#エッセイ『素直さと成長』
この二、三年で僕の中での野球熱が再燃し始めました。子供の頃はテレビ中継で巨人戦を観る事が楽しみでしたが、今では日米のそれぞれのチームでプレーする個々の選手の活躍を追いかけるという見方で楽しんでいます。そのきっかけになったのは二刀流という異次元の活躍をするエンジェルスの大谷選手の出現でした。特に一昨年の2021年のシーズンと3月のWBCでの活躍は本当に興奮しました。『野球とはこんなに面白かったんだ』と、野球の魅力を再発見した気分です!そしてWBCの試合を観戦している時に、大谷選手以外にも優れた日本人プレーヤが沢山いることに気が付いて『おおー!日本のプロ野球もすごいやんけ!』という事を再認識し、それから個々の選手の活躍をネツト等で見るようになったのです。今年からレッドソックスに移籍した吉田選手や去年の三冠王ヤクルトの村上選手やロッテの佐々木投手だけでなく、オリックスの宮城投手なんかも本当に素晴らしいプレーの連続で、彼らのホームランや奪三振なんかは何度見てもスカッ!として気分がいいですね!ヌートバー選手のダイビングキャッチにも痺れちゃいました! ですが、その陰で志し半ばで引退をしていく選手や調子の上がらないもしくは結果残せない選手たちも存在して、そんな選手たちの記事にも自然と目が向いてしまします。そして思うような結果の出せない選手の記事を読みながら“この選手は何故活躍が出来なかったのだろうか・・”と思ってしますのです。もちろんそんな彼らだって、高校や大学もしくは実業団等で活躍をし、期待をされて入団したはずです。本人たちにしても、プロで成功する自信はあったでしょう。もしそうでなければ決してプロの道は選ばなかったでしょう。今回は二人の選手にスポットライトを当てて成功する人と成功しない人の違いについて考えてみたいと思います。
先ず私が最初に私が気になったのは一昨年日本ハムを退団した斎藤佑樹選手です。彼は甲子園で活躍し、その後早大に進学してからプロ入りした選手です。甲子園では“ハンカチ王子”と呼ばれてアイドル的な人気を博していましたね!高校大学を通してアマチュア時代の戦績は素晴らしく、ドラフトもでも4球団か一位指名を受けて日ハム入りをしました。そして入団初年度から6勝の活躍です。結果としてこの成績が現役時代のキャリアハイの数字になってしまいました。あれだけ話題になったのだからさぞや多くの記録を打ち立てる名投手になるかと思ったのですけどね・・・。少し残念です。
この斎藤選手の事で書かれている記事を読むと、おおよそこんな事が書かれていました。基本的に斎藤選手はプロになってから監督やコーチなどの指導者のアドバイスや教えにはほとんど耳を貸さなかったという内容の記事をよく見かけます。もちろん僕は実際に斎藤選手を見たりしたわけでは無いのでその真偽は分からないのですが、火のない所に煙は立たずと言いますので、あながちそれらの記事が嘘ではないのでしょう。そういった記事を元にして僕なりに考察してみました。やはり野球に限らず若い人はどんな世界に入っても人の話に耳を貸さないと何事も上手くいきません。現役当時の斎藤選手は日ハムの首脳陣からの助言に対して『自分には早大で培ったやり方がありますので・・』と言って耳をほとんど貸さなかったそうです。現役時代の彼は独自の練習方法や調整方法で試合に臨んでいたそうです。難しい所なのですが、プロに入ってから自己流の練習で圧倒的な実力を示しながら数字を残し続ければ、それはそれで問題がないでしょう。ですが、成績が伸び悩んだ時にはやはり指導者のいう事に耳を傾けた方が良かったのでしょうね。もちろん斎藤選手にしても甲子園と六大学野球での実績というプライドもあったのでしょうが、それ以上に彼は頑固な性格だったのでしょう。そう考えると、かつての栄光と性格的な頑固さがプロになってからの成長を妨げたというのは想像に難くなりません。せっかくの才能を自分でダメにしてしまったようで、はたから見ていて本当にもったいないと思ってしまいます。
二人目に気になるのが、今年からメジャーに挑戦している藤浪晋太郎選手です。甲子園ではあの大谷選手と張り合って活躍し、プロに入ってからはむしろ藤浪選手の方が早くに結果を出し始めたくらいです。しかし入団4年目くらいから勝ち星に恵まれなくなったというスランプの中でメジャーの挑戦をしました。僕はそのニュースを聞いた時に『日本で結果が出ないのにメジャーで上手くいくのかな?』と勝手に心配してしまいました。シーズンが始まってまだ一カ月ですが、案の定というか藤浪選手はかなり打ち込まれています。アメリカのマスコミにも散々の書かれようで少し同情すらしてしまいますね。
