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2022年9/20頃発売予定『ええじゃないか』(中央公論新社)はこんな話

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 さて、今日はもうそろそろ刊行が迫って参りました新作『ええじゃないか』(中央公論新社)のご紹介をしたいと思います。
 過去記事はこちらから。WEB書店さんへのリンクもあります。

さて、どんな話なのか、わたしなりに紹介しようと思います。

「ええじゃないか」ってなに?

 「ええじゃないか」、よく聞きますよね。今では某アイドルの曲のモチーフに使われていたり、某遊園地の絶叫マシーン名に使われていたりするわけですが、本来はある歴史的事象を指します。
 以下の話は諸説あることなのでぼかしながら説明をしますが、幕末も差し迫った慶応三年の春から夏にかけ、寺社の札が舞うという事件が起こり始めます。
 慶応三年というと、孝明天皇の崩御を受けて明治天皇が即位したり、大政奉還、王政復古の大号令が起こったりと、後の明治時代に直接繋がる政治的変化が起こっている年です。前年に目を向ければ、薩長同盟の成立、第二次長州征伐の失敗、将軍徳川家茂の死などなど、徳川家の威徳が失われ始めた時代とも言えます。そして、翌慶応四年正月には一年あまり繰り広げられる戊辰戦争の緒戦である鳥羽伏見の戦いが起こります。
 そんな幕末のどん詰まりに、「神札が舞った」という、非科学的極まりない事象が発生したのです。そして、これをきっかけに世の人たちが大騒ぎ、なんと町に繰り出して徒党をなし、踊り始めるに至ります。
 この動きは慶応三年七月頃から三河国吉田藩(現在の愛知県豊橋市あたり)で起こって東海道全体に広がり、同年十二月頃に収束します(発生地については諸説ある点に注意)。この事件は、日本初の「バズり」ともいえる現象でした。

本作の重要な登場人物

 本作は、二人の視点から描かれます。
 和多田市之丞と、捨て鉢の晋八です。

和多田市之丞(男の方)
捨て鉢の晋八(男の方)

 和多田市之丞は公儀隠密と名高い御庭番の家に育った若武者で、公儀隠密として初の任務に意気込み、三河吉田藩で起こっていた不穏な動きを調べるために当地にやってきて、当地の御用町人(御庭番の手の者として町に潜む協力者)であるお里(絵の左側にいる少女)とお役目に邁進します。
 一方の捨て鉢の晋八はいわゆる渡世人です。修羅場での働きぶりがあまりに苛烈で一見すると命知らずにも見えたため、“捨て鉢の”という二つ名がついてしまった凄腕です。彼は急旅(なんかやらかしてしまったために旅をしている人、くらいにご理解ください)の最中、浜松宿でましらを名乗る老女とその連れの少年、乙吉と出会い、悪事に邁進することになります。
 そんな二組の人々が、知ってか知らずか、「ええじゃないか」の旋風を煽り、巻き込まれてゆくのです……。

どんな話なの?

 凄く簡単に言うと、「ええじゃないか」の始まりから終わりまでを描きました。
 なぜ「ええじゃないか」は始まったのか。どうして「ええじゃないか」は終熄に向かったのか。そして、「ええじゃないか」とは何だったのか。そんな謎に迫った小説です。
 そんなわけで、本作は三河国吉田藩での「ええじゃないか」の始まりを描いた「三河国編」、京都での「ええじゃないか」の爛熟とその終わりを描いた「京都編」、そしてその二つを繋ぐ狂った番外編「幕間」から成っております。
 本作における主役級登場人物は皆実在しません。なぜか。「ええじゃないか」は歴史上の有名人が担った事件ではなく、あくまで、歴史の波に洗われて忘却されてしまった人々がその担い手だからです。
 けれど、実在の人物が出てこないかというとそういうことはなく。有名人でいうなら新選組の近藤勇や井上源三郎、海援隊の坂本龍馬や斎原治一郎(後の大江卓)が登場します。また、本作で名前が出る人物のうち何名かは史料などで存在が確認されています。
 「ええじゃないか」旋風はなんだったのか――。ご期待ください!

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