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最大震度が更新された地震たち ~未入電は軽視禁物!~

【はじめに】
この記事では、当初「震度」の情報が入らず、後に「最大震度」が更新された地震についてまとめています。題して、『最大震度が更新された地震たち ~未入電は軽視禁物!~』です。

【 概要の説明 】

気象庁震度階級で最も大きな階級である「震度7」は、平成年間に6回観測されています。今と運用が異なる阪神・淡路大震災を除いた5例のうち、「最大震度7」と最初(速報)に発表できた事例は2回だけです。2011年の宮城県栗原市と2016年4月14日の熊本県益城町です。

その他の3例は、当初「最大震度は6強」と発表され、後日、「最大震度が7だった」ことが発表されているのです。(メディアの報じ方的に) 実際には3例とも震度は計測されていたのですが、停電などによってデータを即時に送ることが出来ず、発表が遅れたという経緯があるのです。

こうした状況になった時には、気象庁が「未入電」としたり、「最大震度5弱以上と推定されるが……」などと報じられたりするのですが、どうもその情報が軽視されがちなのでは? と思い、この記事を書くに至ったのです。

震度5弱以上と考えられる地域で、震度を入手していない地点がある場合は、その市町村名を発表します。

という情報は、確かに震度5弱かも知れませんし、予想を下回り震度4以下のこともあります。しかし、後から見る様に「震度7」の地点も、この情報で発表される事を思うと、仮に報道のされ方が小さかったり、「震度5弱」の後にチラッと触れられるだけだったりしたとしても、決して侮ってはいけない情報だと思っていただければと思います。

1995/01/17 震度6→5→6→7 阪神・淡路大震災

史上初めて正式に「震度7」と判定された「兵庫県南部地震」。この所謂「阪神・淡路大震災」の時は、現在と違い「震度7」に関しては、現地調査の結果をもとに判定する仕組みとなっていました。

しかもこの時は、「震度6」の神戸と洲本に関しても、情報が確認・確定するまでに時間を要し、地震発生から30分過ぎまでは「最大震度:5」と報道する時間帯があるなど二転三転していました。

(顛末は、下記資料:中森広道『1 阪神・淡路大震災における初動情報』をご参照下さい)

1996年から「計測震度」に完全移行し、震度のデータが発表されるようになりますが、震度7を観測する様な大きな被害を伴う地震では、必ずしも初期からその激しい揺れのデータを送信する事が出来ないケースが出てきます。

2004/10/23 震度6強→7 新潟県中越地震

阪神・淡路大震災以来9年ぶり2回目、現行の計測震度に基づくものとしては初の「震度7」を観測した「新潟県中越地震」でも、当初は「最大震度:6強」と報じられていました。

日本語版ウィキペディアより
最大震度:川口町(現・長岡市):震度7[注 1]
[注1]:地震発生直後には停電による衛星通信端末の停止で情報が入らず、後日記録から確認された。当初は小千谷市などで観測された震度6強が最大震度だと思われた。

地震が起きた日の夜から、「未入電」の地点の震度情報を、報道発表資料で順次更新していましたが、「川口町で震度7」が確認されたのは、10月23日の地震発生から丁度1週間後の「10月30日」になってからでした。

平成16年(2004年)新潟県中越地震について(第18報)

2016/04/16 最大震度6強→7 熊本地震

複数回、激烈な揺れが襲った「熊本地震」のうち、4月16日深夜に起き一連の活動で最大のM7.3を記録した地震では、熊本県益城町と西原村の2町村で「最大震度7」を観測しました。ちなみに、

・一連の地震活動で2度「震度7」を観測(益城町)したことと、
・一つの地震で、複数地点で「震度7」を観測 したのは、史上初でした。

しかし、この2地点(益城町宮園、西原村小森)での震度7が発表されたのも、地震発生から4日後の4月20日でした。

しかし、この事実が確認されるまでの4日間、メディアによってその報じ方がまちまちだったことを忘れてはなりません。

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・16/04/14 21:26 M6.5 最大震度7
・16/04/16 01:25 M7.3 最大震度6強(実際は震度7)

表面的には上記関係性となりますが、実際、2度、「震度7」を観測した「益城町宮園」では、

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・16/04/14 21:26 益城町宮園:震度6.6
・16/04/16 01:25 益城町宮園:震度6.7(史上最大)

だったのを始め、殆どの地点では、16日の方が揺れが大きかったのです。

しかし、極めて表層的にだけデータを見ると、「マグニチュードは大きいけれど、最大震度は最初(14日)の地震の方が揺れが強かった」とか、「14日の地震の方が規模は小さかったけれど局所的に強い揺れがあった。だから1回目は震度7だったが、2回目は震度6強で済んだ」のような誤った見方・認識に繋がってしまった恐れも否定できません。

