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【焙煎機の内部温度分布測定】面白い結果でした

どうもどうも!平日は火星の研究、週末はコーヒーの研究に勤しんでいるShungoです。
さて、今回は焙煎機(DIEDRICHとAillio)の内部の温度分布を測定してきたので、その結果レポートです。
非常にマニアックな内容ですがご許しください。笑
ですが、焙煎している人にとってはかなり面白い結果かと思うので、ぜひご覧ください!


1バッチ目問題の原因とは?

事の発端は、"1バッチ目問題"と言われる1バッチ目のコーヒー豆の焙煎が安定しないという問題からでした。焙煎している人なら誰もが悩む問題ですね。
この理由として挙げられるのは、焙煎機の釜に十分蓄熱されていないから?内部の温度分布にムラがあるのでは?などです。ただ、まだ本当に何が原因なのか曖昧にされたままです。

そこで今回は研究室のサーモグラフィーをお借りして焙煎機の内部を測定してきました!(普段は、惑星の観測装置の開発に使用されているサーモグラフィーですが、まさか焙煎機の測定に使われるなんて思いもよらなかったことでしょう。)

測定概要

測定日: 2024/2/10
測定者: *ROASTARS (私、栗谷、山尾)
*ROSTARS: 宮城を拠点に焙煎をデータを用いて研究しているグループです
場所: Kuriya Coffee Roaster
測定した焙煎機: DIEDRICH(IR-2.5), Aillio R1 V2 (どちらもKuriya Coffee Roasterのもの)
サーモグラフィー: InfReC Thermo GEAR 

焙煎の様子

測定結果(DIEDRICH)

まずはDiedrichからです。下の画像は、4パターンの温度分布を示したものです。

DIEDRICHの焙煎機内部温度分布結果 ©️ROASTARS

予熱段階

まず、左上の温度分布が、コーヒー豆投入前に空気温度を320℃まで上昇させた状態の様子です。(設定ミスで画像に温度スケールを一緒に保存できなかったので貼り付けになってしまっているのはごめんなさい)

まずここで驚きなのが、ブレードの温度です。なんと500℃近くなっています。ブレードは豆を攪拌するために付いているのですが、周りの釜(黄色~300℃くらい)に比べて200℃も高い。これはなかなか衝撃ですね。
焙煎において、ブレードからの豆への伝導熱は実はかなりあるのかもしれません。(焙煎士にとって衝撃の事実です!)
もう一つ注目なのは、ブレードの温度のムラです。
±50℃くらいありそうです。。。

1バッチ目投入前

次に、実際の焙煎に近い空気温度260℃まで下げた時の結果が、右上の画像になります。温度は少し下がったとはいえ、それでも450℃程度はありそうです。高いなーーーーー!
ブレードからの伝導熱が実は大きそうです。

1バッチ目焙煎後

そして、右下が焙煎直後の様子です。豆温度182℃で豆を取り出しました。
コーヒー豆を焙煎したことによって、ブレードの温度が下がって温度のムラもほとんど無くなっていることが分かります。
この温度のムラが解消したことによって2回目からは安定しそうなことが分かります。

2バッチ目投入前

最後は、左下の2バッチ目投入前の様子です。
1バッチ目の投入前の状態と比べてブレードの温度が30-40℃程度下がっていることが分かります。大きな違いです!!
(画像では温度のムラもあるように見えますが、動画で見た時はそこまでなかったです。)

DIEDRICH検証まとめ

これらの結果をまとめると、以下になりますね。

  • ブレードの温度は空気温度, 釜温度よりもかなり高い(投入前400~500℃)

  • 1バッチ目と2バッチ目の違いは、ブレードの温度とムラ。2バッチ目の方が30-40℃くらい高い!

つまり今回の結果は、「1バッチ目問題の原因はブレードの温度の違いによるものである」という可能性を示唆するものでした。
そもそもブレードの温度がここまで高い(空気温度+150℃くらい)のも意外でしたが、そのブレードが1バッチ目の原因になっているかもしれないというのは、焙煎している人にとっては驚きだったのではないでしょうか。(衝撃の結果だ by 栗谷さん)
もちろん、1バッチ目問題の原因は一つではなく、蓄熱の影響もあるかもしれません。あとは、焙煎機によっても違ってくると思います。
私の焙煎機も測定してほしいという方がいればぜひご連絡頂けると嬉しいです(宮城県周辺限定)。
サーモグラフィーを持って測定しに行きます(行きたい)!!

測定結果(Aillio)

測定の様子はこんな感じ。

Aillio測定の様子

それでは、早速Aillioの結果を見ていきましょう!

Aillioの焙煎機内部温度分布結果 ©️ROASTARS

1バッチ目投入前

左上の画像は、1バッチ目の投入前の状態です。Pre-heatは200℃に設定しています。
Aillioはブレードの温度が釜よりも低くなっていますね。実際に見てみると材質が違うことが分かります。ということは、Aillioの場合は、ブレードによる伝導熱の割合は低く、基本的には釜から豆に伝導熱が伝わっていると考えられます。

1バッチ目焙煎直後

右上の画像は、1バッチ目の焙煎直後の状態です。
釜の温度がかなり赤くなっています。350℃くらいですかね。
ブレードの温度は上がっていなさそうです。

2バッチ目投入前

最後に、右下の画像で2バッチ目投入直前の様子です。同じくPreheatは200℃です。
2バッチ目投入直前の温度分布は、1バッチ目投入前とほぼ変わりませんが、2バッチ目の方が平均すると若干高いかもしれません。
ブレード温度は変わらなそうです。

Aillio検証まとめ

Aillioのまとめとしては以下になります!

  • ブレードによる伝導熱の割合は低く、基本的に釜から豆に伝導熱が伝わっている

  • 1バッチ目と2バッチ目で温度分布はほぼ変わらない

もし、Aillioで1バッチ目と2バッチ目で違いがあるのであれば、温度分布にはほぼ違いがないこと考慮すると、おそらく釜内部の蓄熱の違いによるものかと思われます。
焙煎機によって1バッチ目問題の原因は変わりそうですね!


最後に

ここまで読んで頂きありがとうございました!!
DIEDRICHのブレードの温度は意外な結果ではなかったでしょうか?
焙煎は面白いですね。
私の焙煎機も測定して、という方はご連絡お待ちしております。(プロフィールのインスタにDM等)
今後もコーヒー研究続けていきます!お楽しみに〜。
ではまた!!



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