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勝手にしやがれ

2019年まで私の運転免許書はキンキラキンのペラペラ。
身分証明書としてしか機能しない、ピッカピカのペーパードライバーだった。

娘が生まれて数時間で大病院に緊急搬送され、毎晩号泣しながら過ごす産婦人科を無理やり退院し、私が真っ先にやったことはペーパードライバー講習を探すことだった。

娘の搬送された病院はなんと山の中。
山の中というとご近所に住まれている人に失礼だが、心臓や色々な疾患があり長期入院する人がいる科だけをまとめた広大な土地に立つ病院だ。
キレイでゆったりしているので、病院系ドラマのロケ地にもよくなるようだ。

そんな土地に立つ病院だ。
とても電車とバスで毎日通えるとは思えない。

大学生の時は大学まで車で通っていたが、おそらくはそれと同じくらいの距離。
絶対に車で行くんだ!と、産後メンタルによるハイのせいもあり、すごい勢いでペーパードライバー講習に行き、車を乗り回した。

と、いう日々から4年が経った。
娘も4歳になった。

昨日、その山の中の病院へ。
娘の心臓の検査。

病院に行き過ぎて慣れ過ぎて、採血でも「アッ!」と一言漏らすだけ。先生がやってくると服をまくり聴診器を待ち、前が終わると後ろを向こうとするし、なんなら口も開けて待つ。レントゲンも心電図もエコーも慣れたもんだ。

そんな娘の最後の心臓の薬が終わった。

正確には一時休止して様子を見ていたのだが、心臓は悪化せず、現在の中等度の疾患のまま維持できていた。

血液検査の結果、ちょっと気になる数字が高くなっていたので病院の頻度は減らなかったが、薬のフォローなしに日常生活を送れるということになった。

なんだか、何かが一つ、終わった気がした。

そして、明けての本日。

私は娘を産んで、ペーパードライバー講習を終えて以来はじめて、自分のために車を走らせドライブにでてみた。

これまで保育園の送迎、病院か療育に連れていく時しか乗ったことはなかったのだ。

娘の病院に通う道には気になるものがたくさんあった。
しかし母の気ままな寄り道に付き合わせるには、娘は車が、というか拘束が嫌いすぎた。
病院まで通う時も毎回眠らない限りは大絶叫だ。本当に今日までよく事故にあわなかったと思う。

声がでかいのよ。
母譲りの声が。

脱線した。

さて、病院周りの地域にある気になるもの。
ちょうど仕事がリスケになりぽっかりと空いた本日。
自分の好奇心を満たすために行ってみようと思い、車を走らせた。

ドライブだ。

頭を空っぽに、しかし田舎道なので出てくる有象無象に気を付けながらも、車という狭い空間の中で自分に集中する。

そこで気づいた。
きっと「終わった何か」とは「緊急事態」だったんだと思う。

これまでも何度か娘の成長に一区切りと思ったことはあったのだけど、この「薬が終わった」という事実は思ったより私の中の緊張をとってくれた。
つまり私はこの4年間思っていたよりもずっと緊張していたんだと思う。

そしてその緊急事態の間、独り身の時と同じように好奇心のままに自分中心に動きたい自分と、ままならない現実にもどかしさを感じていた。

特に手が動かせない、何かに集中できない時は頭が活発になりがちだ。
簡単に「やりたいこと」やタスクを増やしてしまう。
しかし結局「手が動かせない」。時間がない。

結果として「ままならない」「もどかしい」の気持ちは強化されていく。

娘は薬はいらなくなった。
そして客観的に見ても、周り中を薙ぎ倒すレベルで元気だ。
ご近所の人もびっくりだ。

息子も幸い元気満タンのモチモチムチムチで元気だ。
アレクサに対して「オイー!エクサー!オイー!」と命令する程度には大きくなった。

彼女も彼も、私の人生をままならないものにする存在ではなく、愛を注ぎ続けたいものだ。

だからこそ、改めて私は私自身を生きなければいけない。
好きにしないといけない。
勝手にやりやがれ、だ。

保育園の短時間保育という時間についてはシンデレラ感ある動きをしないといけないが、心においては私を遮るものはない。止めるものもない。

なぜ自分のために車を走らせることをしなかったのか。
無意識の行動制限にちょっと鳥肌がたった。

緊急事態は去った。

改めて初心に戻って、私は私の探究を始めたいと思う。

それが人に影響を及ぼすことがあれば、それはとても嬉しいことだと思う。
それが誰かの幸せに寄与することになれば、それはこの上ない幸せだと思う。

そして一人ではできないこと、見えないこと、到達できないことがたくさんあると気づいたからこそ、誰かと何かやる、もやっていきたい。
優しい人が遠慮がちに声をかけてくれることもあったが、どうか雑に声をかけてほしい。

だから改めての宣言として、勝手にしやがれ、だ。

アア アアア アアア アアー!

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