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アセスメントの勉強だけしても、意味のあるアセスメントはできるようにならない

(5,572文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)

こんばんは!よこはま発達グループの佐々木です。
   
ちょうど今週は「フォーマルなアセスメント」についてお話をさせて頂く機会があったり、コンサルテーションが多く、オンラインと訪問含め7か所の事業所さんとご一緒させていただいたりしていました。その中で感じたり、考えたりしたことを共有していきたいと思います。


アセスメントの勉強だけしても、アセスメントはできるようにならない

これは、これまでも何度か書いていることかもしれません。
  
支援を考えていく際には、「アセスメントが大事」「まずはアセスメントから」と見聞きすることが多いと思います。そうなった時には、多くの場合「アセスメント」と名前のつく研修会に参加したり、そうした勉強をしようと思うでしょう。それはどちらも大事なことです。
   
でも、そこでよくある落とし穴というか、「こんな視点がないと難しいのでは?」と感じるのは、そもそも発達障害に関する知識がないと「アセスメントはできるようにならない」ということです。
  
正確には、「アセスメントをとること」はできるようになると思いますけど(例えば、検査の勉強をすれば、検査自体は取れるようになる。マニュアルもあるので)、そのことと見立てが立てられることと支援プランを立てられることは別です。
   
例えば、知能検査一つとっても、知能検査自体は実施できたとしても、結果の解釈や支援プランは結構違うこともあります(検査なので、数字自体が大きく変動することは少ないと思いますが)。典型的なのは、言語に関する領域が高いから「言語によるコミュニケーションが得意」とされるなど。ASDの支援を考えた際には、コミュニケーションの特徴として、言葉があるかどうかというのは狭い特徴で、人とのやり取りに言葉をどう用いるのかなど、コミュニケーションの質がどうかを考えることが大切です。
   
検査上の得点が高いとしても、検査で見ているのは言葉の知識があるかどうかだったりするので、その質を確認するためのものではありません。もちろん、正答はできていたとしても、端的に要点をまとめた説明ができているのか、冗長な説明だけれども得点に必要な情報は入っているというのは、コミュニケーションの質の領域として判断できるかもしれませんが。それでも、それがコミュニケーションの特徴として判断するためには、そもそもASDの人のコミュニケーションの特徴を知らなければなりません。
  
他にも、検査上は正答でも、回答の中身を見ると「注目しているポイントが違う」ということもしばしばです。そうすると、概念的・抽象的なことがらの理解を見ている検査でも、「得点は高いけど、概念的・抽象的なものごとの理解は苦手なので、具体的に伝える方がいい」という支援プランになることもあります。  
   
これらが絶対に正しいということではありませんが、ASDのことを知った上で検査を実施すると「一般的な解釈が、必ずしも当てはまるとは限らない」ということはしばしば経験します。
  
よく「検査で診断はつけられないし、つけるべきではない」と言われますし、それはそう思います。でも、診断を考える際の情報を厚くするような情報提供はできます。なので、自分が検査を実施する際には、数字だけではなく、社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーション、その他の認知特性などを整理します。あくまで検査でわかる範囲に限りますが。
   
検査を受けるというのは、決して小さくないご負担があります。だからこそ、そこから日々の生活に活かせるような情報を整理していくことが求められると思いますし、それが検査を実施する人の責務でもあるのではないでしょうか。
   
最後に宣伝になりますが、そうしたことができるような専門家を養成するための研修会を定期的に実施しています。主には、医師や心理の方を対象にしていますので、もしご興味あれば下記よりご参加をご検討ください。実際の検査場面を見て頂きながら、一緒に所見や支援プランの整理をしていきます。
   
▼専門家養成のための実践講座


反応しないという対応について

ここからは、コンサルテーションの現場で感じたことを書いていきたいと思います。「これって結構大事な視点だけど、あんまり研修会とかでは話をしていないかも」という内容です。
   
よく現場で「反応を楽しんでいると思うので、無視をした方がいいか」と聞かれます。確かに、そうしたことは僕もよく見聞きします。それに対しては、必要以上に過剰な反応をしないことは大切だと思います。

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