いなもり やすたき/作曲家

作曲家の稲森安太己です。作品のことや、音楽について考えたこと、演奏会の感想等を気ままに…

いなもり やすたき/作曲家

作曲家の稲森安太己です。作品のことや、音楽について考えたこと、演奏会の感想等を気ままに書いていきます。

マガジン

  • さっきょくノォト

    私が作曲した作品の解説を中心とした記事を集めました。

  • 楽譜のお勉強

    私が楽譜を読みながら音源を聴いて気付いたことを気の赴くままに書いていく無料記事をまとめたマガジンです。

  • ステキな作曲レッスン

    作曲家・稲森安太己が作曲家としてキャリアを詰み始めるにあたって、様々な作曲家から受けてきたレッスンの様子をお話します。

最近の記事

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作曲家いなもりやすたきのnote

初めまして、作曲家の稲森安太己(いなもりやすたき)と申します。11年間ドイツで生活し、作曲したり音楽大学で教えたりしてきました。2020年10月からは日本に活動の拠点を移して作曲活動を続けています。この度、noteにアカウントを開設することにいたしました。ドイツで経験した音楽の話や、自分の作曲の話などを記事にしていこうと思います。よろしくお願いいたします。 作曲のお仕事のご依頼は以下のサイトのコンタクト・フォームからお願いいたします。

    • ピアノ独奏曲を作曲すること

      わたしが作曲を始めたのは中学2年生の頃で、そのときはピアノを真剣に勉強していたこともあり、ピアノ曲を書くことが最も自然でした。未発表の初期作品はピアノ曲が大多数を占めています。ドビュッシーの《アラベスク第1番》に惹かれ作曲を見よう見まねで始めたこともあり、初期作品はドビュッシーを意識した曲が多かったです。 作曲のキャリアを積んでいく中で、微分音を扱う面白さに目覚め、自然とピアノに向かい合うことが減っていきました。しかしここ数年、急にピアノ独奏曲を求められる依頼が増えました。

      • ヴォルフガング・リームの音楽

        今年7月末に驚きのニュースが飛び込んできました。ドイツの作曲家ヴォルフガング・リームが亡くなったニュースでした。72歳という若さでした。ご冥福をお祈りいたします。 リームは、長年に渡りドイツの作曲界で指導的役割を果たされた作曲家でした。後進の指導にも積極的で、ドイツの著名な作曲家で彼のもとで学んだ作曲家は多いです。私も一度だけダルムシュタット夏期講習会で彼のレッスンを受けました。声楽曲を見ていただきましたが、微分音の扱いなどに具体的なアドバイスをいただいたことを覚えています

        • 割烹 麻さんのこと

          前回の記事で宣伝いたしました、熊本大学での特別公演『現代ピアノ音楽の諸相』が無事に開催されました。満席のご予約を頂いておりましたが、当日はあいにくのお天気で当日は少しだけ空席がありました。ロンドンからお越しいただいたイアン・ペイス教授の演奏は本当に素晴らしいもので、会場全体が大きな響きで包み込まれました。お客様にも概ねご満足いただけたようで、ペイス先生も喜んでおりました。 ペイス先生は実は今回日本にいらっしゃる前はブラジルでコンサート・ツアーをされていました。ロンドンに荷物

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        作曲家いなもりやすたきのnote

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        記事

          現代のピアノ音楽の最先端を熊本で聴く

          2024年6月、ロンドンからピアニストのイアン・ペイス氏を熊本大学にお迎えして、演奏会を開催していただくこととなりました。ペイスさんはこれまでに40枚以上のCDをリリースされており、彼のために書かれた新曲も数多く、300曲以上の初演に関わってこられたピアニストです。なんと本公演は無料(予約制)ですので、熊本近郊にお住まいで、ピアノの音楽に関心のある方はぜひお越しいただければ幸いです。新しいピアノ音楽表現が多く聞かれるプログラムになりますので、演奏会前に私が楽曲解説を行います。

          現代のピアノ音楽の最先端を熊本で聴く

          楽譜のお勉強【98】ジャン・フランセ『6つのプレリュード』

          本日はフランスの作曲家ジャン・フランセ(Jean Françaix, 1912-1997)の音楽を読んでいきます。フランセは洒脱で闊達、パリジャン風のエスプリ溢れる作風で知られる新古典主義の作曲家です。なかなかの多作家で、200以上の作品を残しました。世界的にとりわけ演奏されているのは、『木管五重奏曲 第1番』でしょう。次いで『木管四重奏曲』や『木管五重奏曲 第2番』も取り上げられる頻度は高いです。フランスでは伝統的に、パリ国立高等音楽院を中心にお洒落な管楽器のための音楽が次

          楽譜のお勉強【98】ジャン・フランセ『6つのプレリュード』

          《愛と錬金術と衒学と》歌詞紹介

          さる2024年3月21日、ヴォクスマーナ第51回定期演奏会にて、12声部によるヴォーカル・アンサンブル楽曲《L'amor, l'alchimia e la pedantaria》(《愛と錬金術と衒学と》2022-2023)が初演されました。演奏時間35分の長い曲で、作曲にも苦労しましたが、演奏も大変なもので、時間をかけてじっくり取り組んでいただき、素敵な演奏をしていただきました。 楽曲に使用した歌詞は16世紀のイタリアの修道士・哲学者のジョルダーノ・ブルーノ(Giordan

