人口動態(いずれは減少)と今後の流れ

人口動態は下記投稿にも書いたように、その国の未来図を示している、とも言われている。特に平均年齢が低く、労働人口増加が見込める人口ボーナス期に入る東南アジアや南アジア、そしてアフリカなどで経済成長見通しが高いのはこのためである。

しかしながら、永続的な人口増加を許容できる大国も多くはない、という事実もある。ご存じの通り、人口第一の中国は1970年代から所謂一人っ子政策を用いて、人口抑制策を行っていた。ここ最近になり、コロナ禍の苦境と出生率の著しい低下も相まって、数年前に2人目を、今年3人目の子供まで出産可能と急速な政策変換をしていった。

中国共産党は5月末、約40年間続けてきた産児制限をさらに緩め、第3子の出産を認める方針を示した。...数年前には2人目の出産が認められたが、専門家だけでなく中国人民銀行(中央銀行)までが制限の全面撤廃を訴えていた。...人口政策は往々にして意図せぬ結果をもたらす。80年代生まれの女性を調査した英大学の専門家は、二人っ子政策の導入後も彼女たちは2人目の出産には消極的だったと話している。一人っ子政策を緩和しても、女性ばかりに育児の負担がのしかかる現実はほとんど変わらなかったようだ。

数年後には中国を追い越し人口第一位となるとみられる、アジアのもう一つの大国・インドは、中国のような政策が執行できるわけではないが、興味深いことに、これから人口抑制策を取っていきたいとみられている。

同国の総人口は14億人弱で、世界一の中国に迫る。増加ペースに雇用創出、電力や食料など必需品の供給が追いつかない可能性があるためだ。1世帯の子供を2人以下に抑えるのが目的で、補助金支給など優遇措置の導入を検討する。人口の多さは国力の一要素だが、モディ首相も膨張が成長を損なう事態を危惧していた。各州の動きを支持しているとの見方もある。目立つのは北部のウッタルプラデシュ州だ。同州は8月までに、人口抑制に関する新しい法律の草案を作成した。この州だけで人口が2億人を超え、インドのなかでもほかの州への出稼ぎ労働者が多い、貧しい地域の一つだとされる。

このように人口第一、二位の大国が人口増加率を低く、もしかして人口減少へ、という長期的な流れになると、世界中の人口も減少へ、という近代史初めての潮流がみられるのかもしれない。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、一部の国では出生者数が歴史的な減少をみせている。…パンデミックの影響は一過性かもしれない。しかし、こうした動きは、世界中で女性が産む子どもの数が長期的に減少しつつあるという傾向に注目を集めることとなった。今や世界人口の半数近くが住む国や地域では、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、「人口置換水準」の2.1を下回っている。…国連が2019年に発表した「世界人口推計」によると、世界人口の増加は2100年前後に止まるという。一方、英医学誌「ランセット」が昨年掲載した論文は、世界人口は2064年に97億人でピークに達し、2100年までに88億人まで減少すると予測する。こうした予測は地球にとって喜ばしい知らせだと考える人は多いだろう。人口の急増は、地球環境に強い負荷をかけてきた一因だからだ。…一方、今後数十年にわたり人口の高齢化が進む中、高齢者を財政面やケア・介護面などからどう支えていくのかという問題を抱える国々にとっては、人口増がまだ続いている国や地域からの移民受け入れを増やすという選択肢も

人口減少は確かにその国の経済成長の足かせになると言われているが、いずれ地球規模でその現象は見られるのだろう。そうであれば、今後は長期的に経済成長を見る際に、人口増加や金融政策等のマクロ政策のみに大きく依存し続けるのではなく、バランスよく生産性向上を順次進めていく必要があるとも言えるだろう。

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