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起業家達が描く政治の希望

「国民の全員が毎月11万もらえる」というユニバーサルベーシックインカム、通称UBIを大々的に打ち出す非常にクレイジーな政治キャンペーンを展開中の大統領選候補者アンドリュー・ヤング。彼を支持する声が、今アメリカで高まってきています。

私は、ヤングがUBIの話しをしているのを初めてポッドキャストで聞いた時は「なんてクレイジーな奴なんだ…」と思っていました。しかしヤングは数字に強く、このUBIが実現できる根拠を証明していて、ヤングという人物にとても興味が湧きました。

“アメリカに必死に考えさせよう”という#MATH   (Make America Think Harder)と書かれたキャプを被り、数字や歴史に強く、必要とあらば自虐的なジョークも言える、元起業家というユニークな経歴のヤング。トランプ大統領の政治キャンペーン#MAGA (Make America Great Again) に対抗しているのは言うまでもないのですが、ヤングが更にユニークなのは「大統領になりたいから立候補したのではなく、アメリカがダメになっていくのが分かっているのに、何もしない訳にはいかない。だから、立候補した」という点です。

トランプ政権の誕生を許した背景には、AIの誕生により工場の仕事が多数無くなってしまった、アメリカの失業者問題があります。AI化から取り残された人々の絶望感をトランプが代弁した事は、彼らにとって大きな希望でした。

アメリカでは既にレジ打ちの仕事のAI化は大幅に進んでいます。ヤングやFacebookのマーク・ザッカーバーグ、スペースXのイーロン・マスクなどは自分達がテクノロジーを進化させて世界を変えてきただけに、AIが人間の仕事を無くす未来を肌で感じていて「今後はトラックの運転手、コールセンターの従業員、小売業の販売員の仕事は全てAI化されると」と警鐘を鳴らし続けています。イーロン・マスクはヤングの選挙キャンペーンを支持する、とも公言しており、マスクほどの大物が動いたことでヤングに更に注目が集まりAl化に取り残されたトランプ支持者達がヤングに乗り換えよう、という動きまで出てきました。

ヤングのサポーター達は「ヤングはどちらかといえば、非政治的だ」と言います。実際、ヤングは移民や銃規制のその場しのぎの対策や、トランプ批判をする代わりに、AIが創る未来を有権者達に分かりやすくレクチャーし、UBIがなぜ解決策として革命的なのかを提案しています。

ヤングの支持者は、白人のミレニアルやその下の大学生など若い世代が多く、男性が多い事からも、ヤングがとてもプログレッシブな政策を打ち出していることは間違いありません。しかし、だからこそヤングの話しを聞いてみたい!!という投票率の高い60代以降の世代や、他の候補者への支持を決めていたけどヤングが気になり話しを聞きにきた、という新たなムーブメントが起こり始めています。

いくら”雇用を生み出す”と云っても、AIが人間の仕事を無くす未来は変えられません。多くの政治家達や大統領選候補者達が無視し続けている、この難題の具体的な解決策を提示しているのはヤング1人です。

日本では、少子高齢化により1990年代以降に生まれた人たちの年金捻出が難しくなってきています。更に失業率もプラス0.4%と着実に上昇傾向にあります。日本もアメリカ同様、貧富の差は更に拡大する可能性は十分に考えられます。今後の対策の1つとして日本もUBIを視野に入れることで、具体的な解決策の議論が進むといいな、と思います。

ヤングのサポーター達は「ヤングの話しを初めから真面目に聞くのは難しい。けど、一度でもヤングの話しを聞くと考えは変わり得るんだ」と云っています。

ヤングは大統領選で勝てる見込みはありませんが、鉄の結束と思われていたトランプ支持者の票を崩し始め、更に熱狂的なファンを増やし続けている頼もしい存在です。

ヤングの独特の視点と発想は、政治に興味が無かった人たちをも引き込んでいて、彼は”政治家”という枠を超えて、純粋に1人の人間としての魅力に溢れている、と思います。

そして何より、ヤングは家族のことや銃乱射事件の被害者の話しになると、熱くなりすぎて涙を浮かべることがあります。この人間味のあるところが、私は大好きです。



Bibliography:”アメリカに必死に考えさせよう”アンドリュー・ヤングの冒険の旅


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