          《愛と錬金術と衒学と》歌詞紹介

          noteの毎週投稿が切れちゃいました。熊本に来てから流石に無理があるなと感じていました。気合いで毎週書いてましたが、やはり切れてしまう日が来ました。2020年6月26日から書いていたので、180週とちょっとの間でした。結構大変だったので、切れたのを機に隔週を目処に更新します。

          noteの毎週投稿が切れちゃいました。熊本に来てから流石に無理があるなと感じていました。気合いで毎週書いてましたが、やはり切れてしまう日が来ました。2020年6月26日から書いていたので、180週とちょっとの間でした。結構大変だったので、切れたのを機に隔週を目処に更新します。

          新曲《トラペゾヘドロン》について

          2024年最初の初演が2月25日に東京都江東区のティアラこうとうで行われます。チューバの橋本晋哉さんの委嘱で作曲したチューバとピアノのデュオ曲《トラペゾヘドロン》(«Trapezohedron» for Tuba and Piano, 2024)です。本日は初演前に少しこの曲についてご紹介いたします。 橋本さんと私の付き合いはそれなりに長くなりました。楽曲を最初に演奏していただいたのは2015年の東京現音計画というグループの演奏会だったと思います。その少し前から日本の現代音

          新曲《トラペゾヘドロン》について

          ドイツの詩1000篇とその解釈

          最近買った本です。《1000 Deutsche Gedichte und ihre Interpretationen》(ドイツの詩1000篇とその解釈)という全10巻の本で、初版は1994年にインゼル社から出ています。ドイツの有名な詩や重要な詩が時代別に1000篇集められていて、さらに色々な研究者がそれぞれの詩に解説を書いている本で、とても読み応えがあります。 一番多くの詩が取り上げられているのはやはりゲーテで、第2巻一冊が丸々ゲーテの本になっています。他の巻は全てオムニバ

          ドイツの詩1000篇とその解釈

          昨日、熊本大学教育学部音楽科の定期(卒業)演奏会がありました。私が卒業研究と論文を担当した学生は作曲1人、ピアノ2人の3人で、3人とも感動的な作品・演奏を披露してくれました。審査に関わる私の感想はここでは書きませんが、卒業後も音楽に真剣に取り組んでいってほしいです。おめでとう。

          昨日、熊本大学教育学部音楽科の定期(卒業)演奏会がありました。私が卒業研究と論文を担当した学生は作曲1人、ピアノ2人の3人で、3人とも感動的な作品・演奏を披露してくれました。審査に関わる私の感想はここでは書きませんが、卒業後も音楽に真剣に取り組んでいってほしいです。おめでとう。

          楽譜のお勉強【97】マルカンドレ・アムラン『パガニーニの主題による変奏曲』

          2024年も「楽譜のお勉強」を続けていきます。今年最初の「楽譜のお勉強」はピアニスト・コンポーザーによるピアノ独奏曲から始めてみます。マルカンドレ・アムラン(マルク=アンドレ・アムランとも、Marc-André Hamelin, b.1961)はカナダのピアニスト、作曲家です。技術自慢の演奏家で、演奏が難しいことで知られるピアニスト・コンポーザーのゴドフスキーやアルカンらの作品を広く世に紹介してきた功績は大きいです。作品はやはりピアノ独奏曲が中心で、華やかなピアノの演奏技巧を

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          熊大フィル第60回定期演奏会を聴いて

          本日2024年1月14日は、熊本大学フィルハーモニーオーケストラの第60回定期演奏会を聴いてきました。指揮には若手で活躍していらっしゃる矢野雄太さんを呼んできていました。自分が熊本大学で受け持っている学生も演奏に参加していたので、嬉しく見ていました。 演奏曲目はモーツァルトの序曲と交響曲を1曲ずつと、シベリウスの交響曲でした。交響曲2曲という硬派なプログラムです。サマーコンサートでフレッシュな演奏を堪能したので、楽しみに聴きにいきました。 今回、全体を通して感心したのは、

          熊大フィル第60回定期演奏会を聴いて

          明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。本年も週一投稿を目指してnoteを続けていきます。読んでいただければ幸いです。

          明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。本年も週一投稿を目指してnoteを続けていきます。読んでいただければ幸いです。

          2023年振り返り

          2023年もいよいよ終わります。例年のごとくあっという間だった印象ですが、思い起こすとものすごくたくさんのことがありました。私にとっては何と言っても川崎から熊本に引っ越し、熊本大学で特任准教授の仕事を始めたことが一番大きな出来事でした。また、2019年に自分が受賞するまで長年羨望の眼差しで見ていた芥川也寸志サントリー作曲賞の選考委員を初めて務めたことも忘れ難い思い出です。作曲もたくさんしました。仕上げた作品は曲集3つです。3つというと少なく感じられる方もいらっしゃるかもしれま

          楽譜のお勉強【番外編】レオシュ・ヤナーチェク『カプリッチョ』(後編)

          先週の投稿に引き続き、ヤナーチェク作曲『カプリッチョ』のベーレンライター全集版の序文を翻訳しました。 全集版楽譜は専門的な研究者が主要な校訂課程に関わって出版されます。そのため、制作にあたって参照される資料も膨大で、内容の信憑性が高いとされています。ヤナーチェクはいくつかとても好きな曲がある作曲家で、いつか記事で取り上げたいと思っていました。作曲家と演奏家、出版社等、音楽を発表する作業にかかる時間や苦労などを追体験できるエピソードを読むことができて、とても考えさせられる内容

          楽譜のお勉強【番外編】レオシュ・ヤナーチェク『カプリッチョ』(後編)