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「弟は僕のヒーロー」:主人公の弟否定が若干引くくらいだが、家族の描写が美しいのは惹きつけられる

<あらすじ>
弟のジョーが生まれ、5歳のジャックは大喜び。しかし両親は、ジョーは“特別”な子だと告げる。ジャックはジョーがスーパーヒーローだと信じていたが、やがて“特別”の意味に気付き、思春期の頃には弟の存在を隠すように。そんなある日、ジャックは好きな子を前につい嘘をついてしまい、その嘘が家族や友人、さらには町全体を巻き込んだ大騒動に発展し……。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

ダウン症の弟と兄の日常を切り取ったYoutubeが世界中に注目され、小説化から映画化もされることになったイタリア映画。映画版でも実際のダウン症のお子さんが幼少期から少年期まで別の人が演じていますが、予告編から分かるようにYoutubeでヒットした実在での弟くんでもない別人。そもそもダウン症とは、21トリソミーとも言われ、人間だれしも持つ細胞の21番目の染色体が一本多く存在するために発症する疾患で、特徴的な顔つきになることや知能の遅れや心疾患を抱えやすいなどの特徴はあるものの、健常者でも様々な人がいるのと同様に、知能遅れがない人もいますし、特徴的な疾患があらわれない人もいる。1000人に一人の割合で出生する(作中にも描かれるように今では出生前の遺伝子検査で出生調整も多く行われるようになっている現実もあって出生割合が低下していますが)こともあり、意外に私たちの周りにも多く存在している人たちでもあります。

という、このタイトル通りというか、僕の弟も実はダウン症を抱えています。昔はダウン症児と言っていましたけど、今では彼も40近くなってきているので、僕の思っている印象以上にオジサンとして周りから見えているんだろうなと思います(笑)。僕の弟の場合は知能はそれほど高くはなく、幼稚園児以下くらい言葉も不明瞭だし、一人で身の回りのことはできるものの、買い物とか、人とのかかわりも含め、一人暮らしができるほどではないです。僕はその弟との二人兄弟で、僕も身体障害があるので、小さい頃から周りとは違う二人という感じで育ってきましたから、本作みたいにいわゆる普通の兄なり、姉なり、妹なりの存在がいないので、正直兄弟感というか、兄弟としての連帯感みたいなものは(冷たいかもしれないけど汗)逆にあんまり感じないんですよね。でも、家族だし、人様に見せて恥ずかしいとかいう感覚がないので、地元に戻れば彼とは普通に会話できるし、出かけても恥ずかしいという感覚が(もちろん、思春期時期も含めて)未だによく分からない笑。だから、本作のジャックの弟否定みたいなところは過剰すぎて、あんまり僕の感覚にしっくりこないんですよね。。

ただ、ヒーローにどんどんなっていくジョーに対し、彼を否定するために嘘にうそを重ね、それがバレたときに周りから蔑まされても、結局家族がジャックを支えるという描写がやっぱり素晴らしい。僕自身もそうだし、弟関係でもそうですが、小さい頃から同じ障害やダウン症を抱える他の家族さんと交流はよくあったのですが、どの家族も学校の普通の友達の家族と比較すると圧倒的に明るいのがすごく印象的だったんですよね。障害や病気をもつということ、またそういう家族を持ってしまうということは一見生きにくいという負の面が見えてしまうし、実際生きていく中では苦労することは間違えないんだけど、周りの家庭に比べて(失礼ながら)そうした苦労なり、また死の恐怖なども近くなると、せめて生きているという、この短き間は前向きに生きていきたいなと思えるのかなと思います。こうした家族の美しい生きる軌跡を、本作でも感じて欲しいなと思います。

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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