そわそわさんの薬膳

 何も緊張することないのに、そわそわと気持ちが落ち着かない時。人はこういう時も、落ち着かない理由を過去に求めてしまうんですよね。
 「あの時のあれがうまくできていれば」とか
 「あそこで私がこう言っていれば」とか。
 私も、今でこそ「私の言動が、それほど世界に影響することなんてない」と笑って流せますし、「自分がそうしてたって、結果は大きく変わらなかったかもしれない」と気楽に考えることもできます。でも、一旦「自分のせい」と思い始めるとドツボにはまって、悪い思考回路をどんどん落ちていくことになりがちです。
 更にそこで、過去に特に何もないとどうするか。自分の人格や存在自体を否定し始めることになりませんか。それでまた緊張が増して、本当に何でもない時にも心が落ち着かずに思いを巡らし、緊張のせいでやることなすこと上手くいかなくなって、自信喪失につながっていきます。
 この状態の時を、中医学では脾と心が弱っている状態と考えます。脾は「思案する」臓器、心は精神全体を司る臓器だからです。この二つが弱ってしまい、思いや考えが定まらず、ふわふわして落ち着かない状態になっているのです。
 「気もそぞろ」とでも言いましょうか。
 そこで、この二つの臓器を強くする食材を摂るようにします。専門用語で「健脾」「養心安神」といいます。

心と脾について 

 少し、臓器の話をしますね。
 脾という臓器は、食べ物から「気」を作り出す臓器でもあります。気というのはエネルギーの素みたいなものです。十分な量が体内にあって、ぐるぐると適度なスピードで巡っているのが良い状態です。ですが、食べる量が少なかったり、脾が弱っていて気を作る力が弱くなっていたりすると、気も減ってきてしまいます。量が足りなければ、巡っても機能してくれません。
 気は、エネルギーの塊なので、温かみを持っているとされています。気が足りなくなると、元気がなくなり息切れがしたりするだけでなく、冷え症にもなりやすくなるのはそのためです。また、気の量が足りないと「温かい気体」である気は、人体の中で上の方に位置する頭に上ってきてしまいます。そわそわして、ドキドキして、ワーッとなってしまうのは、頭に気が上って沸騰寸前になっているからかもしれません。そういう時は出来るだけ深呼吸をして、下半身や末端にも気が巡っていくようにしましょう。「気を落ち着かせる」わけです。
 脾は水分の代謝もしてくれます。脾が弱ると、むくみが起きてきます。病院の検査では腎臓は悪くないし、妊婦さんほどのむくみはないけれど、靴下のゴムの跡がつきやすい、朝と夜でふくらはぎの太さが全然違う、舌のふちに歯型がついてギザギザ、などがあれば、脾が弱ってむくんでいる状態の可能性があります。こういった症状からも、脾の状態が見えてきます。合わせて考えてみてください 。
 食欲がない、元気がない、末端冷え症なのにのぼせる、水分を飲まないようにしてるのにむくむ、などがある場合、もしかすると脾が弱っているかもしれません。また、お茶などの飲んだ後すぐにジャンプすると、お腹から「ちゃぽんちゃぽん」と音がするのは、脾が元々弱い体質の方が多いです。私も小さいころそうでしたし、大人になってからもたまに鳴ります。
 次に心という臓器についてです。
 心という臓器は、西洋の心臓と血管に近いです。心臓の拍動がリズミカルに続くこと、血液が血管の中をスムーズに流れる事、血管から漏れ出してこないこと、など、心と気の働きによります。
 心の臓のおもしろいのは、舌とつながっていると考えられていることです。舌に異常が出る(たとえば、味覚異常や呂律が回らなくなるなど)と、心に異常があるのではないかと考えることです。
 また、精神活動全般を司る「こころ」としての意味合いも持ち、強い感情や複雑すぎる感情が続くと、心が弱ってきてしまいます。また、心が弱ると感情や思考活動がおかしくなってくるとされています。
 科学の医学ではこころは脳の働きとされますが、中医学では脳は腎という臓器と関連が深いとされます。という事は、脳とこころは別物ととらえているわけです。これも面白いですね。
 長くなりましたが、脾は気、心は血と密接な関係があります。この二つの臓器が健康なら、気も増え、血の流れもよくなり、全身にエネルギーが行きわたり、思考や精神活動、感情の波もスムーズになるのです。
 心脾が両方とも弱っている状態を心脾両虚と言います。睡眠が浅くなり、夢(悪夢が多い)をよく見るようになる、という症状が起きることもあります。これも、一般的なうつ状態によくある症状です。

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薬剤師で薬膳師であり、鬱で入院経験のあるやわるしす塾長が、経験を織り交ぜつつ、薬膳に限らずこころのケアをご紹介します。 一括料金です。月が…

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