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【影響工作の脅威1パス目】「自分だけは騙されないと信じてる人間に限ってコロッと騙される」摂理について。

「自分だけは騙されないと信じてる人間に限って、その為に固めたロジックの裏を突かれてコロっと騙される」。よくある話ですが、完全に備える事は出来ません。まさか自分まで引っ掛かっていたとは…

「影響工作」概念との邂逅

今回の投稿の出発点は以下の投稿。

前回投稿に引き続いてtumbr全盛期(2010年代前半)の思い出から綴り始めたのですが…調べるうちに出てきた「ロシアの影響工作(Influence Operation)」の話に思い当たる節が…
ロシアの影響工作(Influence Operation)

米国及び周辺諸国の脅威に対し、独特の安全保障観をもつロシアでは、近年、確実な安全保障を求めて、非軍事・軍事のあらゆる手段をもって戦う「ハイブリッド戦」という戦い方を模索している。このハイブリッド戦の根底には、中国の人民解放軍将校(喬良大佐及び王湘穂大佐)が1999年に打ち出した「超限戦」という戦略があるのではないかと言われている。

ロシアは、従来から保持している固有の安全保障戦略とこの「超限戦」とを比較・研究し、戦略文書としてその内容を取り入れたのではないかと見られている。ロシアの「ハイブリッド戦」という戦い方が、文書として対外的に初めて明らかになったのは、2013年2月に、ゲラシモフ参謀総長が発表した安全保障論文「先見の明における軍事学の価値」と言われている。その戦いの中核となっているのは非軍事手段の「影響工作(Influence Operation)」
を中心とした情報戦である。この戦い方は、第7の領域(認知領域)での戦いとも表現でき、従来では体系的にカテゴライズされていなかった領域での戦いとも言える。

上掲「ロシアの影響工作(Influence Operation,2020年)」

特に気になったのがこの箇所。

2016年の米大統領選挙の際に広まった「偽のニュース」という概念には、客観的な真 実の歪曲と誤解を招くような内容が含まれている。Thomas Jefferson、Mark Twain、 Winston Churchillがそれぞれ書いたとされる一節:「嘘は、真実がその真価を発揮する前に、 世界の半ばを回っている」が現実に生起したとも言える。米国の事例が示しているように、 クリントン国務長官の健康への懸念など、ロシアが発信した偽りの記事は、オンラインで かなりの数の視聴者を集め、米国人口の大部分に到達したことが後に判明している。

上掲「ロシアの影響工作(Influence Operation,2020年)」

そうまさしく、この投稿で紹介した「2016年度米国大統領選をめぐるインターネット上での騒動」とドンピシャで関わってくる内容なんですね。

「北朝鮮ネット工作追跡」の思い出

実は最初に意識した瞬間に思い出したのはこちらの話。

この手の話で思い出すのが、とある北朝鮮系ネット工作員の話。あらかじめ断っておきますが、tumbr全盛期(2010年代前半)にとある韓国系アカウントから又聞きした話なので情報信頼度もその程度と思ってください。一緒に「tumbrにおける北朝鮮系ネット工作員の足跡」を追ってたのですが…

上掲「こんにちは、そしてさよならナチズム」

まぁ「情報工作」と聞いてもこっちしか浮かばなかったんですね。この段階での当事者意識ゼロ。

ちなみに当時は「日本人は今でも東南アジアからこっそり幼児を輸入して食べてる現役人喰い人種だ。だから世界中で人間なんて思われてない。私の街では見つけ次第みんなで殺してる」みたいなデマを英語文面で大量投稿流してるのが北朝鮮系ネット工作員の仕業と目されていて、(上掲の韓国系アカウント曰く)実際中南米や中東やアフリカ辺りの政情不安定な地域で何人か殺されたものの、もちろんそんな危険な場所に日本人が赴く筈もなく、実際に殺されたとすれば中国系や韓国系や(あり得ない事に)北朝鮮系の「素性の怪しい商人」ばかりだった可能性が高いとか。しばらくしたら急にぱったり投稿が絶えましたが、北朝鮮の場合、失敗が発覚しての中止なら三族まとめて生きたまま高射砲や迫撃砲弾や機関砲の標的にされたり、軍用犬の餌にされた可能性もあるとの事。

