俗説「東北地方は寒いから母音が少ない」はどこからできたか?
言葉に関する俗説にはいろいろあります。その1つに「東北地方は寒いから口をあまり開けないで発音するようになり,母音の数が減った」というものがあります。実際ちょっと検索するとそれっぽいものがわんさか引っかかります。
大局的に見たとき,気候と母音が無関係とは言い切れないのは事実ですが,東北の方言についてはおそらく気候は関係ありません。というか、個別の言語に適用できるのかで怪しいです(それについては稿を改めます)。
ではこの俗説はどこから来たのでしょうか。日高水穂『秋田県民は本当に〈ええふりこぎ〉か?』によると,戯曲『國語元年』(1985-86)で次のような台詞があるそうです。
ふむふむ読んでみるかなと思ったら,なんと再放送が近日あるようなのです。これは確認しなければ!
ただ井上ひさし由来というのも本当か気になりました。1980年代というのはちょっと新しい気もします。もうちょっとないかなと探したら金田一京助の1940年代の著作に次のようなことが書かれています。
ここには「寒いから口があまり開かないとされがちだ思うかもしれないけど違うよね」と書かれてます(ご指摘いただき修正しました)。ただこれはあるあるだと思いますが,「Aじゃないよね」と言ってるのに「Aだ」と勘違いする人ってけっこういます。これも同じように「違うよね」と書かれた話の「違う」という部分がなくなって広まったんじゃないかなということも考えられそうです。さてどうでしょう?
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