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「侍タイムスリッパー」:刀を仕事にしてきた侍が現代にタイムスリップしても、侍にこだわるお仕事ムービー。じわじわヒットしたのもうなずける演出の丁寧さが好印象!

<あらすじ>
幕末の京都。密命を受けた会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)が長州藩士と刃を交えたその時、雷が落ちる。気を失った新左衛門が目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。江戸幕府が140年前に終わったことを知り愕然とする新左衛門。やがて身を立てるために撮影所の門を叩き、磨き上げた剣の腕を頼りに斬られ役として生きていくことを決意する。

KINENOTEより

評価:★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

ときは江戸時代、幕末の明治維新に向けた混乱の中、あるところで佐幕派の会津藩士が尊皇派の長州藩士と剣を交えていた。しかし、そこに突然雷が落ち、気を失った藩士が目覚めると、そこは江戸の街中のようで、何かおかしい空間に迷い込む。彼が迷い込んだのは、ときは現代の京都・時代劇のセットがある有名な撮影所だった・・・、といういわゆるタイムトリップものです。これがいわゆる低予算映画ながら映画ファンの中でじわじわと人気が拡がっていて、現在も拡大公開中になっています。近作のインディーズからのヒット作だと、上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」(2017年)がいわゆるどんでん返しモノとしてクリティカルヒットしたのを思い出すのですが、映画作品の質的なものは違うにしろ、その当時のようなノリが今回が感じられない(正直、劇場も中高年齢層が多い)のを感じると、映画館離れがちょっと進んでいるなーと思わざるを得ないという、、映画のヒットとは裏腹な厳しい現実を感じたりしてしまいました。

と、映画の内容に戻ると、こうしたタイムスリップモノは邦画でもよく描かれていて「時をかける少女」(1983年、アニメ版は2006年)、「戦国自衛隊」(1979年)や「信長協奏曲」(2016年)など思いつくだけでもたくさんあります。でも、現代が絡むものでも時間軸が短く、行き来するコミカルミステリーモノが多くて、意外と侍(サムライ)が絡んでくるような、結構な前時代なところに飛ばす(飛ばされる)ものは実は少なかったり(それも現代人が過去に飛ばされるものが多い)します。その意味で、結構どこか観ている感を感じるのは、やっぱり見ている僕が良くも悪くも「ドラえもん」世代なので(笑)、過去人・未来人も含め、タイムパトロールに正直目をつけられているだろうと思うくらい(爆)、タイムマシンが活躍するアニメを見て育っているせいか、なんか既視感が多くて新鮮味がないんですよね。

それでも、この映画が映画ファンの心をとらえたのかというのを真剣に考えてみると、それは今は衰退の道を(残念ながら)たどっている時代劇(その中でも殺陣)をテーマにしているからでしょう。今はヒーローものというと、ちょい昔だから戦隊ものだろうし、今だったらアニメが席捲しているのですが、今の60代後半以上の世代(むしろもっと上かな??)だと、時代劇というのもヒーロージャンルに含まれてくるのではないかと思います。その斜陽な産業の中に、モノホンの侍(サムライ)が真剣に演じ、何も分からない(過去から来ているから当たり前w)中、生きる術として仕事として真面目に向き合っていく。そうして生きていく一人の侍の姿が、一種の職人気質なものを感じて、周りの仕事の雰囲気も大いに盛り上げていく。京都の自然な空気感や、桟敷の人々の情景をインディーズっぽいホンワカした目線で描くこともどこかホンノリ心熱くしてくれる作品なのです。それに彼を動かすものが、美人助監督に憧れるといった、ちょっぴりとした恋心も盛り込んでくれるのも実にいい。ちょっと古臭くない、、とも思われそうな作風なのですが、後半にミステリアスなヒトネタを組み込んでいるのも、ちょっとした新鮮味を感じさせる良いところでもあります。

<鑑賞劇場>MOVIX京都にて


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