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俳句チャンネル ~理系は俳句に向いている! 編~

【はじめに】
この記事では、2021年3月4日に夏井いつき俳句チャンネルにアップされた動画『【質問】理系は俳句に向いている?』をもとに、理系の方々が俳句へアプローチする時のやり方などについて少し触れたく思います。

1.「理系だから……」は断る理由の定番?

かつて、初心者からの質問への解答として、良くある「俳句のお誘いを断る理由」に、『センスが無いから……』というのがあると語っていました。↓

動画の中では、
 ・感性がないから~ (→俳句ができない)
 ・語彙がないから~ (→   〃   )
 ・教養がないから~ (→   〃   )

などが断る方便として定番だとお話しされていましたが、この「理系だから……」というのも、恐らく断る理由の定番だと思います。

2.夏井組長の結論は!?

この「理系は俳句に向いていないのでは?」という定番の質問に対する、夏井いつき組長の解答、動画の冒頭で話されています。

夏井いつき
「答えをまず先に言うと、俳句は余りにも短いので寧ろ理系の人たちの方が、早く仕組みを理解してくれると私は経験的に思っています。俳句って数学の公式みたいなのが一杯あって、そこにパズルみたいに言葉を埋めていくと、俳句の型の力と季語の力が詩にしてくれるっていうパズルゲームみたいなんです。」

家藤正人
「理系の人の方が、最初が慣れやすいと思いますね。」

質問への答えとしては、『理系の方が早く仕組みを理解してくれる』から、「向いていない」とは言えない、となりましょう。

3.理系の方が仕組みを早く理解する理由って?

理由を考えていた時期があったという夏井組長、その理由の現在の答えは、

夏井いつき
「文系の人って、意味を綿々と述べたいでしょ? たった十七音の中に全部書こうとする。で、そしたら十七音は大体破裂する。」

良く夏井組長は「プレバト!!」で、『十七音という小さな器』と俳句を表現しますが、それから溢れるほどの情報量を詰め込んだ結果、評価が振るわなかったケースは掃いて捨てるほどありますww

夏井いつき
「プレバト!! に今までに出てくださった小説家の人達で、殆ど8割9割は、自爆してる。……小説家の人達の特徴は、小説の一章分ぐらいを五七五の中に入れるから、大体意味が分からないものになってしまう。小説家の人達はやっぱりあの長さが必要なんだと思うし、自分の思いを綿々と伝えたい人達は寧ろ短歌の方が向いてるかも知れない。

もし「選べる」とするならば、俳句よりも短歌の方が向いてるとか、川柳の方が性に合ってるとか、そういうことは誰しもあろうかと思います。

『自分の言いたいことがどう頑張って収まりきらない』とか、『自分の言いたいことが全部伝わりきらなくてもどかしい!』という方は、俳句以外の文芸の方が向いてる兆候があるのかも知れませんね。

4.プレバト!! での小説家の俳句たち

確かに振り返ってみれば、「プレバト!!」に『◯◯賞作家』が挑戦! との触れ込みの回は良くあるのに、大分増えてきた「特待生」に小説家は現在、誰一人としていません。(羽田圭介は特待生5級から剥奪の歴史あり)

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例外となるのは、ピース・又吉直樹が、番組初期に80点台を連発する活躍を見せた位ですが、彼も元々はお笑い芸人としてキャリアをスタートさせたのですし、俳句をマンツーマンで教わっていたことを思えば、まさに「例外」と言えるでしょう。

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同じく、林修や武田鉄矢といった「国語科」に縁のあるタレントも特待生に認定されていますが、こちらも「小説家」とは少し違っていますね。

そうしてみると、「プレバト!!」で才能アリを獲得した文筆家による俳句は殆ど見当たりませんでした。例えば、

72点 故郷の干物ゆらめく溽暑かな/犬山紙子(エッセイスト)
70点 色褪せた写真のわたし雪の街/羽田圭介(作家)
   ジオラマかアクリル性の冬の波/羽田圭介(作家)
   君生きる夏の陽のもと影が濃い/室井佑月(作家)

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などが、広く「作家」などと言われる方々の才能アリの作品です。対して、

25点 チューリップネットに上げる女の業/犬山紙子
30点 短冊に聖夜のごとくねだる子ら/羽田圭介
   三十路越え滝に近づき保湿する/犬山紙子
   いつ動く墨絵のなかで凍てる宿/西村賢太

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などの才能ナシの俳句達は、『分かりやす過ぎる』句も一部にありますが、『何を言いたいのか分からない』タイプの句も多そうな印象です。

5.俳句を文系・理系で区別すること自体ナンセンス

この論争の結論的な部分が、5分あたりから述べられているので全文を掲載させてもらいます。

夏井いつき
「理系の人たちは、あんまり綿々と述べるということに興味を持っていない……ハッハッ(笑) 失礼な言い方かも知れないけど。 俳句って観察したり好奇心持ったり、根本の所が理系の精神なのかも知れないなと。」

家藤正人
「そうして、理系の特性が活きる部分と、文系の特性が活きる部分があると思うんですけど、必ずしも今の比較で言うと『理系の方が始めのスタートが切りやすい』ということだったけど、じゃあ文系よりも理系の方が向いてるってことじゃなくて、どっちにも得手不得手があるよって話ですよね?」

夏井いつき
「だからはっきり言って、俳句において、理系と文系みたいなそういう区別はナンセンスだと思う、結果論で言うと。 何か好奇心を持つか持たないかとかそっちの方が大事だと思う。」

理系で国語が得意な人が居るし、文系でも国語が特段 得意でもない人がいるのと同じでしょう。

言い方を変えれば、教科では『国語科』に分類される俳句ではありますが、その中では比較的「理系」にとってハードルが低いタイプの文芸であって、少なくとも「理系だから」を理由に、俳句を遠ざける必要は無いということだと思います。
(俳句を別にやりたくないならば、理系を理由にして断るのを否定する訳ではないですがww)

​だって、近現代に活躍した次の俳人の方々は、バリバリの理系なキャリアでいらっしゃいますもん。やっぱり理系だから俳句が向いていないということは無いでしょう。

・水原秋桜子(医)
・山口青邨 (工)
・高野素十 (医)
・西東三鬼 (歯)
・芝不器男 (機械工)
・田川飛旅子(工)
・後藤比奈夫(物理)
・深見けん二(工)

【おわりに】

ここまで「理系」と俳句について簡単に触れてきましたが如何でしたか?

動画を見てて気になったのは、「俳句の型」をパズルゲームとたとえていた部分です。私もそうした「俳句の型」をもっと身近にしたいなと思っていた所だったので、また機会がありましたら記事を書いてみようと思います。

以上、理系でも文系でもない中途半端なRxでした、ではまたっ!

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