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結局一番悪いのは誰なのか。(「罪の声」の感想)

わんあん。
ゆ。だよ。

今日は、小栗旬さんと星野源さんが出演して話題となった「罪の声」を見たので、感想を書くよ。

※画像は、罪の声公式Instagramのものを引用させていただきました!

ネタバレも含むので、ネタバレを見たくない人は見ないでね〜


「罪の声」は、ひょんなことから自分の声が犯罪に使われたことを知ったテーラーを営む曽根俊也(星野源さん)が誰がどんな意図で自分の声を犯罪に使用したのかを調べ始める。

時同じくして大日新聞の文化部記者阿久津英士(小栗旬さん)も平成最後を飾る未解決事件特集記事の担当に任命され、日本で初めての劇場型犯罪「ギン萬事件」を調べ始める。

違う場所で違う視点から同じ事件を調べる二人は、やがて出会い、二人で事件の真相へと近づいていく様子を、時代も国境も超えて、スケールは大きく、でも繊細に描く今作。


見終わって思ったことは、
賞獲りまくった理由分かるー!!!!
ということ。

まず内容の密度が濃い〜。
内容は2時間20分だけど、その時間内で収まってることが奇跡かってくらい、内容が詰まってる。

事件の概要だけでも、関係者も含めたら本当に登場人物が多くて、時代背景的な部分もかなり大きく影響してくるから本当に複雑。
しかも、阿久津の記者的な目線、俊也の目線、聡一郎の目線、達雄の目線、真由美の目線……様々な目線がしっかりと盛り込まれていて、中でも私が一番心を揺さぶられたのが、望の友人が俊也に告白するシーン。

望の友人は、望からの電話を受け色んなことを知っていたが、35年間誰にも言えなかった。
たまたま同窓会で先生が俊也の話をしたからあぁやって告白できる状況になれたが、彼女が高校生の時からこんなに複雑な感情を抱き続けてきたということがどれだけ大変で辛いものだったのか、正直想像できたものではない。

告白している時のあの感情の溢れ出る演技も素晴らしいが、その後望が電話をしていた裏でそんな状況下にいたのかということを知っていくと、更に胸が締め付けられる思いがする。


俊也、聡一郎、望、そしてそれを取り巻く人達の人生を大きく左右していった「ギン萬事件」だが、一番悪者は果たして誰なんだろうか?

発起人でもあり、聡一郎や望の父でもある生島秀樹(阿部亮平さん)は、金に執着して大騒動を起こしたためもちろん悪いが、青木に殺されてしまう。

青木は、元々組長なのでまぁ仲間割れしたら殺すというのは全く変な話ではない。
その後生島家族を追い詰めていくが、殺してはいないし、住む場所や働く場所を提供していたことは明白な事実だ。
その上、最後聡一郎が母に会いにいった場所が綺麗な老人ホームであったので、聡一郎が建設会社から脱出した後に彼女はどうにかして老人ホームに入所できる経済力をつける事ができたということになる。
もちろんそれが青木のおかげかどうかなんて分からないし、もしかしたら母はあの後素敵なお金持ちと一緒になって今があるのかもしれない。
しかし、青木は完全なる悪人ではなかったのではないだろうか?と私は思わずにはいられない。

俊也を巻き込んだ叔父の達雄は、現在も自分のやったことを正義だと疑わないような空気感を纏っている。
彼が生島の計画に乗らなければ、おそらくこんな結末にはなっていなかった。
3人の子供たちも幸せに普通の生活を送れていたのかもしれない。
しかし、彼は一人でのうのうとイギリスで生活をしている。
元彼女には「化石」と形容された彼だが、1984年、いや、父を殺されたその時から彼はおそらく何も変わっていない。ただ弟にだけは迷惑をかけたくないという気持ちがあったらしいが、そこも含めて本当に自己中心的な考え方の人だなぁと思う。
最後はまた逃げてしまうし、達雄はきっとこれからも変わらないんだろうな〜。

あとは俊樹の母の真由美。この人も結局父親を殺した警察への復讐が拭えず、自分の息子まで売ってしまうような人だ。
俊也が一時帰宅してきた母と話すシーンは、本当に何とも言い難いモヤモヤ感でいっぱいになる。

俊也の
「お母さんは、僕の声を使うことに対して何も思わなかったの?」
という悲しみのこもった質問が、今も頭の中でこの映画の余韻を鮮明に残している。
結果真由美も、最後まで俊也には謝らない。仕方なかったみたいな空気を出すだけ出すが、本心から悪かったなという意識はない。
手帳とカセットを処分しようとした様子を見ると、達雄と考え方はさほど変わらないんだろうなと思う。


まぁ結局犯罪グループ全員が悪い。
共犯となった真由美も悪い。

でも、彼らが動こうとした元凶は、時代であり、社会なんだろうなと。

まぁ父を学生運動の過激派に殺された過去を持つのに、そこで父を殺した人たちよりも、それを正しく捌いてくれなかった警察や社会への反発から学生運動の過激派の指揮をとっていた達雄の気持ちはやっぱり分からない。矛盾でしかない。

だから、私は今でもモヤモヤしている。
達雄、おいコラ!って叫びたいくらいにモヤモヤしている。

でも達雄だけが悪いわけではない。モヤモヤが止まらない。


ただ最後は聡一郎と母の再会や、静かに逝った真由美の描写で幾分か穏やかな気持ちで見終えることができたので、少し救われた気持ちになる。


というか、冷静に考えるとこれに原作小説があるということがすごい。
原作を見たことはないが、いくら元ネタの事件があるとしてもリアルすぎないか??

本当に最後まで見て納得感のある、すごく綺麗なストーリー展開と、リアリティがあるからこそ心を揺さぶるモヤモヤ感……

なんだかすごかった。(語彙力ww)

ざいじえん。

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