記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ネタバレを見ながら倍速視聴をするのが次の時代(「無表情な日常、感情的な毎秒」復習編)

※この記事は、前回に引き続きエンニュイのドラマトゥルクを担当している青木省二氏が寄稿してくれました。上記の予習編を読んでからだと尚楽しめます。




芸術とは豊かなものであって、こうなんじゃないかああなんじゃないか、と観れるものがやっぱりいいはずですし、作る側にしてもそれに応える様に頑張って多相性を折込んでいくものだと思います。

もちろん、エンニュイもそうやって作品を作っていますし、観客の方にはそれぞれの見方をしてほしい、と真に願っている訳ではありますが、プロモーション的にはそうはいかない。
時には邪道を率先して進むのもプロモーション時代に持つべき強かさだと考えます。

なので、これより、この作品はこう見てください、と言わんばかりの、5分くらいで読めるストーリーのネタバレを書いてまいります。

たくさんの人が観ている作品だと、以下の様なものは「ネタバレ」と検索すればいっぱつでブログ記事に辿り着くことが出来ますが、いまのところ本公演は辿り着けないので、恥も外聞もなく、劇団サイドから無粋を遂行していきます。ぜひ正気を疑ってください。

「エンニュイは気になってるけど配信なんて真剣に観てられるか勢」の方、二回目以降観る人で新しい刺激がほしい方、ともかくさっぱり何のことか解らなかった方におすすめです。読んで、ああそういうことだったのね、と思ってくれれば、もうそれで構いません。
パソコンで1.25倍速くらいで流しながらベッドに寝転び、片手にはスマホでこのページを見る、といったスタイルでもなにも問題ありません。認知リソース節約の一助になればと考えております。

そして「エンニュイの配信観たよ。なんかこんな感じだった」と友達に言いふらしていきましょう。

ちなみに、初めからこういう内容だった訳ではありません。
12回の公演で、本公演は試されつづけ、ここに誘われました。つまりそれは、何度観ても楽しめるということを意味します。これ以外の解釈、感じ方ももちろん正しく、そういった楽しみ方もぜひしてください。

後、作品の性質上、あらすじ、というより、半分以上が話されていることの要約です。

後、こんな要約など見ずに「台本を買ってみる」なんていう手もあります。
こちらで販売していますので、チェックの程、よろしくお願いします。


【エンニュイ 配信映像のお知らせ】
最終日中止となりましたが、3ステージ目までの配信映像が販売中!

『無表情な日常、感情的な毎秒』
*2週間アーカイブ付き
7/29回 8/12(金) 23:59 まで
7/30回 8/13(土) 23:59 まで

↓配信購入 ツイキャスプレミアム

https://twitcasting.tv/hase0616/shop


〜以下ネタバレ〜



※最初に少しだけ。
 身も蓋もないことを言ってしまうなら、
 「佐藤と鈴木を中心に観る」
 と、なかなか解りやすいと思います。
 彼らがどういう風に思っているかを想像しながら観ると、
 比較的とっかかりやすいかもしれません。

■登場人物(あいうえお順)
井上……現バイト店員。葬儀の日は終日シフトに入っている。
佐藤……元バイト店員。葬儀には最初から参加。
鈴木……現バイト店員、二年目。葬儀は最初から参加。
田中……元バイト店員、就職している。葬儀に駆けつけるが火葬後に到着する。
店長……突如として音信不通になり、その後死亡。
中村……現バイト店員。子供がいる。別の知人の結婚式を優先し葬儀には不参加。
森本……タロット占い師。なぜか本心を間借りしている。
山田……元バイト店員、バイトリーダー。
渡辺……現バイト店員。葬儀の日は終日シフトに入っている。

■あらすじ
□火葬場
居酒屋「本心」の店長の葬儀の日。火葬と骨上げが終った頃。
遺族から少し離れた場所で、葬儀から参加していたアルバイトの鈴木と佐藤が話をしています。
 “結局、誰が死んでも泣く人っていますよね”  
と、不謹慎な発言を繰り返す鈴木を佐藤は注意します。

そうしているうちに、仕事終りに葬儀に駆けつけた元バイトの田中が二人を見つけます。
さらに元バイトリーダーの山田も遅れて合流します。山田は田中と違い、葬儀に参列していましたが「トイレが混んでた」ために合流が遅れた様です。

