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その勇気と行動力|Black Lives Matter

夜中の12時を少し回った3月13日、ケンタッキー州の小さな都市ルイビル。警察官は違法ドラッグ販売の強制捜査を行うため、緊急治療室で技師として働く26歳の黒人女性、ブリオナ・テイラーの家へと向かっていました。

警察官たちは捜査令状に基づいて、テイラー家のドアをブチ破り突入。ほんの僅かにテイラーと警察官が顔を向き合わせ、目があった瞬間に警察官は数発発砲。テイラーに少なくとも8発が命中し、彼女は命を落としました。

警察官はドラッグ販売に関わっているとされる、男性2人を捜査していたのですが、容疑者とされる男性の家からテイラーの家はかなり離れているにも関わらず、裁判官は捜査令状に、テイラーの家を捜査する許可を下していました。許可が下りた経緯には、警察官から「ドラッグの受け渡しにテイラーの家が使用されている」という訴えがあったようです。裁判官がサインした捜査令状は、いわゆる警察官の無断立ち入りを認める内容で、「警察官だ」と警告したり、捜査令状に基づいて家に入る許可を得ずに、ドアを勝手に破ってテイラーの家に侵入しました。

警察官によると、テイラーのボーイフレンドで銃の所持許可を得ているケニース・ウォルカーが発砲してきたので、警察官は少なくとも20発は撃ち返したと。ウォルカーが発砲した弾は、1発が警察官の足に当たり、彼は逮捕されました。

しかし、ウォルカーの弁護士は、彼はテイラーと一緒にベッドで寝ていた時に、誰かがひたすら家のドアを30-40回叩きつづけ、そして勝手に家のドアをブチ破り侵入してきたので強盗だと思い「正当防衛」で発砲した、と発言しています。 

その後、テイラーの自宅からドラッグは発見されず、警察官がテイラーの家のドアをブチ破り強制捜査を行ったときには、違法ドラッグ販売をしていたとされるメインの容疑者男性2人は既に警察の留置所に居たことが判りました。

コロナ感染がアウトブレイクしたアメリカで、救急医療に生涯を捧げようとしていた勇敢なヒーロー、ブリオナ・テイラーは、無実の罪で警察官によって殺害されたのです。

その後、テイラーのボーイフレンド、ウォルカーは釈放されましたが、彼の証言を裏付ける証拠となる防犯カメラの映像が見つからないという理由で、テイラーを殺した警察官は逮捕されないまま(警察官は部署が移動になっただけで、罪には問われていません)事件は闇に葬りさられそうになっていました。

テイラーが殺害された今年3月は、コロナウィルスがアウトブレイクし、アメリカはもちろん世界中がコロナのニュースで埋め尽くされていたため、彼女の事件は全く注目されていませんでした。

ジョージ・フロイドが警察官に殺害されたメトロポリスを震源地にした「Justice for George Floyd 」「ジョージ・フロイドに公平な裁判を!正義を!」という抗議活動が全米へ拡大するに連れ、アメリカの各都市でジョージ・フロイドと同じように警察官によって殺害された被害者に再び「正義を!」「 Black Lives Matter」という声が上がり始め、それが今大きなうねりとなって世界へ飛び火しています。

「死者を忘れることは、彼らを2度殺すことになる」

これは、第二次世界大戦に起きたホロコーストを生き延び、作家になったエリ・ヴィーゼルの言葉です。

彼は「人生の反対は死ではありません。その間にある無関心が人を殺すのです」とも書き残しています。

ブリオナ・テイラーは、私たちの「無関心」によって、2度殺されかけていました。

ジョージ・フロイドの殺害事件は、全米で過去に起きた警察官による無数の黒人に対する暴力や殺害事件を蘇らせました。黒人差別に悲しむブラックコミュニティーだけでなく、彼らと想いを同じくする全ての人は心底怒り、そして同時に深い悲しみに襲われている、と思います。

「Black Lives Matter」の抗議活動が大きくなる中、ついに元大統領オバマが口を開きました。「ジョージ・フロイドの事件をきっかけに、この数週間アメリカで起きていること(抗議活動)はチャレンジであり、アメリカが抱える構造的な問題を浮き彫りにもしました。これはこの数週間に起きたことの結果ではなく、奴隷制、ジム・クロウ法、そしてレッドライニングなどの、人々をあまりにも悩ました組織的な差別の長すぎる歴史がもたらした結果です。それが、そもそも我々の社会がもたらした罪なのです」

と、今回の抗議活動へ繋がった全ての原因である「制度的人種差別」について語り、「抗議活動をすることは、選挙に行くことと同じぐらい大切だ」と、次の世代へ向けて組織的差別を解体するために、投票の重要性を訴えました。

そしてオバマのスピーチは、こんな言葉で締めくくられます。

「こうして抗議活動が盛り上がっても、徐々に勢いを失い、人々の記憶から薄れていきます。だからこそ、まだ熱さを持っている今のうちに、何らかの変化を形にし、人々を、そして組織を動かし、より良い未来へ繋げよう」

私たちが生活の中でできることは、一人一人異なると思いますが、誰もが無関心を貫くのを止めることで、私たち皆が変化を起こすことができる、と思います。

私たちは難しくとも後戻りをせず、勇気を持って声を上げ、大胆に舵を切り、より良い世界へと方向を変えて進むべきなのだ、そう強く思います。

 Bibliography :ブリオナ・テイラーの死について知る必要のあること

Bibliography :オバマ、ジョージ・フロイドの死について始めてカメラの前で語る。フルスピーチ






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