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「あたらしい しょうがっこう」とこれからの私たちのこと

昨年4月、長野県の佐久穂町に、「大日向小学校」という私立小学校が開校しました。

『あたらしい しょうがっこうの つくりかた』は、小学校設立のために奔走された中川綾さんが、その過程を振り返って書かれたものです。

20年前に蒔かれたタネが芽を出した

本を読んで一番驚いたのは、中川さんが最初に「学校をつくりたい」という想いを抱いたのが20年前の学生時代で、それからずっと、様々なタイプの学校で教員をしたり海外でオルタナティブ教育について学んだりしながら目標の実現に向けて歩み続けてこられた、ということ。

私は開校の前年と当年に学校の体験会に参加し、中川さんがイエナプラン(※)や大日向小学校で計画していることについて語るのを聞きましたが、(その口調がどちらかというと淡々としていたこともあって)ここまでの道のりがそんなに長いものだとは思いもよらなかったのです……。本書で中川さんの熱意に触れ、20年前に蒔かれたタネがゆっくりと、でも確実に栄養をたくわえ、ついに芽を出したんだなぁ、と嬉しくなりました。

でも、「学校ができた」というのはゴールではないんですよね。中川さん自身が“大日向小学校は、2019年4月、長い航海に出ました。“と書かれているように、これからもっと長い長い旅が続くのです。

※イエナプラン:ドイツで始まりオランダで広がった、一人一人を尊重しながら自律と共生を学ぶための教育のコンセプト。大日向小学校は日本初の認定イエナプランスクールとなった。

私たち家族も加わります

実は私の子どもも、この4月から大日向小学校に通います。

家族で住む場所も変え、開校2年目の学校の一員になる。
これは、子どもはもちろんのこと、私たち家族にとっても大きな岐路になると思います。

子どもを大日向小学校に……と考え始めた最初のきっかけは、中川さんの盟友である長尾彰さんから、新しい学校を作ろうとしているという話を聞いたことでした(以下の対談の中で話されている「無条件の肯定的受容体験」という言葉にビビッときたのです)。

最初は、
「イエナプランの考え方は子どもの性質に合っていそう!」
「大日向小学校の建学の精神『誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる』は教育の目指すものとして理想だな〜」
という感じで、子どもにとっての教育の中身という点で惹かれました。

そして後に学校の体験会(季節のがっこう)に参加して、もうひとつ大きな魅力に感じたのが、そこに集う大人たちでした。

参加者の保護者たちと「もし学校の一員になったら……」という仮定で話し合うと、「これからできる学校だから、きっと足りないことや上手くいかないこともあるよね。でも、子どもたちのためにみんなで協力していきたいよね」という考え方の人が多く、「前向きでいいな!」と思ったのでした。

昨今はPTAの古い体質や、保護者と学校の対立などが取り沙汰されることが多いですよね。そういうところに飛び込んで果敢に改革をしている方たちがいることも知っているのですが、「私には難しいな〜(性格的に)。でも、現状をそのまま受け入れるのも違うよな〜(自分の子どものことだもの)」と感じていました。

だから同じ“大変”でも、前例なんかなくて、余白があって、なにか自分にできることをやらざるを得ない状況に飛び込む方が、私にとっては良い選択に思えたのです(「移住するなんて勇気あるね」と言われるのですが、こういうことも含めて、私にはこっちの方が勇気を出しやすかったのです)。

『あたらしい しょうがっこうの つくりかた』を手にとったのはちょうど入学決定の通知をいただいた日で、嬉しい気持ちと未知のことに対する緊張とが入り混じった気持ちでページを繰りました。そして前述の通り、中川さんの20年来の想いと歩みを知り、改めて「この学校に入学が決まってよかった」と感じました。

動き出したばかりの船の乗組員として、子どもたち(うちの子だけでなく、学校や地域の子どもたちも含む)のために、私にできることを精一杯やっていきたいと思います。

小さな町に小学校ができるということの大きさ

この本を読んでもうひとつ気付かされたのは、地域にとっての学校という存在の大きさです。

大日向小学校は、2012年に閉校した町立佐久東小学校の校舎をリフォームして開校しました。

佐久穂町の人口は約11,000人。学校が閉校するくらいだから、子どもが少ないのです。そこに新しい小学校をつくるということは、家族ぐるみで移住してくる人たちを受け入れるということになります。

町の人たちには、「本当に児童が集まるの? ちゃんとやっていけるの?」という疑いや不安もあれば、「自分たちが通った思い出の場所がもう一度活気を取り戻す」「町に子どもが増える」といった期待もある。都会と比べると、私立学校ができるということの影響度はものすごく大きいんですよね。

中川さんをはじめとする学校設立準備財団の皆さんは、地域の人たちと継続的に対話し、ときには苦言も受け止めながら関係をつくり、協力も得てきたーーその様子がとても生き生きと描かれているのも、この本の魅力です。

私たち親子は、春から佐久穂町内に暮らします(夫は当面単身赴任です)。町の人たちに、「新しい学校ができて良かった」と思ってもらえるような暮らし方、地域の関わり方も考えていかなきゃな、と思った次第です。

私の新しい働き方、暮らし方

私の仕事はどうするのかというと、これまで通りフリーランスのライター業を続けていきます。

「これからの働き方・組織」に加え、新たに「教育」や「移住・地方での暮らし」などもテーマに加えられたらな、と考えています。都心の企業に伺って取材、というのは頻繁にはできなくなりますが、オンラインでできることはどんどんやっていきたいです。

あと、せっかく景色の美しい自然豊かな場所で、実家を出て以来初めて一軒家に住むので、暮らしの様子なんかも発信できたらな〜、とも夢想中。

……とはいえ、しばらくは「子どもファースト」で行きたいと思います。

うちの子は、保育園で6年間一緒だったお友達と離れて知らない子ばかりの小学校に行くのがかなり不安なようです。学校が始まったらきっと楽しくなるだろうと思うのですが、それでも何があるか分かりません。「子どもが安心して毎日を過ごせること」を第一優先に日々を過ごしていく、これが2020年の目標(のひとつ)です。


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