【速報版】日向灘地震(2022年)の震度についてのまとめ
【はじめに】
2022年1月22日深夜、日向灘を震源とするM6.6の地震が発生しました。今回は、この地震について速報版として簡単に振り返っていきます。
1.基本データ
まず、今回の地震の基本情報を気象庁の報道資料で確認しておきましょう。
規模 速報値M6.4 → 暫定値M6.6
深さ 速報値40km → 暫定値45km
発震機構:西北西-東南東方向に張力軸を持つ型(正断層?)
今回は、「日向灘」の北側を震源とする地震で、「南海トラフ巨大地震」の想定震源域の北西の端にあたる領域で起きました。
但し「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の開催基準(M6.8以上)に満たなかったため、「南海トラフ地震臨時情報」には至りませんでした。
なお、後述するつもりですが、「日向灘」では20世紀から大規模地震の発生を警戒する声がありましたが、今回は狭義にはそれに含まれないようです。
以下、フェーズ別に見ていくことにします。
2.緊急地震速報「◯」
今回の地震では、「緊急地震速報(警報)」が発表されました。詳細について、気象庁の報道資料で見ていくことにしましょう。
今回の「緊急地震速報」は、個人的には、概ね適報だったと思います。
・震源位置がほぼブレなかった点
・第1報で警報を発表できた点
・震度4以上の範囲がほぼ的中していた点
・最大震度の予測が誤差1に留まった点
非常に有効で、被害範囲の広さを思えば、非常に高く評価したい事例です。
第1報はM7.2とやや上方でしたが、第2報はM6.3とほぼ適報(最大震度及び震度4以上の範囲がほぼ的中)でした。その後、第6報(6.3秒後)までに、少々のズレが生じ、ウェザーニュースでは、一時(0.4秒間)「最大震度7」と表示される一幕もありましたが、その後は震源の深さ含めほぼ完璧です。
3.震度 ◯→「✕」
今回の地震では、最大震度5強を観測し、広域で揺れを観測しました。後述するお粗末な事象は一旦置いておいて、速報段階で発表された震度をまずは纏めていきましょう。
(1)現行の震度階級での分布
未入電の地点を除き、現時点で2県8点で「震度5強」を観測しています。また、震度5弱も広い範囲で観測していて、このうち「延岡市天神小路(延岡特別地域気象観測所)」は1961年から観測実績のある地点です。
(2)参考・旧震度
過去の地震との比較を容易にするため、私(Rx)が提唱している「旧震度」(気象官署で体感をもって観測していた時代の観測網での震度分布のこと)で、今回の地震を纏め直してみましょう。
旧震度の地点や過去からの累積については、以下の記事に纏めてあります。
ここからは、大きな揺れを観測した地点を個別に見ていきましょう。
①「延岡市天神小路」:54年ぶり3度目の強震
延岡市内に限定すると2016年の熊本地震でも2地点で震度5弱を観測していますが、昭和から観測してきた「延岡市天神小路(延岡特別地域気象観測所)」での震度5(強震)は、54年ぶりとなりました。
②「大分市長浜→明野北」:6年ぶり4度目の強震
大分では、1888年(明治時代)から「大分市長浜(大分地方気象台)」での観測が約130年続けられてきましたが、2017年2月23日をもって観測が終了し、「明野北(天然塚公園)」に気象庁の観測点が移りました。
厳密には地点が異なりますが、同じ大分市内として捉えると、今回の強震は6年ぶり4回目となります。
1946年のものは「昭和南海地震」、2016年は「熊本地震」ですが、1968年の地震については、良く知られた4月1日(M7.5)の地震ではなく、その4か月後に起きた愛媛県の沿岸で起きた地震によるものです。
(3)推計震度分布図
かつてと違い、地図に投影されるようになった「推計震度分布図」によれば、かなり広域で震度5弱以上の揺れが分布していることが分かります。
また、下に示すような「留意事項」がありますので、参考程度に留めるべきかとは思いますが、「赤色:震度6弱」相当の地点が佐伯市や延岡市の海岸付近などに幾つか認められる点は特徴的なことかも知れません。