そこで山田は、葬儀でまるで双子くらい店長によく似た人を見つけたことを3人に報せます。

□店長の家
店長が音信不通になった頃。バイトの中村は店長の高円寺駅近くの自宅に向かいます。
中村は、店長のよさを理解できるのは自分だけ、と信じています。
中村は、鍵の掛かってない店長の部屋に侵入します。
店長の部屋は家具が一切なく、真っ白な壁だけで、人の形をした影の様なシミだけがありました。
店長は次の時代に行った、と中村は確信します。

□タロット占い
店長の葬儀の後、バイトメンバーが「本心」に集まっています。
そこにはなぜか「本心」を間借りしてタロット占いをしている森本もいて、中村を占っています。
その占いは全く当たっていないのですが、森本は、当たってないのではなく中村の潜在意識がそう訴えているのだ、と嘯きます。

佐藤は終電を気にして帰ろうか迷いますが、鈴木や田中がそれを止めます。
帰るかどうかタロット占いで決めよう、という話になり、結果、佐藤は残ることになります。

□葬式の話
葬式に行かなかった渡辺は、葬式の様子がどうだったのかをみんなに尋ねます。
葬式に来ていたのは、佐藤・山田・鈴木・田中で、中村は友達の結婚式を優先して行かなかった、とみんなは答えます。

そこで井上が唐突に、みんなに葬式で泣いた?と、しきりに訊きます。
井上はそれが、「普通調査」だ、と言いますが、山田はその井上の無神経さにはっきりと怒りを表します。

中村が子供の弁当を作りに一度家に帰ります。

□店長が死んだ理由
鈴木は、店長がなんで死んだのか、と問いますが、誰も具体的なことは判りません。
渡辺と井上は、店長は遺体がみつかる2週間前から店に来なくなり音信不通になった、とだけ、みんなに説明します。
田中は山田に店長のそっくりさんの話を再び訊きますが、「親族とか、そういう感じではなかった」と応えます。
森本が口を開き、”ドッペルゲンガー” と独りごちます。
それを聴いたバイトメンバーは唖然とします。

□次の時代
鈴木は最近良く眠れない、と話します。
その理由は同棲している彼女にあって、どうやら寝ている間にくるぶしあたりを蹴られてるんじゃないか、と鈴木は言います。
記憶はないが、朝起きると痛いからそうだろうと。
なにが不満なんだろうと話をしていると、顔相が悪いんじゃないか、と田中が話に割って入ってきます。鈴木のネガティブさが顔相に出ているのではないかと指摘します。

最近、田中の嵌っているスピリチュアル系のユーチューバーが言うには、
「240年ぶりに時代が変わる。目に見える物質的な幸せを求める時代から、精神的なものを求める時代に移行する。ポジティブな波動を持つ人間とネガティブな波動を持つ人間がおり、前者は目覚めて次に時代に行けるが、後者は取り残される。」
とのことで、田中は鈴木にもっとポジティブになれと言います。

鈴木は田中の上から目線の物言いに反発します。売り言葉に買い言葉で、次の時代に行きたくない、別に今のままでいい、という鈴木と田中は対立し、大喧嘩になります。

そのうちに、中村が「本心」に帰ってきます。

□店じまい
渡辺は仕事中にも関わらず、サーバーから自分でビールを注いで飲みます。
山田はそれを許せず、渡辺を叱ります。
山田がそのままトイレに行くと、みんなは「店長と山田は関係があったんじゃないか」と噂します。

そうこう言っているうちに、山田が帰ってきます。
渡辺が、今日はもう店を閉めよう、と提案します。田中も、店長の葬式だしこのメンバーで集まるのも最後だろうから、賛同します。
森本は帰ろうとしますがみんなで引き止め、みんなで座敷にあがり、店長へ献杯をします。

□ゲームの時間
鈴木が「寝てるか寝てないか」ゲームを提案します。
寝てるか寝てないかを当てるゲームなのだが、鈴木の説明は全く要領を得ず、場に大きなクエスチョンが生じ、結局、鈴木はそのゲームを撤回します。

次に佐藤が、「自分がおかしくないかゲーム」を提案します。
それはゲームとは言わない、と指摘されるものの、それぞれが自分のおかしいと思うところをひとりひとり告白していきます。
佐藤は、プラットフォームに立っている乗客の背中を押す想像をしてしまうと告白します。実際にやってしまうと取り返しのつかないことを想像してしまうと。
渡辺はそばを食べにそば屋に行ったのに、わざとうどんを頼んでしまう話を、
山田は足の細い女性を見るとローキックをしたくなってしまう話をします。
山田はそれを表すことわざを思い出せないが、結局それは「覆水盆に返らず」のことであったらしく、その「盆」の部分に反応し、鈴木と渡辺はベン・イー・キングの「スタンド・バイ・ミー」を絶唱します。

