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「メメント」:クリストファー・ノーランの出世作が25周年を前に再上映。奇抜なアイディアと見せ方は今でも新鮮。

<あらすじ>
保険の調査員レナード(ガイ・ピアーズ)の家に何者かが侵入し、妻がレイプされたうえ殺害される。その光景を目撃した彼は、激しいショックで前向性健忘という珍しい記憶障害になってしまう。10分間しか記憶を保つことができない彼は、謎の女ナタリー(キャリー・アン・モス)に助けられ、ポラロイドにメモを書き、体にタトゥーを刻みながら、妻を殺した犯人の手掛かりを追う。犯人のキーワードは、ジョン・G。だが、謎を追えば追うほどに、さらなる謎が深まる。ジョン・Gはいったいどこにいるのか? だれの言うことが、いったい本当なのか?

KINENOTEより

評価:★★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「TENET」(2020年)、「オッペンハイマー」(2023年)のクリストファー・ノーラン監督の出世作でもある「メメント」(2000年)が25周年を前に劇場再上映。先行してデビュー作でもある「フォロウイング」(1998年)も公開になっていますが、本作を観ると、やはりノーラン監督はこちらのほうが初期の代表作だなーと感じます。前向性健忘症という記憶障害によって、短期記憶が保持できない男がハマっていく罠というのが、「フォロウイング」と同じような構成ながらも、そこに保険調査員として立派に働いてきた主人公の別の記憶が実は事件を紐解く鍵になっているという、2段構えの構成が素晴らしいところ。全米でもたった単館系の11館での公開が、口コミでの拡がりで拡大ロードショーまでつながったというアメリカンドリームの成功例として盛り上がったのも、当時としては凄いニュースになっていたなと記憶しています(笑)。

当時からネタバレ厳禁のサスペンス作品というのは結構あったと思うのですが、本作はネタはバレても、結局犯人はどう追い込まれて妻を殺さないといけない状況になったのかという、記憶の整理と、「フォロウイング」の主人公同様にどうして操られないといけない立場に追い込まれたのかを頭の中で整理するのが結構大変な作品です。こうした頭を使う映画が苦手という方も結構いるかなと思うのですが、本作はサスペンスの1つの要素である犯人捜しだけではなく、主人公や周りのキャラクターの心理を分析する面白さもあるので、1回見ただけでよく分からなかった方も、一緒に見た人と違う視点で語り合うこともできるでしょうし、別の視点を知れば、もう1回再見すると違う味わいも感じることができるという何度見てもまた見返したくクセになる作品というのが魅力だと思います。僕は本作であったり、後の「TENET」(2020年)のような映像トリックも1つの語り部になるような作品が好きなので、その原点を今回の鑑賞で発見できたのも楽しいところでした。

今思えば、キャリー・アン・モスであったり、ジョー・パントリアーノなども、同じ記憶を1つのテーマにしたSF大作「マトリックス」(1999年)にも出演していたこともあり、とにかく仮想現実であったり、こうした人の脳を揺さぶるような作品というのも1つのブームだったので、それが日本では別の意味でヒットした要因なのかなと思ったりします。宗教とは違う、人の世界への存在感を問うような作品を、エンターテイメントとして魅せる作品づくりを、これからもノーランには期待したいなと思ってしまう鑑賞でした。

<鑑賞劇場>なんばパークスシネマにて


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