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「からかい上手の高木さん」:大人気短編コミックを実写映画化。コミックの世界観とは少し違うが、それが違う味わいになっている秀作!

<あらすじ>
とある島の中学校。隣の席になった女の子・高木さん(月島琉衣)に、何かとからかわれてしまう男の子・西片(黒川想矢)。どうにかしてからかい返そうと策を練るが、いつも見透かされて失敗ばかり。そんな毎日を過ごしていた二人だが、ある日、離れ離れになることに。それから10年。島に帰ってきた高木さん(永野芽郁)が、母校で体育教師として奮闘する西片(高橋文哉)の前に、教育実習生として突然、現れる。10年ぶりに再会した二人の止まっていた時間と、止まっていた“からかい”の日々が再び動き出す……。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

山本崇一朗の人気コミック「からかい上手の高木さん」を、「街の上で」(2019年)、「愛がなんだ」(2019年)などのラブヒューマンドラマで定評がある今泉力哉監督が映画化した作品。「からかい上手の高木さん」はアニメ化もされていて、2022年にはアニメの劇場版「からかい上手の高木さん」(2022年)も公開されていますが、そちらは中学生の二人の姿を、ときを隔てた大人になった高木さんの回想という形で描いていて、結構傑作なので本作でファンになった方はアニメの短編を見ていただくのもいいのですが、是非劇場アニメ版も入門としてはおススメなので是非見て欲しいと思います。本作は中学時代の二人は少し回想劇で出てくるものの、物語の主軸は大人になった10年後の二人を巡る物語になっています。

実は本作、実写劇場版になるにあたって、中学時代の二人の実写TVドラマが同じキャスト(大人時代の二人は出てこないですが)、同じスタッフ陣で作られています(NetFlixなどの動画サイトで引き続き公開されています)。僕は今回の映画版を観る前に、そちらのTVドラマ版を観たのですが、これが実にいい。劇場版の本作もそうなのですが、実は原作コミック目線で見るとTVドラマ版は結構作風は違っています。原作はどこか田舎の中学にどこにでもいそうないつまでも小学生のようなガキ目線が拭えない男子中学生と、いち早く大人になってしまった女子中学生の幼なじみ同士が、席が隣同士でからかい合う(とはいいながら、西片が一方的にからかわれるのですが笑)ほのぼの漫画になっていて、それがコミックでもある後半の大人になった二人の回想と相まって見事なノスタルジーを演出しているのです。でも、実写版は良くも悪くも、そうした田舎臭さ感は皆無になっていて、中学時代を演じる二人も田舎の中学にいるにはもったいないほどの美男美女になっているし、からかい合う姿も実にカワイイ。もちろん、大人になった本作の二人も美男美女同士だし、背景となる田舎の小豆島の風景も悪く言っちゃうと、都会の人が思い描くような綺麗な田舎感で統一されている。実際は、こうじゃないだろうと思うスタイリッシュさが、これはこれでいいなーと思う世界観を生み出しているのです。

翻って思うと、近作の実写版コミック映画では「ゴールデンカムイ」(2024年)によく似ています。こちらも原作コミックが描く世界観とはだいぶ違うけど、これはこれで全然ありだなと思わせる演出力や物語の深さを魅せてくれる。だから原作を読んでいたファンも、原作とは違った味わいでドラマを堪能できるという二度美味しい作品に、本作もなっていると思います。少し前まではアニメと全然違うだろ(「進〇の巨人」とか、「鋼の錬〇術師」とか笑)ーと原作ファンに大批判に合うような作品が実写コミック映画では多かったと思うのですが、原作をしっかり研究することで、単純にそのまま瓜二つに実写化するのだけではない頭の良い作品が増えているように思います。僕も結構コミックを読んだりしているので、今後もこういう秀作は増えて欲しいなと思います。本作は原作もすごく良いので、ドラマ版から入ったからは原作コミックやアニメのほうも是非楽しんでほしいなと思います。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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