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正論を言う人と社内政治が起きる組織のためのコミュニケーション論と組織開発

こんにちは、榎本です。
今日は僕が社会人生活の中でずっと悩んできたコミュニケーションの論点にようやく答えが出たのでまとめていきたいと思います。
その論点は次のようなものです。

組織を良くするために、相手の感情に配慮しない正論を言う人を尊重すべきか?感情に配慮するあまり忖度する人を尊重すべきか?

「正論では話が通らないので、遠回りが最短距離。」
という話があったり、
「忖度していては社内政治が蔓延する。」
という話などいろいろビジネスパーソンでも意見が分かれるところだと思いますので、これをコミュニケーション論と組織開発的に見ていきたいと思います。

コミュニケーション論から見た心理構造

NLP(脳科学と心理学を実践スキルにまとめたようなコミュニケーション理論)では「なぜ?」「どうして?」という質問と、「どうしようとしていたの?」「どうしたいの?」というコミュニケーションは全く異なると言われています。

■なぜ?どうして?
このコミュニケーションは質問者と回答者を別物と切り分ける質問です。そのため言われた側は原因を探索します。そしてその原因は「自分が悪いことをしてしまったんだ(自分が原因)」という受け取り方になり、心理的なプレッシャーになります。
しかしそれによって解決策や違うアクションを取るとも言えます。

■どうしようとしていたの?どうしたいの?
この質問は質問者と回答者を一体化させていきます。言われた側は自分の内省を促進します。そしてその結果「自分はこういうところがあるのか」という気づきを促す心理的な発展になります。
しかしそれによって問題の解決は遅れてしまうとも言えます。

例えばこんなコミュニケーションになります。

仕事で資料を会議の時間まで用意する必要があるAさんと、資料作成を依頼されていたAさんの部下のBさんがいます。
Bさんは予定の時刻までに資料は作成しましたが、印刷までする認識を持っていませんでした。

■なぜ?どうして?の場合
Aさん「なんで印刷していないの?」
Bさん「(印刷しないといけなかったんだ。していない自分は悪いんだ。)すいません。作成まで終わらせておけば良いと思ってました。」
Aさん「会議に利用することは伝えていたから、これじゃあ会議で配布できないよね?」
Bさん「すいません。次からは目的を確認してどこまで実施すれば良いかを明確にしておこうと思います。」

■どうしようとしていたの?どうしたいの?の場合
Aさん「印刷はこれからなんだね。どうしようとしていたの?」
Bさん「(自分は印刷まで終わらせなかったのは何がしたかったんだろう?)会議のことは特に意識してなくて、資料作成で文字とおり作成というところまでやろうとしている自分でした。」
Aさん「なるほど。とりあえず言われたところまでを遂行しようとしていたんだね。」
Bさん「そうですね。僕は言われた部分のことを仕事と見なす傾向があるみたいです。」

この前者の質問は正論派、後者の質問は忖度派のコミュニケーションに多いかと思います。後者の質問は特にコーチングやカウンセリングの現場では必ず実施されます。なぜならラポールを形成することが重要になるからです。

※ラポール:両者の信頼関係

組織開発的に見たコミュニケーション構造

次に組織開発の観点から見ていきます。まず結論から話すと理想の組織は次のように多様なメンバーがいながらも、組織のミッションや目的に全員が共感していてそれを意識している組織です。(次の図)

理想の組織コミュニケーション

しかし実際の組織は次のようになっていると思います。日本企業の場合は同質性は高い(●の距離は近い)ものの、実際向いている方向は別な人が多いです。

実際の組織コミュニケーション

このような組織の典型が「半沢直樹」ではないでしょうか?
主人公の半沢直樹は銀行で日本を良くするというよりは復讐のために仕事をしてますし、他の悪役は自分が出世をするために働いています。しかし全員転職・キャリアチェンジなどしようと思わず同質性はかなり高いです。

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ここから先程のコミュニケーションの話に移ると、理想の組織ほど正論・ロジカルなコミュニケーションは増え、実際の組織ほど忖度・ラポール形成のためのコミュニケーションが増えます

なぜなら、理想の組織では「なぜ?どうして?」という質問をしても、全員がミッション・目的に対して擬似的に一体化しているため、外部として切り離されず、組織の目的のための「課題」として捉えるためです。この状態だと社内で「論破」しようともしませんし、社内に「敵」ができることもありません。

先程の例だと、次のようなコミュニケーションになると思います。

Aさん「なんで印刷していないの?」
Bさん「(印刷するほうが組織の目的にとって良かったということ?)今回はグラフなども多いため紙面で見せるよりも、クラウドの資料共有でスクリーンに映して実施するほうが(目的にとって)良いと思いましたが違いましたか?」
Aさん「なるほど。実は今回外部から参加する人もいるからクラウド共有ができない人もいるんだ。スクリーンに映すことで解決できるけど一応手元にも資料があった方が理解が早いかと思っていた。」
Bさん「すいません。次からは勝手に推測せずに最初に目的に対して必要な完了状態を確認しておきます。」
Aさん「いや、こちらも現状確認などをするほうが目的遂行には良さそうだね。」

ロジカルな正論コミュニケーションができることは、どの程度強い組織か?を測る試金石になると言えます。実際の組織ではそのようなコミュニケーションをすればすぐに摩擦につながり敵対関係となってしまうでしょう。なぜならお互いのベクトルの違いを明確にして同じ社内にも関わらず分断が生まれるからです。

実際問題どうすべきか?

しかし上記が理想と主張してもそのように組織が変わる訳ではありません。そのためどうしていくべきか?という話をまとめていきます。
結論から行くと次の3つです。

・学習する組織をつくる
・ミッションを浸透させる組織人事
・ラポール形成のコミュニケーションをする

■学習する組織をつくる
まずは名著「学習する組織」で提示させられている学習をしていく組織にしていくことでしょう。問題や衝突から学んでいき、組織の課題を解決していきます。意識の発達段階として、個人のプライドや利己的な感情を持つレベルだとこういった自体が出てきます。そうした自分を内省していき、意識を発達させていける組織にいていくことが重要です。

■ミッションを浸透させる組織人事
次に理想の組織自体に近づけていくために、採用・評価・研修・退職勧奨を通してミッションに一致する組織にしていきます。
※そもそもミッション自体が飾り言葉になってる会社が多い中では至難ですが。

■ラポール形成のコミュニケーションを取る
実際の組織ではベクトルが異なるので、対処療法としてはラポール形成をすることにコストを割く必要があります。ラポール形成ができていると価値観が違う人とも円滑なコミュニケーションが取ることができます。
※しかしこれをやりすぎると社内政治や腐敗につながっていくので要注意です。

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おわりに

生産性高く仕事をするには全員が同じ目的を向いている必要があります。そのために必要なことは次の3点でしょう。

・組織の目的を明確にする
・組織の目的に合うメンバーを増やす
・メンバーが変容していける意識レベルを保つようにする

現状の日本企業はミッション・ビジョンを作っていても言動不一致が多発するような状況であったり、組織の目的に合わないメンバーを解雇することも難しく、個人が自分に合う会社・合わない会社を選択したりするような意識でなく、かなり課題は山積みです。

そのため東芝の粉飾事件などで組織は腐敗していくのでしょう。横浜ベイスターズの代表を勤めた池田純さんは次のように述べています。

世の中の50%以上は男の嫉妬で回っている。

もちろんラポールを形成することが重要です。
しかし半沢直樹のような組織はドラマとして傍から見ている分には面白いですが、働きたい人はいないでしょう。
今後ますます組織開発の需要は増えてくるかと思います。

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