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とんずらしたわたし、やややと恐れをなし退散

雑草とはいえ小さな色とりどりの花を懸命に咲かせているのを見ると、摘み取ってしまうのは忍びない。

おかげで毎年この季節、この小さな庭は小さな花をつけた雑草だらけになってしまうのだけれど、ふとその雑草の葉陰などをのぞくとそこには幾匹もの小さなまるむしどもが群れて、一見のところ無秩序にうぞうぞとうごめき、こいつらにもなにか生きるべき指針というか目的というか、未来に対する覚知のようなものが果たしてあるのだろうか否かと若干の危惧めいた感情をわたしの中に揺り起こすのだけれど、そのような折、肌の露出した腕になにか動く気配を感じ見やれば餌探しに埋没しきった傍若無人にして黒い、ただ生きるの塊、蟻などがウエストのくびれをふりふり尻をプクリと膨らまして這いずり回っているのだった。

恥ずかしげもなく生きるを生きる庭の生物どもの真摯かつ無知蒙昧な力強さを前に、生きるの糧を得るための仕事を偽りの病にて本日とんずらしたわたし、やややと恐れをなし退散。

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