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発達障害支援における心理の役割

 皆さん、こんにちは。よこはま発達相談室の心理の佐々木です。今回は、発達障害の方の支援における心理スタッフの役割について書きたいと思います。ただし、求められる役割はそれぞれの職場でも異なるでしょうし、一律にこうあるべきということではありません。あくまで当相談室で、私たち心理スタッフがどのような考えで日々の臨床業務を行っているのかということですので、ご関心のある方は最後までお付き合いください。

心理の専門性って?

 皆さんは公認心理師や臨床心理士の仕事についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?これまで私が実際に伺ったことがある意見としては、「検査を取る人」「カウンセラー」「心の悩相談をしてくれる人」等がありました。確かに、どれも間違いではないかもしれません。

 発達障害の方達は非常に多様であり、その支援もまた多様です。一人ひとりに合った支援のためには、その方について、個人の特性だけでなく、環境についてもよりよく知らなければなりません。そのためには、時間をかけながら、丁寧に、ご本人、ご家族と一緒に考えさせて頂く必要があると、私たちは考えています。このプロセスが、いわゆる「評価(アセスメント)」になります。なぜ、アセスメントが大切かというと、私たちは支援のあり方は一様ではない=テーラーメイドであるべきと考えており、それを実現するためには、そもそもその方のこと(環境も含め)を知らなければなりません。そのためアセスメントが私たち心理の重要な専門性の一つだと言えます。具体的には、それぞれの方の年齢や発達水準に応じた心理・発達検査の実施と解釈、行動特徴から認知特性(ものごとの捉え方や考え方)を理解する方法などがあります。アメリカのノースカロライナ州で行われているASDの人々やその家族を支援する包括的プログラムであるTEACCH Autism Programの創設者であるSchopler先生がまとめたTEACCHの9つのPhilosophy(哲学)の中にも、「個別に、正確な評価をする」という点があげられており、アセスメントが重要であることがわかります。こうしたアセスメントの視点のない支援は、「肩幅や袖丈などの採寸はしませんが、あなたの体型にあった洋服を作ります」と言っているようなものだと思います。

テーラーメイドの支援

スペシャリストであると同時にジェネラリストを目指す

 発達障害の方の支援には、医師や心理士、保育士や教師、言語聴覚士、ケースワーカー、作業療法士、指導員、ヘルパー、就労支援の専門家などの多様な専門家が関与することが多いです。日本では、療育のような直接指導は保育士や指導員などが担い、ご本人・保護者のカウンセリングや検査は、公認心理師や臨床心理士が、他機関との連携はソーシャルワーカーなどの専門家が担当するといった棲み分けがなされることが多いように思います。私たち、よこはま発達相談室の心理はどうかというと、主には以下のように大別されます。

・発達障害に関する診断・評価の見立て

・知的に重度〜高機能のお子さん(または成人)の検査や療育指導

・ご本人やご家族のカウンセリング

・他機関(福祉施設、学校、企業等)との連携(情報共有やケースミーティング)

・コンサルテーション

 上述したTEACCH Autism Programにおいても、それぞれの専門家が自分の専門性を有し、スペシャリストであると同時に、全体を見渡し理解する視点を持ったジェネラリストとしての姿勢を重視しています。なお、コンサルテーションという言葉に馴染みのない方もおられるかもしれませんが、当相談室でのコンサルテーションについてはHPにも記載しておりますので、ご関心のある方は下記よりご確認ください。

結局、心理って?

 ここまで、簡単にですが私たちの仕事について解説をいたしました。では、「結局、心理の人って何をしてくれるのか?」という点についてです。これは様々なご意見やお考えがあると思いますが、個人的には「生活支援の専門家」だと考えています。ここでいう生活支援とは、食事や家事などの身の回りのことなどの狭い意味での生活支援ではありません。「人生や生活におけるあらゆること」と非常に広い意味での生活支援です。実際に日々の臨床では、療育に関することだけでなく、身辺自立、コミュニケーション、健康管理、学習、受験、大学の履修や就活、お金の管理、一人暮らし、福祉制度の利用など相談内容は非常に多岐に渡ります。そして、当然ですが、それぞれで対応や方針は違いますので、個々のアセスメントが重要になってきます。つまり、「アセスメント」と「支援」は発達障害の方の支援をしていく中では切っても切り離せないものであり、またその専門性を求められるのが心理の役割でもあると思います。なお、当相談室では、上述したコミュニケーションについては心理スタッフも相談・療育を実施しておりますが、一番のスペシャリストは言語聴覚士(ST)になりますので、言語聴覚士がどのような支援をしているのかご関心のある方は、当相談室のHPにてご確認ください。

 ここまで述べさせて頂いた考え方は賛否あるかもしれません。もちろん、冒頭に述べさせて頂いたように、それぞれの職場やお立場の中でやれることもありますので、心理の役割や専門性について一様に思っているわけではないことは誤解のないようにお伝えしたいと思います。

 さて、いかがでしたでしょうか?私たちの役割について、なんとなくイメージしていただけたでしょうか?

 私たちはこれからもスペシャリストであると同時にジェネラリストであることを目指したいですし、そのための研鑽を続けていきたいと思っています。

よこはま発達相談室 佐々木康栄


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