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Osgood-Schlatter病(オスグッド) 概論と評価

6/12 評価項目大幅改編、図追加

運動会で走り終わった後、サッカーで走り回った後、ジャンプを繰り返した後、「膝が痛い」という子供たちがいます。


この症状は、少し休めばまた運動することが出来る、もしくは運動をしなければ痛みは減るのですが、また運動後に痛くなることが多いです。


子供たちの膝の痛みの原因として「オスグッド・シュラッター病」があります。この疾患は一般的に成長が終わることで膝の痛みも軽減~消失することが多いです。


しかし、慢性的に膝にストレスが加わり続けると高校生や大学生になっても膝の痛みが残存し、骨の表面が不整になってしまうこともあります。


今回は子供たちの成長期に多く生じる「オスグッド・シュラッター病」について記載していきます。


この記事の内容は
・オスグッドシュラッター病についてわかる
・オスグッドシュラッター病の評価がわかる


1.オスグッド・シュラッター病とは?

1900年代に脛骨結節の骨端症として最初に報告されています。子供の急激な成長過程と膝蓋腱を通した脛骨結節へのストレスが原因で、剥離骨折はない病態です。


疾患の病態は、膝蓋腱の軟骨付着部と脛骨結節の連続性が部分的に失われている状態で、炎症の過程が他の周辺組織に波及し、膝蓋腱炎が生じたり、脛骨結節の不規則な骨表面が認められます。


特徴として

図4

E. Circi, Y. Atalay et aal: Treatment of Osgood–Schlatter disease: review of the literature. Musculoskelet Surg (2017) 101:195–200


また、運動競技を行っている場合の方が発生率が高いですが、運動を行っていない場合でも発症します。片側での発症が多いですが、両側で発生する場合もあります。


私の臨床経験ではサッカー、野球、バレー、陸上(短距離・長距離)、水泳、剣道、新体操、バレエなど様々なスポーツで経験します。


2.オスグッド・シュラッター病の原因

一般的に考えられている原因として、反復する膝関節屈曲-伸展に伴う、膝蓋腱を介して、脛骨結節へ生じる牽引ストレスが挙げられます。この牽引ストレスにより脛骨結節にマイクロな損傷が生じます。


スポーツ活動などで、脛骨結節への牽引ストレスが繰り返し生じ、マイクロな損傷が積み重なると、膝蓋腱付着部の分離、周辺組織の炎症、滑液包の腫脹など慢性的な痛みを引き起こす可能性があります。


慢性的なものとなると、脛骨粗面が突出してきます。


3.オスグッド・シュラッター病の評価

3-1.問診・視診・触診

オスグッド・シュラッター病の評価で特徴的なものは

図5


3-2.柔軟性評価

オスグッド・シュラッター病の原因の一つに筋肉の柔軟性低下が挙げられます。脛骨粗面に付着する大腿四頭筋の硬さが上昇すると、自然と牽引ストレスも増大してしまいます。


私は必ずEly test、Thomas testにて大腿四頭筋の評価を行っています。

Ely test
目的:大腿直筋の短縮の評価
肢位・方法:腹臥位から膝関節を他動的に屈曲
判定:同側の臀部が浮き上がり、股関節屈曲が出現したら陽性
ポイントとして
①腰椎の過剰な前弯が生じていないかを確認
👉腰椎を前弯(骨盤を前傾)させることで、大腿四頭筋の短縮を代償する

②股関節が外転していない(VL・TFLの影響)かを確認
👉殿筋群からの筋膜(大殿筋・中殿筋・筋膜張筋)からの線維は大腿筋膜に連続しているため、股関節を外転させ殿筋膜の影響を減少させる代償が生じることがあります。


Thomas test
目的:腸腰筋、大腿直筋の股関節前面筋の短縮を評価
肢位・方法:背臥位とし、股関節屈曲させる
判定:運動側と反対側下肢に膝・股関節屈曲、骨盤の後傾等の運動が生じる場合陽性


Thomas test変法
目的:股関節周囲の短縮している筋肉を評価します
肢位:ベッドから下肢を出し、片側股関節屈曲させることで、対側股関節を伸展位とします。
判定:①股関節屈曲は腸腰筋 ②膝関節伸展は大腿前面筋 ③股関節外旋は縫工筋 ④股関節外転は大腿筋膜張筋の短縮の影響が考えられる。

Thomas test変法はオスグッド・シュラッター病以外にも用いることが出来るので、おススメです!


また、大腿筋膜張筋(腸脛靭帯)も膝蓋腱に付着しているので、Ober testも行うようにしています。

図10


Ober's test
目的:大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の緊張の評価
肢位・方法:検査側を上にした側臥位、股・膝関節下肢伸展位のまま股関節内転を行う
判定:大腿部が水平より下がらなければ陽性。また、左右差も比較する
ポイントとして
①骨盤の前後傾が生じていないかを確認
👉腸脛靭帯には大腿筋膜張筋、中殿筋、大殿筋の線維が合流します。線維が短縮している場合、骨盤の前後傾にて代償する可能性があります。

②腰椎の側屈が生じていないかを確認
👉腰椎の側屈にて骨盤の傾斜をさせ、腸脛靭帯・大腿筋膜張筋の短縮を代償する可能性があります。

③膝関節伸展にてより、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯が伸張されます


四頭筋は柔らかいけど、オスグッド・シュラッター病を発症する子供もいます。その場合はハムストリングが影響しているかもしれません!


ハムストリングの短縮、柔軟性低下が生じると、骨盤が後傾するため身体重心の位置が膝関節から遠ざかります。重心位置が遠くなると、四頭筋の遠心性収縮が強調され、脛骨粗面の牽引ストレスが増大します!


なので、ハムストリングもセットで評価しましょう!

SLR
目的:ハムストリングの短縮の評価
肢位・方法:背臥位から膝関節伸展位の状態で股関節を自動的に屈曲させる
判定:股関節屈曲70°以下でハムストリングの短縮

SLRはヘルニアの評価として用いられることが多いです。しかし、若年者でのヘルニアはかなり稀です。なので、私は自動・他動にて下肢の挙上を行い、ハムストリングの柔軟性の左右差を確認しています。


3-3.柔軟性以外の評価

ハムストリング・四頭筋も硬くない場合は?

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