支援の前に大切な姿勢
2,015文字あります。個人差はありますが、4分〜6分ほどでお読みいただけると思います。
よこはま発達クリニック・相談室の佐々木です。
今回は「支援の前に大切なこと」というテーマで書いていきます。
当事者の方々を支える立場の人であれば、「どう支援するか」を考えます。それは当たり前のことではありますが、その前に大事なことがあると思っています(前回の記事でも少し触れていますので、まだお読みでない方はご一読ください)。
私たちのことを、私たち抜きで決めないで
ご存じの方も多いかもしれませんが、2006年12月の国連総会で、「障害者の権利に関する条約(以下、障害者権利条約)」が採択されました。これは、障害のある方々に関する初の国際条約です。当時の日本はまだ法的整備が不十分だったため、その後法整備をすすめ、2014年1月にこの条約に批准しました。
この障害者権利条約が策定される過程には、当事者の方々も参加し、
「私たちのことを、私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」というスローガンが、すべての障害者の共通の思いを示すものとして使用されたと言われています。
これは、当事者を除いた周囲の人たちが、それぞれの考えや価値観だけでものごとを勝手に決めていくことは、誰しもが平等にある人権という観点から考えても不適切であるという考え方です。
当事者の方を中心に
ときに、良かれと思って「〇〇ができた方がいいに違いない」「〇〇できないのは困る」と支援を考えることがあるかもしれません。
でも、支援を考える際には、障害者権利条約で掲げられたスローガンである「私たちのことを私たち抜きで決めないで」という言葉をまずは考えてほしいと思っています。
なかには、そうした意思決定に大きな困難を抱えておられる方もおります(意思決定支援という視点も重要ですが、これについてはまた別の機会に触れます)。だからといって、こちらの価値観だけで支援の方向性を決めていいことにはなりません。そのため、次のようなことにいつも疑問を持つようにしています。
一方的なものになっていないか
ご本人も本当にそれを望んでいるのか(ニーズがあるのか)
本当にご本人の生活の質の向上に寄与するのか
ご本人の障害特性から考えても妥当なものなのか
つまり、我々の思い込みや、推測ばかりで支援をすすめないということです。あくまで中心にいるのは当事者の方たちです。情報共有し、支援プランを提示し、考えてもらうことは非常に大切なことなのです。
でも、そのためには、それぞれの方の障害特性を忘れないことです。ぼくらが相手の方を理解しようとすること、それぞれの方の特性を知ることは、同じ人としてフェアに考えることでもあり、誠実なことです。特性を知ることの意味については、先日Twitterにも少し書きました。
情報共有・情報提供をするにしても、その方にとってどのような形が受け取りやすいのか、どのような中身が必要なのかを知らなければなりません。これは当たり前ですが、ぼくらも自分にとってわからないもの、不要なものを示されてもよい感じはしませんよね。
まとめ
今回は、支援を考える前に大切な姿勢について書かせていただきました。
「私たちのことを、私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」が前提
意思決定に大きな困難を抱えておられる方もおられるが、それはこちらの価値観だけで支援の方向性を決めていいという意味ではない
ご本人のニーズや生活の質を考えて
障害特性から考えること、つまりその方を知ることがフェアであり、その人を尊重するためのスタート
今回の記事が、少しでも皆さんの暮らしのヒントになれば幸いです。
よこはま発達相談室
佐々木康栄
メンバーシップ
発達障害や自閉症スペクトラムの基本的な知識だけでなく、支援の考え方や具体的な対応などについて一緒に学んでいくためのグループを運営しています。Facebookを中心に活動していますが、コラムだけ読みたいというニーズもあり、note版も立ち上げました。note版は少人数ですが、Facebook版は165名前後のコミュニティです。ご関心のある方は下記より詳細をご確認ください。
2023年も支援の専門性の向上を目指し、多くの研修会を開催していきたいと思っております。現在は、Peatixというサイトにて研修会情報を掲載しております。宜しければ、どのような内容なのか等ご確認いただければと思いますし、皆さんとご一緒できることを願っております。
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