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ESGへの傾斜の反動が早くも。。

先日発表された国連の気候変動パネル(IPCC)によるレポートにおいて、気候変動へ至急アクションを取り始め、また継続的にCO2削減に取り組む必要性がかなり強調されています。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年の想定より10年ほど早くなる。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定した。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする必要があると指摘した

CO2削減の一つの促進策として、所謂石油やガス会社に対する、グローバルの大型投資家が投資を抑制、もしくは中止することで、投資先会社の行動変容を促し、実際に石油メジャーなどによる、CO2排出が多いとされる石油やガスの上流案件への投資が抑制され始めています。

一方で原油などの上流案件を通じて結果的に国富向上を図ってきた、北欧やロシア、また中東を含めた国々では、下記記事のように今後も上流案件の承認や生産を継続させていかなくてはならない、という事情があります。

2050年カーボンゼロへのカウントダウンが進むなか、「されど原油」と増産に動く産油国と、それを上回る勢いで回復する需要。カーボンゼロ前の「最後の高騰局面」が始まるのか、なお石油の時代が続くのか、まだ明確な答えは見えていない。温暖化ガスの排出量を実質ゼロとするカーボンゼロを前に、それぞれに事情を抱える産油国や石油会社が増産派と慎重派に分かれている

また原油産出量第6位のイラクでは、経済的なメリットが少ないことに加えて、政治や治安の側面も加味され、所謂欧米の石油メジャーが(ポートフォリオ見直しを通じて)オペレーターから撤退したいと考えているようです。

イラク国内の石油権益の詳しい動向については上記動画をご覧いただければと思いますが、欧米メジャーがESGの動きと共にイラクから撤退することで代わりに入ってくるのは、ESGなどの向かい風が比較的緩い?とみられる国営石油会社、特に中国勢になります。

イラク離れの背景には「脱炭素」の加速がある。BPは30年までに石油・ガスの生産量を4割縮小し、新エネルギー分野にシフトする長期戦略を打ち出した。オランダの裁判所は5月、シェルに対し温暖化ガス排出量を30年までに19年比で45%削減するよう命じた。アブドルジャバル氏は6月、議会で「イラクの投資環境」も同国からメジャーが離れる一因だと主張した。…欧米勢の隙間を埋めるのは中国だ。…「エネルギー安全保障は目先のもうけを度外視できる国家戦略で、欧米上場企業のような株主からの脱炭素圧力は小さい」と説明する。エクソンの西クルナ1での権益には中国石油天然気集団(CNPC)や中国海洋石油(CNOOC)が関心を示し、実際の交渉が進んでいるとの情報がある。

地球温暖化抑制というグローバルに取り組むべき目標の名の下に進められているESG促進、でありますが、経済依存している原油国の継続的な生産や資本力がある国が権益を買収するという、より資本主義の側面を強めると同時に、国際関係上の更なる複雑化(中国が米国がバックアップしていたイラクの権益を買収?)させ、そこにロシアや不安定な中東諸国の思惑が混ざりこんでいるのだな、と感じました

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