井上は、あらゆるシミュレーションを「熊手」(潮干狩りの道具)で行うと語ります。
愛の告白をする時は熊手を女性に見立て、車の免許取得の前は熊手を通して車を想像するのだと言います。

□今を楽しもうぜ!
井上は熊手の話で変な空気になったことを気にしているのですが、それを渡辺は、気にするな、今を楽しもうぜ!と励まします。
山田がそれをいたく気に入り、それに似たフレーズであるルー大芝の「トゥギャザーしようぜ」の考察サイトを閲覧し、無駄に真面目に考察されているので笑います。

□小さな引っ掛かり〜スワンプマン実験
佐藤は、実はこういう場で帰りたいと思っていることが時々ある、私はみんなの思っている様な明るい人間ではないかもしれない、本当は独りでいたい人間なのかもしれない、と話します。
それを皮切りに、みんなそれぞれ、悩みとは言えない様な小さな日常での引っ掛かりを吐露していきます。みんな自分とはなにかということをめぐる、ささいな想いを持っていることが判ります。

田中が「スワンプマン実験」の話をします。
スワンプマン実験とは有名な思考実験で、
沼にいた男が雷に打たれ死ぬ。もう一撃の雷が沼におちて、分子構造的にその男と全く同じ「スワンプマン」が生まれる。この男とスワンプマンは同一の人間なのか、別の人間なのか、という議論である、と話します。

佐藤は、みんなにも、誰にも言えない小さな引っ掛かりがあることを、それに対して悩んでしまうことを知って、なんだか嬉しく思います。

□散骨
山田は酒を一気に煽り、自分の鞄からプロテインの容器を取り出します。
この中に入っているものは、火葬場からこっそり盗んできた店長の遺灰なのだと言います。
山田は、これをみんなで分け合いたい、と言います。ここには私の知っている店長だけではなく、みんなのそれぞれの中にある店長がきっといるはずだから、と。
山田らしからぬ常軌を逸した言動にみんなは戸惑いますが、なぜか鈴木は、わざと遺灰をテーブルにぶち撒けます。
驚愕する一同を前に、鈴木は、「これをここに巻こう、”散骨”しよう」と叫びます。
鈴木、山田が遺灰を投げ始め、頭にきた田中が投げ返し、としている間に全員で遺灰を投げあい、佐藤は堰を切った様に大笑いします。
投げ合っているうちに、渡辺の口に遺灰が入ってしまいます。本当は遺灰じゃないんでしょ?と訊く渡辺に、山田はそんなことどっちだっていい、と返します。みんな散らばった遺骨を見ながら、ぼんやりとします。
そしていちばんはしゃいでいた佐藤が、急に呆然と悲しくなってしまい、「コンタクトが目の裏に入った」と嘘を吐いて外へ出て行きます。

□眼球が外れる夢
山田が、眼球が外れる夢を見た、と話します。森本は眼球が外れる夢は吉夢だと教えます。左目が外れる夢は、霊的なものに敏感になる夢だとも。そして田中がみんなで次の時代に行きたい、と話した後、みんなは微睡んでいき、ゆっくりと眠りにつきます。

□みんなが寝たあと
帰ってきた佐藤は「寝てる?」とみんなに問いかけます。起きていたのはずっと帰ってこない佐藤を待っていた鈴木だけでした。
鈴木は店長のアカウントを見つけたと佐藤に話します。店長がももクロのファンだったことがわかる投稿と、ある写真が載せられた投稿を佐藤に見せます。二人はその写真を見て堪えきれずに笑ってしまいます。

終演



青木省二



主宰長谷川の公演中止になっての気持ちです。是非読んでください。


12ヶ月公演についてのインタビュー動画アップされてます

他メンバーのインタビューのエンニュイのYouTubeチャンネルにアップされています。

感想ツイートまとめ

読んで気になったら是非配信チケットのご購入を!

サポートも募集しています


この記事を読んだり、公演を観たりした方でエンニュイを応援したいという方は、サポートお願いいたします。出演者のギャラや赤字の補填にさせていただきます。記事の最後にあるサポートボタンからできます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?