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会計士試験の選択科目は何を選ぶか

こんにちは、山藤あるとです。

公認会計士の論文式試験には選択科目が含まれています。

今回は、選択科目についての解説や選び方の話です。

多くの受験生に最後まで読んでもらえたらうれしいです。


各選択科目の解説

公認会計士の論文式試験の選択科目は以下の4つです。(記事執筆時点)

①経営学
②経済学
③民法
④統計学

まずは、各科目の概要、メリットデメリット等を解説します。
一部個人的な主観に基づく内容もありますので、参考程度にご覧ください。

①経営学

概要:
企業経営に関する理論科目です。経営管理と財務管理の2つの分野に分かれます。
経営管理は経営戦略や組織の話、財務管理は資本コストや企業価値などのいわゆるファイナンス論で、財務管理の分野は計算要素があります。

会計士や税理士として、仕事で直接使う知識ではないですが、間接的に経営学の知識が役に立つことはそれなりにある印象です。(話のネタとしても使います。)

比較的勉強量が少なくて済むと言われていますが、民法などのように条文があって試験範囲がはっきりしている科目に比べると、試験範囲がはっきりとしない分、実は一番試験範囲が広いともいえるかもしれません。

それもあってか、試験委員の色が反映されやすい科目という印象ですが、試験委員対策のやりすぎには注意したいところです。みんなができるところをしっかり得点することが大事です。

メリット:
・比較的勉強量が少なくて済むと言われている。
・財務管理の分野では、投資決定など管理会計と関連の深い内容もあり、管理会計とのシナジー効果がある。
・合格後もなにかと役に立つ。(かもしれない)

デメリット:
・試験委員が変わりやすく、試験委員対策もそれに応じて論点が変わっていきやすい。
・想定外の問題が出ることがある。(そのつもりでいた方がいい)

②経済学

概要:
経済に関する基礎的な理論が問われる科目で、ミクロ経済学とマクロ経済学に分かれます。
特にミクロ経済学では計算の要素が多いです。

ある程度の数学的な知識・理解も必要です。(微分くらいは求められます。)
言葉での理解と数式での理解、グラフでの理解と立体的な理解が求められる反面、一度理解すると残りやすく、その一部の仮定を変えて次の論点が展開される等、全体像がつながりやすい印象です。

経営学に比べると必要な勉強時間は多めと思います。(民法と同じくらいの勉強量が必要と言われていました。)

メリット:
・計算要素が多いため、高得点を取れる可能性がある。
・計算式等、応用が効く基礎的な部分を抑えれば、記憶に頼らず比較的安定した成績が確保できる可能性がある。

デメリット:
・計算要素が多いため、1つのミスが命取りになる場合がある。(連鎖的に間違う可能性がある。)
・学習量にボリュームがあるため、それなりの勉強量が必要。
・比較的得意だと意識している人が集まるため、競争が激しい可能性がある。
・他の科目とのシナジー効果はあまりない。

③民法

概要:
その名の通り、民法に関する法律科目です。
民法総則、物権、債権などの財産法の分野が中心です。

法律科目であるため計算要素はほぼ皆無で、同じ法律科目である企業法と同様、長文での回答が中心で、試験用条文が配付されると思います。
企業法(特に会社法)の理解に必要となる概念が民法で詳しく勉強できることもあり、企業法とのシナジー効果は期待できます。
租税法でも、法律に基づく科目という点ではシナジー効果もなくはないですが、法律全般の基礎的な思考(条文や判例の読み方や解釈の仕方等)が関連するという程度かなと思います。(法律全般の基礎的な思考は企業法でも学べはします。)

比較的多くの勉強量を必要とするため、勉強時間の配分が難しい側面もあります。(私が受験を始めた当初は、民法が得意になるほど民法の勉強をすると他の科目がおそろかになってしまうので、民法が得意になると落ちる、と言われてもいました。)

メリット:
・計算要素がないため、大きく点差が開きにくい。(連鎖的に間違う可能性は少ない。)
・企業法とのシナジー効果がある。租税法とも若干シナジー効果はある。
・普段の生活でも民法の知識が役に立つこともある。