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これも、震央付近に「未入電」の地点があり、速報で報じられている震度が必ずしも最大とは限らないという事を、理解しているかどうかで、メディアの報じ方や視聴者の受け取り方が変わってきていたと思います。

2018/09/06 最大震度6強→7 北海道胆振東部地震

北海道全道が停電ともなった「北海道胆振東部地震」でも、当初は最大震度6強と報じられていましたが、その日の夕方、「震度7」を厚真町で観測していたことが発表されています。

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上記が地震発生直後のNHKの「震度分布図」です。NHKは「震度5弱以上」の未入電の地点を赤丸で表しています。

最大震度6強を観測した「安平町」よりも震央に近い地点に、この赤丸があるということからも、「最大震度7」の可能性もあるのでは? と想像力を働かすことが可能です。

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平成30年9月6日03時08分頃の胆振地方中東部の地震について(第2報)

○ 震度データの未入電の状況
 今回の地震により、震央付近の震度5弱以上と考えられる17地点で震度データが入電していません。入電していない観測点について、推計震度分布図からの推定では、厚真町(あつまちょう)の観測点で6強、むかわ町の観測点で6弱です。震央付近では、推計震度分布図が過小評価している可能性がありますのでご注意ください。
 これら観測点の実際の震度については、現地に職員を派遣してデータを入手することに努めているところです。

気象庁も、地震発生から約7時間半後の第2報で上記のように状況を公表。

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平成30年9月6日03時08分頃の胆振地方中東部の地震について(第3報)
-厚真町で震度7を観測しました-


概要
胆振地方中東部の地震において、震度データが入電していなかった地点のデータが入電し、厚真町で震度7を観測していたことがわかりました。

と、地震から半日後の夕方には「震度7」を発表しました。これは、過去例からすると、かなり早いタイミングで発表できた方ではないかと思います。

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更に、地震発生の翌日には「札幌市東区」で震度6弱を観測していたこと、1週間後の13日になって、「6日午前6時11分」の地震(当初最大震度4)で、震度5弱を観測していたことが追加発表されています。

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ここで、我々一般人が注意すべき点の一つに、「メディアの重点の起き方」があります。この地震では、特に朝のうちは、当初唯一震度6強を観測したと発表されていた「安平町」からの取材が集中していました。

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しかし、実際には、隣接する「厚真町」で大規模な地すべりが起き、土砂に巻き込まれた行方不明者が数十名単位で発生していたのです。

テレビなどで報じられている地点(映像)が、必ずしも「最も大きな被害」とは限らないことを、今一度意識し直す必要があろうかと思います。

( その他、「未入電」の地点があった地震たち )

他にも、未入電以外の理由で最大震度を更新する地震はありましたが、今回は割愛します。
ここからは、「未入電」の地点があった地震をリストアップしていきます。

(2013年以降)

2013/02/25 最大震度5強 栃木県北部
・日光市足尾町中才*:2 日光市足尾町松原*:2

2014/11/22 最大震度6弱 長野県北部(神城断層)
・飯綱町2地点:5弱 筑北村西条*:不明(村内:4~3)

2016/04/14 最大震度7 熊本県熊本地方
・嘉島町上島*:6弱

2016/04/15 最大震度6強 熊本県熊本地方
・益城町宮園:6強(宇城市と並び最大震度)、玉名市築地:2

2016/10/21 最大震度6弱 鳥取県中部
・鏡野町井坂*:4 勝央町勝間田*:4 赤磐市周匝*:3

2016/12/28 最大震度5強 茨城県北部
・水戸市中央*:不明(周囲は4)

2021/03/20 最大震度5強 宮城県沖
・石巻市雄勝町*:不明

以上のように、多くは「震度4以下」の市町村が多いのですが、例えば、2016年4月15日の地震で「震度6強:益城町」が未入電となっていたケースもありますので、情報をしっかりと捉えることが必要でしょう。

※実際、震度2~3の様な地点でも、広い市町村内で「震度4~5」を観測した地点があったりすると、ここにリストアップされることがある様です。

【おわりに】

「震度5弱以上と考えられるが現在震度を入手していない観測点」という情報が気象庁が発表されている場合、仮に大きくメディアで報じられていなくとも、過去3度「震度7」がこの情報に埋もれていた歴史を抑えておいて頂きたいと思います。

過去の事例だけをもって言えば「M7前後の内陸地震」+「最大震度6強」+「より震源に近い観測点が未入電」の時は、『実は震度7に匹敵する様な激烈な揺れが襲っているかも知れない』と身構えるのも良いかと思います。

メディアに取り上げられることは少ない情報ですが、実は未だ取り上げられていないけど甚大な被害が出ている可能性のある情報かも知れません。また上記に示した事例以外にも、予想外の被害が発生しているケースもあり得るでしょうから、上記に合致しないケースにおいても気に留めておいて欲しいと思います。

それではまた次の記事でお会いしましょう、Rxでした、ではまたっ!

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