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心理・発達検査はなんのために?

1896文字あります。個人差はありますが、3分〜5分程でお読みいただけます。

よこはま発達相談室の佐々木です。
新年のご挨拶から記事の更新までだいぶ間が空いてしまいました。日々の臨床業務以外にも、「みんなで考える発達障害支援」というオンラインサロンを運営しており、そちらでは毎週3000文字〜5000文字くらいのコラムを書いています。そのためnoteでの更新頻度が落ちてしまっていますが、今年も遅々としたペースですが更新していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。ちなみに、オンラインサロンはFacebookの非公開グループなのですが、コラムだけ読めれば良いという方向けにはnote版もありますので、ご関心あれば詳細をご確認ください。

さて、僕自身はいくつか肩書き(資格)があるのですが、特に専門とする領域は心理の領域です。そのため、発達検査や心理検査を実施することも少なくありません。検査はただ数字を出すためであったり、”とりあえず”で実施するものではありませんが、皆さんは「なんのために実施をするのか?」について、どのように考えますか?
今回はその点について、いくつかのポイントを共有していきます。

支援のための検査

検査のもっとも大切な目的は、実施することではなく、支援方針を検討することです。つまり、検査は目的ではなく、支援方針を考えるための手段の一つに過ぎないということです。

そのように考えていくと、支援方針に活かされない検査は、実施する意義に乏しいと言えるかもしれません。では、支援に活かすためには何が必要なのでしょうか。

ご本人を知ることが支援の第一歩

それぞれの方の特徴(得手・不得手)を知ることがなぜ大切かというと、特徴を知っているかどうかで支援方針が変わるためです。

例えば、目の前の教材があるとすぐに触ろうとする方の場合には、
・衝動性が強い(衝動性)
・指示を聞いてからというルールの理解が曖昧(社会性)
どちらの可能性もあるし、両方という可能性もあります。

もし、
(1)衝動性が関係しているとすれば、目に入る刺激を整理する
(2)社会性が関係しているとすれば、どう行動して欲しいのかルールを伝える
(3)どちらの特徴もあるとすれば、(1)(2)どちらも必要
など、それぞれの場合で支援方針が変わってきます。

このように、「情報が支援を変える」そんな風にぼくは考えています。

数字や結果には現れない特徴を見逃さない

検査結果は、発達年齢や知能指数など数字で結果が出ることが多いため、どうしてもそのインパクトが強いことがあります。だけれども、数字だけで支援を考えることは難しく、実際の支援方針の検討のためには数字には現れていない認知の特徴(ものごとの捉え方や感じ方)を把握することが大切です。

例えば、特定の作業に時間がかかっている場合でも、
・手先の不器用さ
・集中力
・プランニング(効率良い段取りを組む力)
・生産性よりも正確性を重視している
などが関係しているかもしれません。

あるいは、了解した返答を下さったのに指示したことと異なる行動を取っている場合でも、
・指示を聞き漏らしている
・指示を理解できていない
・わからないことを尋ねることが不得手
など、いろいろな可能性が考えられます。

このように実際の検査では、数字以外にも実は見ているポイントが多くあります。
ただし、そのためにはアセスメンする側がそうした視点を持っておくことが大切です。つまり、ASDの方々のアセスメントや支援を考える上では、ASDの方々の認知特性を把握しておくことも重要です。これらについては、以前まとめたものがあります。一部有料ですが、ご関心ある方は下記よりご覧ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は検査を実施する目的について、3つの視点から整理させて頂きました。
(1)支援のための検査であり、検査は目的ではなく手段である
(2)ご本人のことを知るため=支援方針を検討するため
(3)数字以外の特徴を見逃さない

もちろん、検査だけで支援方針を考えるのではなく、検査以外の情報も必要であり、さまざまな情報を合わせながらご本人や周囲の環境を理解していくことがもっとも大切です。

なお、2023年7月には内山医師・北沢心理師・佐々木の3名で、専門家の先生を対象にWechsler式の知能検査をどのように活かしているのか、実際の映像も見て頂きながら皆さんと共有するセミナーも開催します(オンラインです)。WISC-Ⅴを取り上げるセミナーは、我々としても初めてになります。ご関心ある方は、下記より詳細をご覧ください。

それでは、本日も最後までお付き合いくださりありがとうございました。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

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