(4)震度データの「未入電」について
今回の地震の震度発表に関連して、特筆すべき点だったのが「未入電」地点の多さです。
昨年、通常の未入電で関して記事を書きましたが(↑)、当初、震度情報が入らず、徐々に判明するケースが少なくありません。震度7を観測した事例のうち、新潟県中越地震や熊本地震(Mj7.3)、北海道胆振東部地震では当初は最大震度6強として報道され、しばらくして最大震度7が判明しました。
今回は、流石にそこまでの激烈な揺れだったとは思いませんし、そこまで広域に甚大な被害をもたらす災害ではなかったと思います。それなのにです。
地震の規模に比して、「未入電」と横長に表示されている地点が非常に広く分布していたのです。(全部で60地点にのぼる)
これを気象庁の発表文言では、「震度5弱以上と考えられるが現在震度を入手していない」と震度を表示しているのです。ただ、四国地方では1地点、中国地方では1地点も震度5弱以上を観測していないのに、それよりも震源から遠い地点が「震度5弱以上と考えられるが」と書かれているのは不自然です。これも「自動化」の弊害かと感じていましたら、朝になって、NHKがこんな記事を書いていました。
計60の震度計で「未入電」システム運用法検討へ 気象庁
一口に「未入電」と言っても、大きく分けて2つの事象が起きている様でしたので、そこを纏めたいと思います。
① 気象庁のシステム運用 関係:42箇所
当初発表していた情報では「震度5弱以上と考えられるが現在震度を入手していない」としていた60地点のうち、7割程度の42地点については記者会見にもありましたが、「震度1~2」でした。要因としては、上記のNHKニュースから引用すると、
であり、言葉を選ばずにいえば、「震度5弱以上と考えられる」も「震度を入手していない」も言葉のニュアンスとしては誤りでした。
これも、先日の津波予報の「被害の心配はなし」と同じで、誤解を招きかねない一律の表現だったかと思います。
例えば、「現在確認中」ないし「未入電」でも良いかも知れません。むしろ「震度5弱以上と推定」の文言は、本当にそれなりの震度がありそうな地点でないと情報の誤解や軽視に直結する恐れがあります。過去から感じている所ですが少し見直す必要があるのではないかと考えます。
(未入電なのは仕方ないが、『本当に、震度5弱以上と推定されるの?』という着眼点が欲しい所です)
そして、この運用についても、一斉点検および再考が必要かと思います。
② それ以外の地点:18箇所
それ以外の震源に近い地点では、実際に(震度5弱以上かは別にしても、)比較的強い揺れを観測していると見られます。
ただ、このうち一つ(佐伯市)は、記者会見でも原因が説明されましたが、
なお、記者会見の最後の方の説明によると、商用電源が停電したことにより供給が途絶、最初の地震での震度は欠測(現在は復旧)とのことでした。
人間の目で見ると、少なくとも震度4以上と見られる地点がかなり残されています。私が気づいた範囲で纏めると、
などは、隣接する地点が震度4~5クラスなので、これは場合によって震度5クラス以上の揺れを観測している可能性があるので、①とは異なる要因で「未入電」となっているものと見られます。続報を待ちたいと思います。
(5)参考・USGS(アメリカ地質調査所)
最後に、気象庁以外のデータとして、アメリカ地質調査所の「Did You Feel It?」のページを見てみましょう。これは、世界各地の皆さん(画面の前の貴方を含めて)の体感・被害報告を取りまとめているものです。
これで特筆すべき点は、佐伯市で震度VIII、大分県で震度VIIを観測している点に加えて、韓国(釜山のみならずソウルでも)からも体感報告が寄せられている点です。Mw6.3 だったとはいえ、ここまで広域で有感になるというのは、そこまで例が多くないような印象です。
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