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初期研修1年目での大きな挫折

こんにちは。フリーの内科医で一児の母のYUKARIです。

自己紹介に1年以上かけておりました。我ながら非常にのんびりマイペースな性格です。笑

さて、散々な結果に終わった初期研修1年目の話を綴っておきたいと思います。


いつかの夕焼け


医学部6年生の時のマッチング(就活)にて、無謀にも野戦病院と言われる研修病院を選択した当時の私。
運良く(悪く?)採用が決まり、意気揚々と寮生活が始まりました。

「楽しいよ!たくさん勉強になるよ!」

と、実習でその病院に行った時に当時の研修医1年目の先生に誘われて決めた病院。
生き生きと働く先輩が眩しく、当時自分のことを自分でもよくわかっていなかった私は、

「絶対ここに入る!」
と(安易に)決めて、望み通りの進路に進むことができたのでした。

そこからが苦難・苦悩の連続でした。

情報として「知っている」ということと
実際に「経験する」ということの間の大きな大きなギャップを

毎日思い知らされました。

毎朝6時から、多い時で30人近い人数の採血。
全く眠る時間のない当直が月に10回以上。
当直明けにも普通に日勤業務をこなし
やっと帰ろうとしたら
ローテーション科の先生のレクチャーを業務終了後に受けることになったり

外科を回った時には36時間の業務の後で、眠らずに手術に入り
意識朦朧状態になったこともありました。

ある時の大失敗。書くことは憚られますが(実害はなかったですが)
失敗した時に男性の先輩に強く背中を叩かれました。あの時の衝撃は、今でも忘れません。

そんな状態になっても、同期の存在もありなんとか働き続けていました。
一人で病院の屋上で、朝ご飯のメロンパンを頬張りながら
「頑張らなくちゃ」
と、自分を奮い立たせる毎日でした。

もう無理だと悟ったのは、最後に回った科でのある出来事でした。

なんてことのない、診療中の上級医とのやりとりの中でのことでした。

とある確認を取るよう言われていたのに
ちゃんと確認もしたのに
上級医の問いかけを前に言葉を全く発せなくなったのです。

そのせいで誤解を生んでしまい、「どういうことだ!」
と叱られ、手間を取らせる結果になってしまいました。

「ああ、もう無理なんだな」

そう静かに悟った1年目の終わりの2月でした。

「頭と体がバラバラになっている。こんな状態で2年目になれない。」
「患者さんや周りのみんなにこれ以上迷惑をかける前に、やめよう。」

1年目に入ってきた時に聞いた話が、まさか自分に当てはまってしまうなんて
全く想像していませんでした。

「毎年1人は、途中で研修をやめてしまう。」
という話があり「やっぱり大変なんだな」と他人事のように聞いていたので

同期のLINEに「やめます。ごめんなさい。」と流した時に
「今年は自分だったんだ・・。」という思いが滲みました。

あっけない終わりでした。

辞めることが知れ渡った後日、飲み会で
その病院に誘ってくれた先輩が涙を流しながら
「俺のせいだよな。ごめんな。」
と言い、一緒に涙したことを鮮明に思い出します。

そんな風に、大きな挫折を味わった1年目の終わりでした。

医師として働き始めてみるまで、
自分のことが本当にわかっていなかったと強く思い知りました。

好奇心旺盛で、いろんなことを経験したいと思う気持ちは
人より強いので、だからこそたどり着いたその病院。

でも本当の自分は、人との関わりに大きなエネルギーを使うし
なんでもスピーディにそつなく仕事をこなせるタイプではなかった。
何事もじっくり考えて、慎重にマイペースに物事を進めたい自分に
その病院のスピード感は全く正反対の牙を剥いた。

痛い経験になりました。

でも

この経験があったからこそ本当の自分を知ることに
一歩近づけた。
自分のこと、自分の求める方向性、求める環境が
逆説的に、見え始めたという表現が当てはまるでしょうか。

だから

今となっては全くこの選択を後悔していないし
むしろとても感謝しています。

その経験から早10年近く経った先日のことですが

当時の研修病院の上級医の先生と、偶然出くわしました。

1年そこらでいなくなってしまった私のことなど
もう覚えていないかと思ったのですが

実際は、顔を見るなり開口一番

「お久しぶり。」

「もちろん、覚えていますよ。ご活躍されていますね。」

と、優しい笑顔で声をかけて下さった時に

色々なことがあったけれど、今の私に繋がる宝物のような経験を
させていただいたことへの感謝が溢れました。

あの頃があったから、今がある。

振り返ってみて、そう強く思います。

最近になって、こうして当時のモヤモヤを成仏させることができたのでした。

(研修医1年目での挫折話・完)








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