デメリット:
・条文の量も多く、比較的多くの勉強量が必要。
・比較的得意だと意識している人が集まるため、競争が激しい可能性がある。

④統計学

概要:
統計に関する基礎が問われる科目です。
記述統計、確率、推測統計、相関・回帰分析の基礎などが含まれるようです。

ほとんどが計算要素と聞いていて、計算科目と思っていた方がよいかもしれません。
あまり高度な数学的な知識は要求されないようですが、確率など数学的な思考は求めらるようですので、数学に苦手意識がある方には向かないのかもしれません。

一応は、監査論の中で、サンプリングなど統計学の概念が出てくることがありますが、計算などが求められるわけでもないため、シナジーがあると言えるほどでもないと思います。

あまり周りに統計学を選択した人はいませんでしたが、統計学を選択して合格した人は、数学が苦手でなければ統計学を選択を勧めるとは言っていました。

個人的には、合格後仕事をしていく中で興味を持った科目です。
専門的な計算まではしないにしても、統計学の考え方や思考はビジネスでも役に立つと思います。

メリット:
・計算要素が多いため、高得点を取れる可能性がある。
・比較的勉強量が少なくて済むと言われている。
・合格後もビジネスで役に立つ。(かもしれない)

デメリット:
・計算要素が多いため、1つのミスが命取りになる場合がある。(連鎖的に間違う可能性がある。)
・他の科目とのシナジー効果はあまりない。

選択科目を選ぶ判断基準

何をもって選択科目を選ぶかについては、基本的に正解はないと思いますが、一般的に言われている判断基準はだいたい以下のようなものがあります。

・必要な勉強量
・選択者の数
・他の科目とのシナジー効果があるか
・試験科目の特性と自身の特性の相性
など

①必要な勉強量

一般的に言われている必要な勉強時間では、

(勉強時間多)民法=経済学>経営学=統計学(勉強時間少)

といった感じのようです。
民法や経済学で400~500時間、経営学や統計学で200~250時間という話もあるようですので、ざっくり倍くらい違うということになります。
あくまで目安ですので、これだけ勉強すれば十分というものでもないですが、民法や経済学が経営学や統計学に比べて時間がかかるのはたしかなようです。

受験生にとって最も貴重な資源は時間だと思いますので、相対的に勉強時間が少なくて済む可能性がある科目を選ぶことは、受験戦略上、重要な視点と思います。

②選択者の数

選択者の数では、圧倒的に経営学が多いようです。(他の3科目は似たりよったりの数のようです。)

勉強するにあたり、選択している人が多いと他の人に質問しやすいという側面もあります。
この点、通信講座中心とか、そもそも他の受験生との交流が少ない人にはあまり関係ない観点です。

試験制度上、偏差値による判定のため、合否にたいして選択科目間での有利不利はないはずですが、受験者数が多い経営学なら、難しい問題が出たとしても多くの人が出来ていないはずだと自分を落ち着かせられるという精神的な面はあるかもしれません。

③他の科目とのシナジー効果があるか

シナジー効果では、経営学が一番あると思います。
管理会計論の投資決定の分野では、同じような内容を学習するため、どちらかで理解すればもう一方でも使えるくらいになると思います。
あるとは言ってもそれほど幅広く重なっているわけでもないため、管理会計が得意な人であればすんなり理解できそうな分野がある、くらいの感じでしょうか。

民法と企業法もシナジー効果があるとは言えますが、民法が法律学の基本として役に立つという意味合いが大きいと思いますので、学習内容が重なって両方で使える、というほどでもない印象です。

統計学の考え方が監査論で出てくるとは言っても、統計学を選択して勉強していないと監査論が分からないというほどではなく、シナジー狙いで選択する意味合いはまずないと思います。

経済学に関しては、他の科目とのシナジー効果はないと思います。(パッと思いつかないです。。。)

④試験科目の特性と自身の特性の相性

試験科目の特性で考えられるのは、計算要素の多寡と暗記要素の多寡、あたりでしょうか。
(あまり「暗記」と言いたくないところですが、一般的な表現としてそのまま使います。)

