ちょろぎで子供をけなす親
お節の中のちょろぎ
ちょろぎってご存知ですか?お節料理の黒豆の上に一つ二つ彩りとして添えてある赤くて巻き貝みたいなやつ。
調べると「長呂儀」とか「長老木」とか縁起を担いだ漢字がいろいろあって、長寿の意味が込められているそうです。その正体はシソ科の植物の根っこに出来るジャガイモのような塊茎というもので、栄養豊富でもあるそうなのですが、このちょろぎをめぐって、ある日年明け早々事件が起きました。
ムスメがお節料理に入っていたちょろぎを食べて嬉しそうにこう言った時でした。
「30円とかで売ってるカリカリ梅の味に似てる。 美味しい! 気に入った!」
梅好きのムスメの微笑ましいコメントに、私も思わずニッコリした矢先でした。
まるで、チンピラの言いがかり
お正月の穏やかな空気を凍りつかせのは、モトオでした。
「そんな風に言われたら、がっかりだね! 価値の分からない人には、食べさせたくないから、食べないで下さい!」
ムスメは険しい顔をして黙り込み、私は怒り心頭でした。新年を祝うお正月にこんなことで子供を貶してくるなんて!?何よりムスメの気持ちが心配でした。
モトオが年末の休みに入ってからずっとあからさまに機嫌が悪かったのは知っていました。振り回されてなるものかと、出来るだけそこに触れないようにしていましたが、これは放っておけません。
「ムスメが美味しいって言って食べてるのに、何訳分かんないこと言ってんの? カリカリ梅に似てるって言って何が悪いの? あなたこそ言ってることおかしいよ! 何が気に入らないのか知らないけど、お正月よ」
彼はちょろぎが高価なものだと思って言ったようでしたが、間違いを訂正できないのが彼でした。『そうなんだ。 知らなかった。 ごめんね』と言えば済まされるのに、絶対に間違いを認めず、謝らないのです。
診断が降りてからは、モトオとムスメが特性からどこでなんと言ったらいいのか分からないという事が分かったので、感情的にならずに意識して頑張っていましたが、その努力も無駄でした。モトオはプライドから、それまで見下してきた私から間違いを指摘されるのが許せないようでした。
「いつも自分が正しいと思って、偉そうに言ってくるよね」と言うのです。
「あー言えば、こー言う」と人から思われる所以が彼らの脳にあり、原因と結果など数ある情報を正しく繋げることができない為、こういう考えに辿り着いてしまうことは分かりましたが、やってはいけない事に変わりはないので、ここはブレてはいけないところだということが、やっと分かってきた頃でした。
批判を攻撃と捉える厄介な脳
このちょろぎ事件も問題は、モトオの人から注意されることが極端に苦手で、自分の非を認められないところでした。
この批判を攻撃と捉える脳の癖は、ムスメも同じで非常に厄介です。小学校で支援している子供の中にも同じ思考タイプが一定数いますが、学校は家庭と違い、そういう子は周りから嫌われるので本人が困ることになります。
人は困ることから自分のことや物事に気づけるようなので、もしかしたら困ることは成功の一歩なのかもしれません。
ひきこもるモトオ
心が全盲のモトオは、私が家族の為に作った正月料理に感謝することなく、黙々と食べ、さっさと自分の部屋へ消えていきました。
モトオは見た目には分かりませんが、一緒に暮らしているとかなり重症でした。
次の日この話が出ると、モトオは「オレは”がっかりだ”なんて、言ってない!」と言って怒りました。
私とムスメは彼が前日の記憶を失っていることに驚き、その約一週間後、再びその話が出ると今度は
「”がっかりだって言ったことを言ってない”なんて、言ってない!」と言って怒ったのです。
『一体、どっちなんだ?!』ってことですが、まともに関わると大変なので、こういう場合、落語かコントのネタかと思った方がいいように思います。
離婚してもうすぐ2年になりますが、けなされることがなくなったので、コロナ禍でも心穏やかに過ごせるようになりました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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