見出し画像

「秒速5センチメートル」:新海監督を世の中に知らしめた中編作品。今見ると、結構怖い話だなと思う(笑

<あらすじ>
【桜花抄】遠い憧れのつまった図書館の本。神社の猫。カンブリア紀のハルキゲニアとオパビニア。二人だけに過ぎてゆく日々と、二人だけで広がっていく世界。東京の小学校に通う遠野貴樹(声:水橋研二)と篠原明里(近藤好美)は、親の転勤で引っ越したばかりの家庭環境も同じなら、引っ込み思案で体が小さく病気がちなところも同じだった。二人はやがて、お互い似たもの同士で、次第に意識しあうようになるが……。【コスモナウト】種子島-夏。この島に暮らす高校三年の澄田花苗(花村怜美)の心を今占めているのは、島の人間にとっては日常化したNASDA(宇宙開発事業団)のロケット打ち上げでも、ましてやなかなか決まらない進路のことでもなく、ひとりの少年の存在だ。中学二年の時に、東京から引っ越してきた遠野貴樹(水橋研二)。こうして隣を歩き、話をしながらも彼方に感じられる、いちばん身近で遠い憧れ。鼓動が重くも早まるから、口調は早くも軽くなる。視線が合わせられない分、視点はいつも彼のほうを向いている。ずっと続けてきたサーフィンで思い通りボードに立てたなら、そのときは胸のうちを伝えたい。乗りこなしたい波。乗り越えたい今。少しずつ涼しさを増しながら、島の夏が過ぎていく……。【秒速5センチメートル】遠野貴樹は高みを目指そうとしていたが、それが何の衝動に駆られてなのかは分からなかった。大人になった自らの自問自答を通じて、魂の彷徨を経験する貴樹だが……。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

昨年(2023年)から映画館におけるリバイバル上映が多いというのは、前もどこかの感想文に書いたと思うのですが、これは新作映画の集客力が乏しいということもあるのですが、単館系映画館の閉館も相次いでいることも考えると、単純に映画館離れが進んでいるのかなと思います。映画ファンとしては、これを機に昔見れなかった作品を楽しめるということもあるでしょうし、動画配信サイトを楽しんでいる現代世代でも、好きな監督・俳優・シリーズの過去作品を映画館の大スクリーン・音響で違った楽しみを感じられるということもあるでしょう。僕にとっても、昔見た印象と、歳を重ねたオッサン目線で見る今の印象と、同じ作品でも違うなと感じることがあったりします。本作「秒速5センチメートル」も、そんな印象違いな作品になっている鑑賞となりました。

作品としては「君の名は」(2016年)、「天気の子」(2019年)から近作「すずめの戸締り」(2022年)まで、すっかり売れっ子映像作家となった新海誠監督が、多分世に名を売れるきっかけとなった2007年の公開作品。僕は当時たぶん大阪に住んでいた頃だと思うのですが、本作だけはなぜか渋谷の映画館で観た記憶があって(多分、東京出張とかのついでかな?)、有名な山崎まさよしのMVのようなラストのシーンが、夜の大都会・渋谷の雰囲気(多分、風景的には横浜とか、そっち系だと思うけど笑)とすごくマッチしていたことを覚えています。当時の印象としても、今見た感じとしても変わらないのが、新海映画でよく見るディテールの陰陽みたいなところがあるところ。冒頭の桜花のエピソードから連なる、高校生になった二人が会いに行くシーンなど電車などの書き込みが細かいところもあれば、遂に相手の姿が見えるところなど、落書きっぽく絵が単純化されてしまうところもあったりと、極端な話、1枚の絵の中の余白と細かい絵が奥行き表現で変わったりするところなど、実際の僕らの思い出の中でも、背景で細かく覚えているところもあれば、肝心の相手の表情などがウル覚えだったりと、人の記憶を絵として表現するのは(「すずめの戸締り」のラストシーンのところなど)ずっと近作まで共通する絵づくりだなと思って、これは今昔いつみてもすごいなーと思ったりします。

でも、話で観ると、ちょっと怖いと思っちゃうのは僕の歳のせいかなと感じたりします(笑)。この話って、要は初恋の想い出に縛られて、今の生活がすさんじゃっているということだよね(これって、ネタバレ?)と思ったりするので、よく言えば「君の名は」みたいな素敵なラストになることもあるかもだけど、世の中の大抵な初恋って、本作のラストのようにグダグダになりますよね(笑。結構女の子のほうはさばさばして自分の成長と割り切ってそうですけど、男の子はいつでも昔の想い出(ノスタルジー)に縛られちゃったりする弱い生き物なのです。。

<鑑賞劇場>109シネマズ大阪エキスポシティにて


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?