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ちょっと不思議な体験【奇妙な建造物】

私は未確認飛行物体なんぞ見たことはないし、ましてやネッシーのようなUMAも見たことはない。
さらには幽霊だって見たことはないし、親戚のおばさんが「カッパは見たことあるよ」って言ってたけどカッパだって見たことはない。

そんな「普遍」を地で行く私だが、そういえばちょっとだけ不思議な体験をした記憶があるので、ここで記してみよう。

あれは中学生の頃の話である。

当時、私は友達数人とともに、隣町にある中規模コミック・ゲームショップ(いわゆるTSUTAYAのような)に自転車で度々行っていた。

特にゲームを買ったりコミックを買ったりするわけでもないし、ましてやそんなものを買うお金だってあるわけがないのだが、中学生くらいの年齢になるとああいうところに「行くこと」がそもそもワクワクして楽しかったものである。

その隣町のゲームショップに行くためには、それなりの規模感の住宅街を抜けて行く必要があった。

ある日のことである。

友達数名と共にいつもの如くゲームショップに行き、その帰りに「いつもとは違う道を通って帰ろうぜ」という話になった。

違う道と言っても、いつもは住宅街を直線に突っ切る二車線道路を通っているのを、二車線道路は使わずに住宅街の中を縫うように帰ろうぜという話だった。

特に何の感情もなく、友達と共にその住宅街を抜けている最中である。

下り坂を降りて突き当たりのT字路正面に…何やら奇妙な建物が忽然と姿を表したのだ。

まるで…ものすごく巨大な、家1棟以上はあろう大きさの岩石をアパートのようにくり抜いたような、歪な建造物である。
それだけでもちょっと雰囲気としておどろおどろしいのに、全体の色が赤茶でいわば「錆色」をしていて、なお不気味さを醸し出している。

この住宅街にこんな建物があったなんてつゆ知らず、中学生の私はその異様な光景に鳥肌を立たせてその場を後にした。友達たちはあまり驚いていない様子だった…と思う。

家に帰ってもあの異様な建物が忘れられず、私は次の休日に一人でその住宅街に赴いて、もう一度見てみようと自転車にまたがった。

不思議なのはここからだった。

住宅街に赴いてあの建物を探したのだが、まったく見つからないのだ。

道を間違えたのかと思い、何度か先日のスタート地点に戻って「こう来て…」と記憶を辿って道を縫って行ったがそれでも見つからない。

絶対におかしい…そもそも見慣れた住宅街なわけだから、道を間違えることなんて皆無のはずなのだ。

それでも見つからない…あの異様な建物、不気味さを身に纏ったおどろおどろしい建造物がまったく見つからない…。

おそらく30分ほどはその住宅街をうろうろしていたように思う。

それでも見つからなかったため、私は諦めて帰路についたのだった__。

帰路につきながら、後日友達に「この前見た建物だけど…」と聞いてみようと思ったが、私の思い過ごしだったら恥ずかしいなと思ったため、結局聞かずじまいに終わった。

…が、今にしてみると、なんとなく「異様な建物の夢」を見ていただけなんじゃないか…と思う。

いくら探しても見つからないなんて明らかにおかしいし、そんな建物が住宅街に存在しているのもおかしいこと極まりない。

私の中で、夢の記憶を反芻しているうちに、現実にそういうことが起こった…と勘違いしてしまっていたのかもしれない。

そう、つまりこれは夢物語である。

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