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月に聴かせるように。

この世界の生活は
月にとっては一つのおとぎばなしなのです。

昼下がり。
ぱらぱらと頁を捲りながら読んだ本の一節に、はっとする。

その本は、月から見たそれぞれの日常や人生の節々が小さな物語として淡々と語られていた。

そうなんだよなぁ。

月から見たらおとぎばなしにすぎない生活なんだよなぁと、遥かな気持ちになりながら。

だけど
だからこそ
それぞれの物語の中に居るんだよなぁと。

喜劇も悲劇も淡々と語られていく物語を読みながら考えた午後。


わかりあいたいとおもうけれど
わかりあえないことの方が多い。

むしろ
わかりあえないという事を
わかりあう事だったりもする。

わかりあいたいと思う気持ちは
わからないということを知る旅でもある。

だからこそ
あなたとわたしで生まれた意味を想う。
きっと同じ者だったなら
その心に新しい風を吹かせる事が出来ないもの。
違う景色をそっと溶かす事が出来ないもの。
そんな風にこの存在を知っていたい。

いつかは、ひとつに還っていく旅のその最中。

あなたと私で生まれた意味を想う。
今出会えた事をちゃんと見ていたい。

いつかは、ひとつに還っていく旅のその最中。

どれたけ近くに居たって別々の人。
だから
どれだけ遠くに居たってそばにいることが出来るのかもしれない。

そんな風に
ひとつがふたつに生まれた意味を識りたい。

この世界の生活は
月にとっては一つのおとぎばなしなのです。

そうだとしたら

あなたとわたしが出逢えた物語を
今も月に聴かせるように生きあっている。

そんな風に想い合っていたいと思う。

たくさんの人がいる世界に
そんな風に大切に思える人と暮らしていたいと思うのです。


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