見出し画像

持たざる者のヒーロー

ここ数年アメリカでは“We are the 99%”というムーブメントがあります。アメリカでは収入格差が広がり、全体の1%がその富を独占し”中産階級”が消えようとしています。つまり、全体の99%は貧困を余儀なくされる、ということです。若者は年間400万を超える大学の学費無償化、多くの大人たちは最低賃金を15ドルに引き上げる戦いをしている中、その企業のCEOは30億近い年収を得ています。

来年に大統領選挙が迫ったアメリカでは、この収入格差問題は更に表面化しています。そんな中、現在アメリカではトランプ大統領の2期目就任を阻止しようと、トランプ率いる共和党の対抗馬として”必ず勝てる”民主党代表を決める為の熾烈な民主党大会が、繰り広げられています。

中でも激戦区となっているのが、ニューハンプシャー州です。ニューハンプシャーはアメリカの中でも、アクティビスト(政治的活動に積極的に参加する人達)が多い州で、その影響力は他の州にも及びます。ニューハンプシャーの有権者達が切実な問題として捉えているのは「収入格差」「人権」「雇用」「気候変動」そして「不正選挙」などで、これらを無視して演説する候補者には、勝ち目はありません。

そんな一筋縄ではいかない空気の中、昨日ついに激戦地区ニューハンプシャーの民主党大会が開催されました。民主党候補者は現在19名いるのですが、どの候補者も一長一短でパっとしないな…と思っていた中に、一際目立つ大歓声と大拍手、”Win with Warren””ウォレンと勝つ” で迎えられたのがエリザベス・ウォレンでした。

ウォレンは自身のキャンペーンを”グラスルーツムーブメント””雑草パワームーブメント”と呼んでいます。「他の候補者達が大企業のCEO達や億万長者達と、閉ざされたドアの奥で選挙資金の話をしている。代わりに自分は1秒でも皆んなの前で話す」と有権者に訴えかけ「大企業のCEOは靴、車、家を何件も買っていますが、だからって私たちの民主主義まで買えるわけじゃない。生活の危機に直面していることが沢山ある。でも私たちは恐れを理由に、自分が信じてもいない候補者を選んだり出来ない。私たちは、自分が信じていない候補者に投票してくれと頼んだりしない。私は恐れない。民主主義が勝つことを、あなたも恐れないで。私たちの時代だ。私たちが、大きな夢に向かい、戦い抜く時代なんだ」と情熱的に語りました。

持つ者と持たざる者。いつの時代も退けられてきた持たざる者達のヒーロー誕生の瞬間にアメリカが湧き上がっていました。私もウォレンの演説を聞いて「よく言った!!」と胸がスカッとしました。

日本では今、60歳以上の預金額が100万円に満たない世帯が25%以上になり、具体的な解決策のないまま少子高齢化が進み、この収入格差は更に広がると見られています。遠いアメリカの”We are the 99%”ムーブメントの99%に自分も入っていることを自覚し、それに共鳴する1人でありたいな、と思います。

今回の民主党大会はウォレンの圧勝でしたが、ニューハンプシャーの有権者達は、誰に投票するか決めていない人がほとんどのようです。”趣味"で米大統領選を見守っている私の一押しは「大統領になる為ではなく、アメリカがダメになっていくのが分かっているのに、何もしない訳にはいかない。だから、大統領選に立候補した」というユニークなビジネスマンのアンドリュー・ヤング。

アメリカの大統領選は、小さな声でも声を上げることに意味があるんだ、と思わせてくれます。これだから、見守らずにはいられない!


Bibliography:私たちは(今なお)99%だ

Bibliography:エリザベス・ウォレンの存在感がずば抜けたニューハンプシャー民主党大会


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?