しかし、彼はナゼ日本で結果が出せていない中でメジャー行きを決断したのでしょうか?いろいろな記事にも書かれていますが、環境を変えることによって事態が好転することも考えたでしょうし、元来メジャー志向があったとも書かれています。確かに藤浪選手は今でも160キロを超える一級品の球を投げます。しかしここ一番で崩れてしまうという問題が素人の僕から見ても分かります。そうやって目に見える問題があるのにそこに向かい合っているとは思えないんですね。阪神時代にもコーチから指摘されていた事があったそうですが、彼も頑固だったそうです。彼は指摘を受けたその悪い癖を直せなかった、というよりも直さなかったのですね。藤波選手の場合は今からでも素直さをもってコーチの意見を聞き入れて練習をすれば大きく成功するのではないかと思わずにいられないです。
確かに面と向かって自分の欠点を指摘されと人は中々素直にはなれないものです。例に挙げた二人はプロですから尚更そういった事に陥りやすいかもしれませんね。プロにたどり着くまでに培った自分なりのノウハウは有って当たり前だと思いますしね。また素直に全ての事に耳を傾ければ必ずいい結果が出るのかといえばそれもある意味怪しいですからね。プロの世界でも時と場合によっては指導者のエゴで選手をダメにするという結果もあるそうですから、素直に何でも聞くという事がベストとも思えないフシもありますからね・・・。そういった意味で考えると、人は人生のどのタイミングでどんな人に出会えるかという事と、性格的な素直さとブレない頑固さのバランスという事がその人のその後の人生に大きく影響すると思えてならないです。プロ野球選手という立場では、まずは持って生まれた才能が大前提になるのでしょうが、それでもその才能を存分に開花させるにはやっぱり自分にあった指導者に巡り合えるかという事は本当に大切ですね。
もちろん、みんながプロのスポーツ選手になろうと思っている訳では無いから、ここでは才能という事は横に置いて話を進めます。そうすると人が成長していくという事について焦点を当てることになりすが、今、上に書いたように“耳を傾ける”という事がまずは大事だと思うのです。これは本当に難しいみたいですね。僕が自分の人生を振り返っても親や教師、その他の指導してくれた人の話を煙たがった記憶は多々あり、今にして思えば僕の為を持って助言をしてくれた人たちに対してかなり失礼な態度を取ってきたと思いますし、本当に恥ずかしい限りです。論語の中に『六十にして耳順う』という故事があります。あの孔子ですら六十歳を過ぎた頃から人の話を素直に聞けるようになったと言っているくらいです。自分の経験則から考えても、人は時間をかけて人生経験を積むことによって初めて故事などの先人の教えを噛みしめる傾向があると思っています。そうなると人の話を聞けるという素直さは持って生まれた性格によるものかなと思いますが、たぶんそれだけではないと思うのです。その素直さはやはり幼少の頃からの日々の躾の中で育まれることの方が多いのではないかと思っています。
また中国の故事に『桃李もの言わざれども下自ずから蹊を成す』(桃李成蹊)という諺があります。これは徳のある人には自然と周りに人が集まると意味ですが、かつてはこの徳のある人とは歳を重ねた功労者、もしくは優れた業績を積み上げてきた偉人の事と思っていたのですが、僕の中では最近この故事を思い出すたびに、素直な若者には優れた指導者やよき理解者に出会えるという風にも読んでしまうのです。そうなると、『素直さ』という事が人に多くの出会いの機会とチャンスを与えてくれるのではないかとひそかに思っています。もしかしたらこの『素直さ』とは『運』の正体の一つではないかとも考えてしまいます。過去の例を見ても優れた人間はどんな状況からでも出てきます。その人たちの話を聞くと、そこには必ず恩師やよき理解者の存在が必ずと言っていいほどありますね。でも中には頑固者もいますので、その人たちに共通するものが何であるかを調べてみるのも面白いかもしれませんね。
究極的な言い方をすれば、人が何かの道で成功を望むならまず初めに『素直になる』という事を身に付ける事が一番なのかな・・と最近はそう思ったりしています。
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