#エッセイ 『日本人とノーベル賞受賞』

   今年のノーベル賞では日本人の受賞はありませんでしたね。普段から気にしているわけではないのですが、ここ十数年ほど忘れた頃の秋の終わりに、思いかけないニュースとして飛び込んできすよね。昨年は米国籍の日本人である真鍋淑郎博士がノーベル物理学賞受賞というニュースが舞い込んで結構びっくりしました。科学部門では25人目全体で28人目という事です。同じ日本人としては誇らしいですよね!やっぱり!
   さてこのノーベル賞ですが、これはこれで随分と政治色が強くまた世界へのメッセージ性も強い賞のようです。受賞対象者は圧倒的に白人ですよね。前に本(題名:ノーベル賞がなぜ日本にくるのか)で読んだのですが、受賞者の傾向を見ると、受賞者の出身国の世界に対する貢献度と好感度もかなり考慮されているようです。その意味では日本は戦後の歩みと今の状況を考えると受賞者が出やすいのも頷けますよね。受賞する為にはもちろん研究内容が一番大切ですが、実は途上国にも、また肌の色が白くなくてもむしろ有色人種や黒人であっても優れた研究は世界中で沢山されています。ですがそこはやはりエリート白人社会へのご褒美的な要素が強いそうです。日本人初の受賞者は戦後四年目に受賞した湯川秀樹博士ですが、その時は戦時中における日本への二度の原爆投下に対しての謝罪的な意味合いが強かったそうです。流石に原爆投下はやりすぎという意味合いならなんか頷けますよね。また戦後に原爆製造計画(マンハッタン計画)に参加した科学者達に対して、向こう十五年ほどは受賞をさせないとノーベル賞選考委員で決めていたのですが、それらの科学者の多くは高齢者だったのですね。十五年を過ぎてからの受賞でもいいのでしょうが、高齢な研究者達が受賞前に他界する恐れがあったのでしょう。そうなると受賞の条件は生存している事が大前提ですので、多くの研究成果が受賞内容に載らなくなり、未来からノーベル賞を見たときに意味がなくなる恐れがあったのですね。ノーベル賞は20世紀の科学の歩みと歩調を合わせていますのでね・・・。だから当時の選考委員は自ら作ったその掟を自らの手で解禁をすることを狙ったものと言われています。その意味で当時の日本がすでに充分高い科学研究力を持っていると認める事と非戦闘員に対する大量殺りくへの謝罪の意味合いを込めて当時のヨーロッパ社会からのメッセージをノーベル賞受賞という形で示してきたのでしょうね。もう少し暴力的に言うならあのタイミングでは別に日本人であればだれでも良かったのでしょう。もちろん湯川博士の業績を見ていくと他にもノーベル賞に匹敵する研究は幾つもあったそうです。(やっぱり湯川博士は凄いですね!)
   それにしてもその受賞は戦後の復興がまだ進んでいない日本人にとっては初めてに近いくらいの明るいニュースだったとは思います。この時の湯川博士受賞の話をもう少し掘り下げると、受賞賞金は当時も莫大だったのですが、当時の日本人は国の名誉を挽回した湯川博士が受け取る受賞賞金から税金をかけることに猛反対をしたそうです。時の日本政府は慌てて法律を制定しノーベル賞の賞金には税金を掛けないとしたそうです。今では考えられませんが、受賞後に制定した事後立法の法律を適応させる事で湯川博士は免税されたそうです。そう考えると、あらためて世論とはある意味本当に怖い物ですよね!
 また、物理学賞をもう少し別の角度から見てみると、その受賞内容は年によって大きく変わっています。多くはバリバリの学問的領域で最先端の宇宙物理や素粒子であったりするのですが、年によっては産業に直結するトランジスタや青色ダイオード、古くは自動点火のガス街灯や無線技術なども受賞しています。昨年の真鍋博士の場合は大気の研究という分野で、一見して『ん?』という内容ですよね。これはやっぱり国際社会に対する環境問題としてのメッセージ性を強く感じますよね。地球環境がそれだけ切迫した問題と考えられているのもまた頷けますよね。まぁ受賞内容が“タンパク質が云々”という内容よりは僕らにはまだ分かりやすい気がしていいですけどね・・・。
 折角ですから平和賞の内容なども気にして見てみてください。これは受賞者がオバマ大統領だったり、どこかの平和活動団体だったりと、ちょっと昔には韓国の金大中元大統領や沖縄返還の佐藤栄作元総理など・・・・なんじゃそりゃ?という一貫性は感じない物が並んでいる気がします。これこそ政治色バリバリですよね。それもよく考えれば理解できるのですが、この賞は元を辿ればスウェーデンが出している賞ですよね。ヨーロッパの小国であるスウェーデンが自らの国家安全保障として外交の一つの武器としていることを考えればそんな受賞も分かりやすいですよね。もとはヨーロッパのローカルな賞ですから平和賞などの受賞に対してはもう少しクールな態度でもいいのかな?と思わなくもないです。
    文学賞では近年、米国の歌手ボブ・デュランが受賞していますよね。そうなると井上陽水や中島みゆき果てはさだまさしが受賞してもいいんじゃないかと思わずにいられません・・・。ブルーハーツの甲本ヒロトは歌詞がお下品過ぎるのでしょうか・・・。“情熱の真っ赤な薔薇”ならまだしも“ドブネズミ”はさすがにダメなんですかね。エネルギッシュな魂を感じる曲だから僕は好きなんですけどね・・。また毎年のように下馬評に上る村上春樹にいたっては永遠の候補で終わるのではないかと勝手に心配してあげる次第です・・。もしこの先取れなくても、その作品は色あせることは無いと思いますけど。
   ともあれ、ポツポツと日本人の受賞者がまだ出てきたりしますので、僕たちの国日本はまだ捨てたもんじゃないですよね!
  そこは素直に嬉しいです!

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