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御伽原江良は小規模炎上を用いる天才である

 御伽原江良は天才である。デビューしておよそ一か月で、6万人を超えるチャンネル登録者数を得ているのだ。にじさんじという枠組みがあるとはいえ、これは尋常なことではない。今もなお、彼女のチャンネルにおける登録者数は伸びている。増加の要因にはもちろん、彼女の配信者としての能力もあるだろう。しかし、私は仮説としてもう一つの要因を挙げてみたい。

 もう一つの要因とは、適度な小火を起こす能力である。 

 彼女は小火を起こすことに長けており、第三者の拡散力を利用する才能を有しているから、ここまでの存在感を発揮しているのではないかと、私は考えている。

 エンタメはまず、見てもらわねばならない。質の高低、内容、ファン層、コンテンツの長さ――全てはまず、見てもらうことから始まる。手を伸ばして、目を向けてもらわなければステージにも立てない。そういった意味で、にじさんじという箱は素晴らしい。にじさんじに加入し、配信をすれば一定数の視聴者が一度は見に来る。だが、それでもやはり足りない。興味を持たない人は持たないままであり、ファンになってくれるかもしれないがまだコンテンツを見ていない人というのは、ネットの海に多数存在する。そんな新規層の獲得のために行われるのが、俗にいう切り抜き動画だ。時間単位で行われる生配信の中から特別面白く、目を引く部分を抜き出して、メインで活動する以外のプラットフォームに掲載する。タイトルや投稿時間次第ではバズり、数字が増える。ここで大事なのは試行回数だ。下手な広告も数打てば当たる。しかし、動画編集には労力がいる。ならば、自身の労力を使わなければよい。この切り抜きは本人によって行われるのも良いのだが、ファンによって行われても別に良いだろう。知ってもらえるのだから。アンチに悪意と共にトリミングされようと良いだろう――そのコンテンツを面白いと思う人間が、この広い電子の大海にいる可能性は、十二分にある。切り抜きに貴賤はない。ファンであろうとアンチであろうと、広告であることに変わりはない。ならば、切り抜き動画をより投稿してもらうにはどうするのがいいのか――答えはそう、小火を起こすことである。

 偶然だが、御伽原江良は始まりから広告・拡散能力のある火に恵まれた。同期の真堂雷斗がにじさんじをクビになったからだ。この時点でもう注目を集められる。幸と不幸が重なってはいるが、結果的にややプラスではないかと私は考える。同期のキャラは男性であるからファン層は女性であり、御伽原江良のキャラ性は同性に受けるタイプではないから、コラボの恩恵はあまりないはずだ。そして真堂雷斗が起こした火は大火だった。真偽はどうあれ、他のVtuberグループにまで及ぶ女性問題だ。悪意やゴシップが好きな人間やプラットフォームが飛びつくから、拡散効果は上々だろう。この一連の騒動の中で、御伽原を知った人もまあまあ存在するはずだ。御伽原はこういった大火事の側でLO読者であることやロリコンカミングアウト(またのんき先生への言及は萌木シナジーもあるが)、グルシャンや失言、家事が出来ないことや九九が怪しいというキャラ設定と乖離する要素を配信で披露し、視聴者を獲得した。

 御伽原江良への強い動線のもう一つは、萌木三姉妹の一員であるということだろう。かくいう私もこのルートである。元々物述有栖と童田明治のリスナーであり、新しい家族ということで見始めた。この経路は、後から考えれば大幅にプラスな要素だ。萌木姉妹が好きなリスナーの大半は、RP好きだからだ。他の方がどうかは分からないが、私はそうである。RPを好んでいるから、一旦運営から用意された建前のキャラを、崩したキャラであるライバーはあまり見ない。しかし萌木せんせのお子さんということで見始めたし、実際童話組までは楽しく視聴していたのも事実だ。こうして本来予想される視聴者層以外にもヒットしたのは、ひとえに御伽原の能力による成果である。そして設定ガチガチのRP勢2人と、一度与えられたキャラを壊したキャラである1人とのコラボは、問題・論争を起こし――これが御伽原江良という存在の更なる拡散・広告へと繋がった。

 コラボには広告能力がある。まだ知名度の十分でない新人が古参と行うのであればなおさらだ。コラボと言わずとも、一方が言及するだけでも十分。御伽原江良が、森中花咲の話題を出し、配信を見ながらおしゃぶりをしゃぶっておぎゃっていたというエピソードを話したことにも、森中花咲ファンへの広告や切り抜き動画の生成を後押しする効果があるだろう。こういった言及の有効性を踏まえると、御伽原江良が多くのライバーについて失言を行ってきたのにも頷ける。切り抜き動画は悪意にしろ善意にしろより多く作成されるし、他ライバーをメインで追っているリスナーにも自分の存在を周知することが可能である。このように小火を絶やさず人気を確保してきた天才に取り、童話組のオフコラボは絶好の機会だ。

 善悪を抜きにすれば、新人にとっては多少のやらかしがあろうと、むしろ炎上でなく小火程度であるならば歓迎すべきと言ってもいい。御伽原江良の数字がそれを証明している。そして小火を起こすには、童話組コラボは最適だった。RP勢と既存キャラを一度破壊するキャラの衝突になるからだ。古参ファンは期間に応じた思い入れがあり、新人が行った行為に対して疑義を呈すか、抗議をする。新参ファンはその疑問や抗議に対してのカウンターとなる言論を行う(今書いているこの記事もそうである)。第三者がこの騒動について語ったり、切り抜いたりすることで拡散と集客が出来る。外部に敵対者を生み出すことで自身に付いているファン層を入れ込ませる、なんて芸当も成し遂げた。この手法に伴う弊害について置いておけば、御伽原江良は、天才である。

 私が無学であるため、このような手法を用いているVtuberを御伽原江良以外存じていない。であるため比較が難しく、本当にこの手法が有効であるのかは定かではないが、極めて高い御伽原江良の同時接続者数やチャンネル登録チャンネル登録者数の増加を支える一つの根拠として、小火による拡散能力を仮説として建ててみた。ご意見ご感想があれば、どしどし送っていただきたい。なるべく多くのVtuberファンにこの文章を読んでいただきたいから、拡散していただけると幸いだ。


 


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