上掲「こんにちは、そしてさよならナチズム」

この「書き込み一斉削除」があったのが2014年の話。この年には朝日新聞が吉田証言を誤報と認める展開もあり、当時はそちらと関連付けて語られたのでかろうじて時期を特定出来た次第。

そして、この記述…

他に北朝鮮系ネット工作員の関与が疑われたのは①セオウル号沈没事故(2014年4月16日)に際して、その悲劇を悼む投稿に乱入して「お前ら帝国主義者どもに我々の悲劇を悼まれる筋合いなんてない‼︎まずお詫びと補償が先だろうが‼︎」などと暴れるアカウントが続出。ただしこれは親北派韓国人が勝手にやった事かもしれない。②KKK関係者から「もちろん我々は、劣等民族たるアジア人が違いに殺し合ってその数を減らすのは大歓迎だ。だがその下らない争いに俺達を巻き込むな」と宣言されてしまう。詳細は不明だが、どうやらネットだけでなくヒューミント系の人脈まで利用して「差別主義者の白人に日本人を襲わせる」計画が頓挫したらしい。③隙あらば韓国と北朝鮮の一体性をアピール。「朝鮮戦争(1950年~1953年)の最中すら、我々は密かに連絡を取り合っていたのだ」。こんな愚にもつかない嘘すら、韓国と北朝鮮の区別もつかないアメリカの若者は信じてしまう様なんです?

上掲「こんにちは、そしてさよならナチズム」

この時は思い出した順番で書いたので時系列を無視してますが「KKK関係者がネットで声明を出した」のは2014年以前。それ以前の「日本人は人喰い人種みたいな伝統的主題に執着してほぼ不発に終わった」時代の工作疑惑に分類されます。そういえば2014年から2015年にかけては米国戦争映画「アンブロークン(2014年)」の日本公開断念に至る騒動も。

このあたりにはまだ「世界中に日本人を人喰い人種として喧伝しようとする」北朝鮮系プロパガンダの伝統が感じられなくもないですが、一方それが本当に情報工作だったとしたら「セオウル号沈没事件(2014年)への追悼投稿に噛み付いて回って韓国人への国際感情を悪化させる」「(朝鮮半島事情に疎い若いアメリカ人向けに)韓国と北朝鮮が昔から裏では繋がってた事を印象付けて韓国を孤立させる」辺りは動員出来た人数が比べ物にならないくらい大きくなり、しかも「(猫またぎされる原因となる)北朝鮮らしさ」が慎重に消され「影響工作」としての洗練があった事になります。

そもそも「反日」さえ絡まなければ北朝鮮の情報工作はそもそももっと巧妙だったという証言も。例えばこれもやはり韓国系アカウントの又聞きですが、トゥールーズ連続殺人事件(2012年)に際してDaumの従北左派カフェに犯人側に同情し「ナチス時代は(一方的被害者だった)ユダヤ人に同情するのが人道主義だったが、今はユダヤ人の絶滅を願うのが人道主義」「ユダヤ人は日本人同様、先天的ナチス」などと過激な書き込みを繰り返すアカウントが次々と現れたそうです。この件を北朝鮮系ネット工作員と結びつける証拠は特にないのですが、北朝鮮がイラン革命防衛隊と親しい関係にあり、脅威を感じた相手へは容赦なく先制攻撃を仕掛けるイスラエルの苛烈さへの恐怖を共有している事からそういう振る舞いに出たという話も。なお彼ら自身がネット工作員なのではなくヒューミント工作で洗脳された若者達が投入された可能性も指摘されてました。追加情報はもらえず、その後どうなったかは不明。

本当に工作があったかどうかはともかく「(一時期その総本山だったロシアも含め)共産圏のプロパガンダは平気で「味方を称する人々」をも捨て駒に使うと信じられている」コンセンサスが再確認された事件となりました。そう、むしろ重要なのはあちら側の人々に「敵の敵は味方」と感じる感覚は存在しないのだという重苦しい現実認識…