(計算要素多)統計学>経済学>経営学>民法(計算要素少)
(暗記要素多)民法>経営学>経済学>統計学(暗記要素少)

こんな感じかと思います。(若干イメージで並べている部分もありますので、参考程度に。)

経営学は、計算要素もありますが基本的には理論科目です。
また、経営学ではいろんな学者が展開するいろんな説が出てきますので、〇〇(人名)の△△説(理論)といった感じで、人名などの固有名詞がちょくちょく出てきます。人名もセットで覚えることが多かった印象です。

経済学と統計学はあまり情報を持っているわけではないので、イメージ先行での並べ方です。

選択にあたっての考え方(私見)

個人的には、合格に必要と言われている勉強量は重要かと思います。

繰り返しになりますが、受験生にとってもっとも貴重な資源は時間ですので、相対的に少ない勉強量ですむというのは、受験戦略上無視できない要素かと思います。
(勉強量の多寡はあくまで相対的な話で、必要勉強量が少ないからといってちゃちゃっとすぐに合格レベルになれる簡単な科目という意味ではありません)

その点からいくと経営学か統計学なのかなと思います。
他の科目とのシナジー効果はそれほど大きな影響はないという印象です。

さらに、経営学と統計学のどちらが良いかと言われれば、計算要素が相対的に少ないと思われる経営学の方が、大崩れするリスクは低いのかなというくらいです。

民法や経済学を選んだ方がよいのは、それらの科目ですでに一定の勉強が済んでアドバンテージがある(大学で経済学を専攻していた等)場合くらいではないでしょうか。

必要勉強時間の差をひっくり返せるほどもともと得意な科目だ、というくらい特殊な状況にない限りは、民法や経済学を選ぶのはリスクが高いと思います。

科目によっては、他の資格等を持っていると免除になるものもあり(司法試験合格者は企業法及び民法免除とか)、そういう免除を受けられるけど、あえて免除を受けずに得意科目でアドバンテージを取るという戦略もあるかもしれません。

私の選択

私は合格した時には経営学を選択しました。

振り返ると、私が受験を始めた頃には選択科目に統計学はなく、残りの3つから2つ選択という構成になっていました。

たしか、租税法が試験科目になった時に、選択科目が1つになったのではなかったかなと思います。

選択科目が2つあった頃は、経営学と経済学を選択していました。
その頃は、比較的勉強時間が少なくて済むと言われている経営学はほぼみんな選択し、自分の好みや特性に合わせて経済学か民法のどちらかを選ぶというのが主流でした。

私は高校時代、数学が得意科目だったため経済学を選びましたが、選択科目が1つになった時に経営学を残したのは、必要な勉強量が比較的少ないことと内容自体にも興味があったからです。

これから受験するとしても、やっぱり経営学を選択するだろうなとは思います。

話のネタとしても、なんだかんだ経営学で学んだことは合格後も使っている気もしています。

ただ、合格後に統計学にも興味を持ったので、数学が得意だったこともあって今なら統計学も捨てがたいなとも思います。

まとめ

・合格に必要といわれている勉強量
 (勉強時間多)民法=経済学>経営学=統計学(勉強時間少)

・各科目の特性
 (計算要素多)統計学>経済学>経営学>民法(計算要素少)
 (暗記要素多)民法>経営学>経済学>統計学(暗記要素少)

・勉強量を優先がよいかもしれない
 受験生にとって最も貴重な資源は時間
 合格に必要と言われている勉強量が少ない経営学か統計学が無難
 比較的計算要素が少ない経営学の方がリスクは低いと思われる

最終的には自分に合うか合わないかで決めてもよいかもしれません。

統計学が伝聞でのイメージでしか考えられていないところがありますが、個人的には経営学が無難、数学が得意なら統計学も検討の余地あり、経済学や民法は特殊な状況があれば検討してみては、といったところでしょうか。

私の過去の経験に基づく見解ですので、最新の状況を踏まえつつ判断してもらった方がよいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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山藤あると|光の会計士
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