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役割が自律性を高める|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

こんにちは。エール代表の櫻井です。

YeLLでは、たくさんの働く人の話を聴いています。
社外人材が聴いているので、具体的な仕事の話はあまりできませんし、相手の社内事情などは分かりません。
にも関わらず、週1回30分 × 12回、じっくりと相手の話を聴いていくと、あら不思議。ほとんどの組織で、エンゲージメントスコアが上がっていきます。

今日は「聴く」と「エンゲージメント」の関係性について、いつもながらに少し遠回りしながら考えていきたいと思います。


これは一昨年のことですが、松下幸之助さんが創られたPHP研究所で、40年以上に渡り松下幸之助さんを研究され、PHP研究所の取締役をつとめていた方と、台湾で3日間ご一緒する機会がありました。

その方に「松下幸之助さんの本の中で1冊薦めるとしたら何でしょうか?」と質問したところ、即答で「それなら『人間を考える』がいいと思います。」とお返事をいただきました。
「幸之助さんが『自分はこれまでいろいろなことを考えてきたが、結局このことが言いたかったのだ。自分の考え方の根本はこれにつきる。』と言われた本です。」とご紹介をいただき、その場でAmazonでポチッとしました。

その「人間を考える」の冒頭で、このようなことが書かれていました。

● 人間には、万物を支配する力が与えられている
● 人間は万物の王者となり、その支配者となる

正直、この冒頭で「ん?ちょっと傲慢では?」と感じたことを覚えています。

しかし、本を読み進めていくと、その違和感はすぐに消えていきました。
私なりにまとめるとこのようなことが書かれていました。

● 人間が人間を生んだのではなく、自然の理法というものが人間を発生せしめた
● 「万物の王者」とは、「人間は、みずからの知恵の働きによって、生成発展しつつある万物とそれを動かしている自然の理法を、逐次認識していくことができる本性を持っている」「万物それぞれにどのような特質があり、いかなる存在意義を与えられているかということを考え、それを明らかにしつつ、それぞれの存在意義を全うさせるという姿において、支配活用するのでなくてはならない」
● 「万物の王者」という人間の天命を実現するための方法は、「本質の自覚」と「衆知を集めること」である。
● 「本質の自覚」とは、「人間が王者としての道をあゆむために、まず何よりも必要なことは、王者としてのみずからのすぐれた本質を、しっかりと自覚認識すること」である。
● 「衆知を集めること」とは、「物事を為すにおいて、多くの人々や万物からの知識や知恵を頂いた上で、行っていく姿勢・態度」である。また、衆知を集めるためには「素直な心」(私心なく、くもりのない心といいますか、一つのことにとらわれずに物事をあるがままにみようとする心)が大切である。

私なりの理解では「人間は万物を恣意的に扱うのではなく、万物の力が最大限発揮されるために、万物を導き活かす自然界のリーダーたる役割が与えられている」ということだと受け取りました。

図2

自分の役割が変わると、「問い」が変化することが多いなと感じます。
例えば、メンバーからマネージャになった時とか、親になった時とか。
「どうしたら成果を上げられるだろう?」という問いから、「どうしたらチームメンバーが主体的に動いてくれるだろう?」という問いに変わる、というような。
問いが変わると、同じ物事なのに、その見え方や感じ方は変わっていき、自然と思考も変化していきますし、思考が変わると自然と行動も変わっていく印象があります。
役割を定義・認識するというのは、問いを変化させ、結果、行動を変えていく力があるんだろうなと思っています。

役割というものをもう少し考えてみると、役割は基本的には何かに所属をしている時に生まれるものだと思います。
もう少し抽象化してみると、我々が捉えやすい世界というのは「全体」と「部分」の連続で構成されています。