平野耕太「ドリフターズ」5巻より
平野耕太「ドリフターズ」5巻より

日本でもベストセラーとなった中国SF劉慈欣「三体(2006年発表、2008年刊行)」を読んでも、この感覚の片鱗くらいは掴めます。例えば反体制で反権力な自由主義圏のリベラル派の皆さん。彼らはそれぞれマルクス主義なり共産主義への憧憬を抱えてたりもする訳ですが、そういう部分への共感はないに等しく、むしろ一般人ほど強く「反体制派」や「反権力派」に対する脊髄反射的拒絶感を示すもの。実際、その感情を反映して次々とそれまで内在させてきた人倫的欠陥を露にして地球滅亡を狙うエイリアンの手先に転落していくのです。

ましてや無政府主義者に至っては、自由主義圏以上に毛嫌いされてきた伝統を誇ります。むしろそれに引っ掛かる様な人間を侮蔑し、容赦なく破滅させて切り捨てていく影響工作が採用される背景には、さらにそんな人間を人間と思わない恐るべき心の暗闇が広がっているという話…

アナキズムFAQ

日本共産党FAQ「中核・革マルは共産党の分派なの?」

まぁこういう話は疑えばキリが無く、しかも追えば追うほど思考様式も歪んでいくので怖くなって途中ですっぱり足を洗いました。もしあの時そうしてなかったら、一端の陰謀論者に仕上がっていた可能性も…

ある段階からこの手の情報を追うのはすっぱり辞めました。目を通された方はお気付きになったと思いますが、追えば追うほど精神汚染される様な嫌な感触があるのです。その上「もしかしたらそうやって色々親切に案内してくれる韓国系アカウント自体がネット工作員、いや下手をしたらJoke Account?」と疑い出してしまったからです。まぁ所詮は匿名SNSサイトなのでその気になればどんな偽造投稿も可能。北朝鮮系プロパガンダには(日本人をやたら人喰い人種にしたがる)参照ソースや言い回しに独特の特徴があって、それが使われるか使われてないかが重要な判定基準となるのですが、この辺りに詳しい人間は偽造も容易という訳です。

上掲「こんにちは、そしてさよならナチズム」

そうした経験もあって「ネガティブな欲求を束ねても、ネガティブな結果しか生まれない。ポジティブな欲求を束ねて、ポジティブな結果を生みだそう!!」なる持論に辿り着いた訳ですが…まぁこの手の社会の動きに巻き込まれない為の最低限の防御くらいは必要となってくるという話…

見逃されていた「最初の兆候」

この手の話で一番頭が痛いのが、ほぼ2010年代の間じゅう、私も町山智浩のこの辺りの発言が原因で「ウクライナ(特にドンバス周辺)はネオナチの本拠地」と信じていた事。
町山智浩「ウクライナはナチなんです」「侵略じゃないですよ」「プーチンは見た目が怖いから(誤解される)」2014年TBSラジオにて

「町山智浩が語る オバマのウクライナ対応が米国内で支持されない理由」
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。ウクライナ情勢についてアメリカと日本の報道のされ方の違い、そしてオバマ大統領の対露姿勢がなぜ支持されていないのか?と語っていました。

(町山智浩)ウクライナで今回政権をとった欧米寄りの政権の中にネオナチが入っているからなんですよ。
(中略)
(山里亮太)プーチンさんがこれを機に取り込んじゃおうとか、そんなレベルでは・・・
(町山智浩)もともと、取り込んでるんですよ。だから、今回侵略してるんじゃないんですよ。もともと、ずっといるんで。
(赤江珠緒)基地もありますしね。
(町山智浩)要するにウクライナ側に反ロシアの民族主義、右翼政権ができたんで、ロシア系の人たちが怖くなったんで、彼らを守るために軍が行動したっていう形なんですよ。形だけはね。だから、別に侵略っていうことは、実際はしてないんですよ。実際は。だからあのへんはね、単純にプーチン、見た目が怖いから(笑)。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)そんな感じになっちゃってるんで。

上j契記事より

そうこの近辺はナチスドイツでもとりわけ残虐行為で名高いカミンスキー旅団が徴募された場所でもあったのです。当時のネットではその辺りを上手く使った実に巧みなグレープロパガンダが流布しており、それを疑う理由も別段存在してなかったのです。

現在では「当時ロシアがこの手の話をプロパガンダとして広めていた事」がコンセンサスとなりつつあるので、あえてカミングアウト。「韓国は北朝鮮とずっと一心同体」なるプロパガンダに引っ掛かったアメリカの若者を笑えない、笑えない…

そんな感じで以下続報。


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