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スイス考 2013 winter

※ 2013/12/16 excite blog からの転載

今回のスイスでの研修は、これまでよりも伐採・収穫の現場を多く訪問し、現場の方々ともたくさん触れ合うことができた。加えて日本から現場の人間を連れていけたことが大きい。これからの林業の海外視察・研修というのは、実際に森で働く人達がもっと多く参加するべきだと思う。

自身の立場から印象に深く残ったのは、人事の妙というやつだ。世界トップクラスで人件費の高いスイスでは(おおよそ日本の2倍くらい)、高額な高性能林業機械の活用方法と同時に人件費投入に非常にシビアだ。ただし、その発想は「マンパワーのカット」ではなく「マンパワーをいかに有効なところに投入するか」である。

チューリッヒ州では近自然森づくりを推進することが2004年に住民投票で可決され、ひとつの目標となっているのが多種多層な混交林である。その目的は生態系としても資産価値としても安定した森をつくることであるが、その過程では高い技術と丁寧な作業が所々で必ず必要になる。

ある作業が森や生産される商品の価値を高めると判断されれば、集中的にマンパワーを投入する。逆に燃料用のチップなど単価の安いものには工程管理や機械化の工夫により徹底的にコストをかけない。ここのメリハリこそ高い人件費を維持できる術ではないかと感じた。当たり前のようで、なかなかこれができない。

ドイツから日本に紹介された将来木施業には様々な意見があるけれども、以上の人事的観点から見ると、実はこのメリハリのコントロール方法のヒントが沢山散りばめられているように思う。賛成・反対ではなく、そんな見方も面白いのではないだろうか。

人件費が高くさらに縮小マーケットの日本でマンパワーをかけられる(付加価値を高められる)余地は少ないという意見もあるが、既成品にお金を払わないで地元にお金を落とす(手作業を増やす)ようにすると、同じ値段でもまだまだマンパワーが使えるし品質も上がる、という考え方をフーム空間計画工房 http://www.humu.jp の宮島さんから教わった。これはスイス的人事に見事に合致する思考方法だと思う。

卒塔婆やかまぼこの板などは、日本よりもはるかに人件費の高いスイスからも輸入されている。モミの資源管理の問題もあるにせよ、こういった現実を直視し、さらに分析と試行錯誤を重ねてきたい。

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