図1

「全体」を構成する「部分」が自分の役割を定義・認識できると、「部分」は「全体」の中でその役割を自然と果たそうとする方向に変化していくのではないか

と私は考えています。これを松下幸之助さんの例に当てはめると、

「宇宙」を構成する「人間」が自分の役割を定義・認識できると、「人間」は「宇宙」の中でその役割を自然と果たそうとする方向に変化していくのではないか

と私は考えています。

これを逆に捉えてみると、

もし「部分」が「全体」の中で存在意義を発揮し、貢献したいのであれば、「部分」が自己理解(アウェアネス)を高めることが非常に有効な行為なのではないか

と思っています。ちょっとしつこいですが、これも松下幸之助さんの話に当てはめてみますと、

もし「人間」が「宇宙」の中で存在意義を発揮し、貢献したいのであれば、「人間」が自己理解(アウェアネス)を高めることが非常に有効な行為なのではないか

と思っています。

「人間と宇宙」だと少し話が大きすぎると考えづらいので、もう少し小さい単位の全体と部分である「社会と会社」で考えを深めてみます。

多くの会社では、自社のビジョン/パーパスや、強み/弱み、ポジショニングの明確にすることを大切にしていると思います。
それは会社が社会の中での役割を明確にすると、会社の中で発生する問い(カルチャー)が定まり、社員の行動が変化し、自然と社会に貢献をする存在になっていくからではないでしょうか。

例えば、トヨタは「自動車をつくる会社」から「モビリティカンパニー」にアップデートをしました。
「私たちはモビリティカンパニーなんだ」という認識により、会社の中での日々の問いが変わり、物事の見方や捉え方が変わっていくはずです。そして、それは思考や行動の変化を生み出すのだと思っています。

先述したこの表記は、「社会と会社」という関係でも成り立つのではないでしょうか。

「社会」を構成する「会社」が自分の役割を定義・認識できると、「会社」は「社会」の中でその役割を自然と果たそうとする方向に変化していくのではないか

故に

「会社」が「社会」の中で存在意義を発揮し、貢献したいのであれば、「会社」が自己理解(アウェアネス)を高めることが非常に有効な行為なのではないか

図3

では、さらに小さい単位である「チームと個人」でも考えてみます。

3人のレンガ職人の話はご存じの方が多いかもしれません。
● 指示された通りにただレンガを積んでいる職人
● お金を稼ぐためにやっている職人
● 多くの人が祝福を受け、悲しみをはらう大聖堂をつくる職人
ただ言われた役割をこなす職人と、自分の想いや価値観を反映した役割意識を持った職人では、チームへの貢献度もパフォーマンスも大きく異なる、というのは直感的に分かる方が多いと思います。

一応、きちんとそのことが示された内容も引用しておきます。

ToMo指数という指標では、「心理的プレッシャー」「経済的プレッシャー」「惰性」を動機とした仕事では、単純作業では一定の効果を発揮するが、長期的なモチベーション低下や離職、メンタル上の問題を引き起こす。また創造性の発揮を妨げ、外的環境変化にも弱くなる。

一方で「楽しさ」「目的・意義」「可能性」を動機とした仕事では、複雑な仕事に対する創造性の発揮が強く、長期的なモチベーションが高まりやすい。また、外的な環境変化にも強いと言われています。

【参考】
(1)従業員のパフォーマンスを左右する6つの動機
(2)「きちんと管理すれば企業は成長する」の迷信が企業を衰退させる

自分自身の役割を明確にすると、日々の問いが変わります。
「どうしたらこのレンガ積みを早く終わらせられるか?」という問いから、「どうしたらみんなが喜び、癒やされる聖堂がつくれるだろう?」という問いに変化します。
すると、当然、物事の見方や捉え方が変わり、思考・行動に変化が生まれていきます。
これが「自律性やパフォーマンスが高く、チームに貢献する人材である」ということの1つの大きな要素なのだと私は思っています。

与えられた仕事を「プレッシャー」や「惰性」でこなすのではなく、自分の「楽しさ」「目的・意義」「可能性」に合致し、納得感の高い役割が定義・認識できれば、自然とチームへの関わり方が変化していくわけです。

この通り、先述したこの表記は、もちろん「チームと個人」という関係でも成り立つものだと思うわけです。

「チーム」を構成する「個人」が自分の役割を定義・認識できると、「個人」は「チーム」の中でその役割を自然と果たそうとする方向に変化していくのではないか

故に

「個人」が「チーム」の中で存在意義を発揮し、貢献したいのであれば、「個人」が自己理解(アウェアネス)を高めることが非常に有効な行為なのではないか

図4

「聴く」と「エンゲージメント」の関係性について書くと言いながら、「聴く」が一切出てきていませんが、一旦今回はここまでとさせていただきます。

次回はこの続きとして「エンゲージメントを高める際に抜けがちな視点」について書きたいと思います。


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