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研究開発の仕事(fin) 原点に立ち返って、研究開発職場では何をやっているのかをまとめる

本来はこれを最初にやらないといけなかったです。
研究開発の仕事紹介、ここで一旦最終回にします。
最終回なのに初回のような内容ですが、「企業研究開発って何をやっててどんな仕事があるの?」をまとめてみたいと思います。製造業が分かりやすいので、製造業の例で。


1. 新しい製品を開発する

1.1 基礎開発、要素技術開発

ある特定要素の開発。製品、あるいは試作品、といった形にならない、1つあるいはいくつかの部分要素の開発。
「新材料」が意識しやすいが、それ以外に新たなプロセス技術やプロセス条件、シミュレーションによる新しい構造案の開発、など。
大学からだと、通常はここが最も想像しやすいか?

1.2 設計、試作

上である程度把握できた新技術を「試作ライン」というもので流して、試作品を作って評価する。最終製品が複雑な場合、1つの試作ラインから上がってきた単一部品として評価するケース、それを別のライン(製造ラインであることが多い)で他の何かに組み込んでもらったユニット、場合によっては製品と全く同じ機能まで組み上げた試作品、にして評価する。
後ろに行くほど関係者が増える。
企業研究開発で想像されるところ、それ故「怖そうだな」と思われるところはここだろうか?

でも企業研究開発にしかない、自分の人生のストーリーになる、つまり血肉になって転職先にもアピールできる(笑)ところはここです。

1.3 製造技術

仕事と開発品の内容によってはここまで行くこともあるので。製造ラインは通常しっかりした技術部門を持っているのですが、そこと調整することもあるかもしれません。1.1 からここまで来ると履歴書でのアピール度も特大(笑)特にJTCで高レベルでここまでやれた人間、となると、大抵のところは何とかなると思います。

2. 他社と競う

2.1 自社、競合分析

あとは顧客を合わせると3C分析になるのですが。
製品、部品、材料・・・あらゆるレベルであらゆる人が、何かしらの手段で自社と競合を分析して比較しています。その一例として・・・

2.2 特許(分析、執筆、クリアランス)

要素開発のレベルになるほど、特許が重要な手段になっていきます。
特許にはあらゆる情報が入っています。書かれている内容はもちろん、いくつか並べることで競合にはどのようなキーマンがいてどのような思考の流れで開発しているのか?どのような協力者がいるのか、その協力者は・・・と、頑張れば頑張るほど無限に情報が広がります。というのが特許分析(そこまでする人はあんまりいないんですけどね(;^_^A )
私たちが開発したものを権利として確保する、他社と差別化(障壁を作る)、その他、競合とのコミュニケーションも専ら特許を通してです。なので「特許を書く」という行為にも、単純に書くことから戦略を込めることまで、いろいろなレベルがあるのですが、まず書かないことには話にならないので書きます。
そしてクリアランス、他社特許は極力避ける、もしくは先行文献をぶつける、または枯れた技術で代替させる、など。
知財部門という専門の部隊がいるのですが、開発部門もがっつり入りますし入らないといけないところです。

3. 開発環境を作る、開発環境を管理する

「開発環境を作る」の花形、きついところ、腕の見せ所は、

  • どんな装置を選定するか

  • どんな原料を持ってくるか

だと思います。これらを選定するとき、矛盾する2つの考え方をします。

  • 最終的に製造ラインに載せるためには実績があるものを

  • 新しい技術は新しい考え方の装置、(原料)が大事

量産車とレーシングカーの兼ね合い、じゃあ間を取ってスポーツカーにするのか?量産車を改造してもらうのか?そんな中途半端なことをしてたら中途半端な技術にしかならないのでレーシングカーを買ってきてエッセンスを確認出来たところで量産車に実現させるのか?
これの回答としては、「ところにより解を変えながら、全部やる」です。

せっかくそろえた設備も管理されていないと、出てきたデータの再現性が取れない、使えない、となってしまいます。「管理」の最も原始的なものは「日々の工程記録」、まあ実験ノートがそれにあたるのですが、それを系統化、共有化して、ルールにするとISOになると思っていただければ・・・

4. 他の職場同様、職場の体裁として

日々の勤務管理、資産または消耗品の棚卸、事業所のあれこれへの協力・・・最近は情報機器抜きの社会人活動は考えられないため、情報セキュリティ周りの活動も増えています。それらにも体系があり、役割があって、仕切る人がいます。

5. 企業研究開発のすすめ

ここまで連載を延々と読んでくださった皆様、ありがとうございます
m_ _m
最後に宣伝させてください。

企業研究開発の仕事、何が楽しいのか、2つの水準で書きます。
まずは大きなところ、それは、
自分が関わった技術が製品になって世の中の何かを良くする
それが大きければ大きいほどうれしいですが、たとえ小さくても世界を構成する歯車の一つとして自分が携わったものがダイレクトに反映される、嬉しいですよね(*^▽^*)
成功すれば金一封もらえることでしょう。
もし自分はそこまで行けなくても、世の中の誰かが成功させて製品化した何かの置き石になっていれば・・・それでも・・・

次に小さいところ、それは、
特許になると自分の名前が後世に残る
大きかろうと小さかろうと後世に名前が残ります。私ですが、筆頭、それ以外合わせて、これまで国内で200件弱、海外合わせると300~400件くらいにはなるのだろうか?の公開特許を出しています(登録だともう少し数が減る)。なので私の本名でググるとその程度は出てくる(はず)です。
ちょっとしたインフルエンサーと言っても過言ではない(ような気もしなくはない)ではないでしょうか(笑)
ここは大学の研究者の方も同じ(そっちは論文の形で)ですが、とにかく、
企業研究開発、いかがでしょう?

Fin. ~ ありがとうございました


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