
それを知るのは、あくまでも彼の真実の創造であるイメージの構造を知るための補助手段である。

絵画を読む イコノロジー入門 (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー) – 1993/7/1 - P.58

読書は楽しいね!

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