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第82回:概算要求を企業の目線から分析する(こども家庭庁編)


1.なぜ、ビジネスパーソンが概算要求を理解しないといけないのか

8月31日に各省庁の来年度の予算の見積もりである概算要求が公表されました。この概算要求の内容は、年末の政府予算案決定に向けて、金額は多少変化したり、対象はしぼられたりすることはありますが、基本的に概算要求に乗った政策の多くは実現するものであることは、「第80回:概算要求公表直前!-予算資料の読み方を理解しておこう-」でも触れた通りです。

国の予算は遠い世界のこと、行政の世界のこと、ビジネスをしている自分にはあまり関係のないことだと思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。国の予算はビジネスの世界にも大きく影響します。

例えば、子育て世帯に配慮した住宅、施設改修について補助が出たとします。予算にアンテナを張っている設備改修の事業者であれば、概算要求をふまえて、いち早く顧客に連絡をとり、来年4月の予算執行を見据えた設備改修の提案をすることが可能となります。経営者の中には、国からの予算補助があるなら、設備更新をするような人もいるでしょうから、来年4月の予算執行を待たずして、先んじて営業を活動をしておくと、契約獲得の可能性が高まるでしょう。

また、国の予算は自治体への補助金という形をとることもあります。「自治体がこの政策に沿った投資を行うならその一部の資金は支援するよ」というたてつけです。予算が潤沢な自治体はごく一部です。新しいことをやるなら国の予算をうまく使って政策を実現しようと考える自治体も多いです。

一方で、自治体だけではうまく予算を活用できないケースもあります。最近のはやりのICT関係の予算を例にとると、自治体職員もシステム関係の部署の人でなければICTに詳しいわけではありません。補助金があるという情報だけではどう活用すればよいか分からないのです。

そこでICTが専門の企業が、概算要求の内容をいち早くキャッチし、自治体に解像度の高い提案を行うことができれば、自治体としてもよい予算の使い道がわかり、地域をよくすることができるのですからありがたいものです。提案企業にとっても、ビジネスを拡充することができます。winwinですね。
 

2.こども家庭庁の予算はどうなる?

こども家庭庁もほかの省庁と同様に概算要求の内容を公表しています。合計額としては、前年比微増の4.88兆円(前年は4.81兆円)ですが、実はこれがすべての金額ではありません。

8月末の段階では、例えば制度検討の結論が出ていないなどの理由で、予算額は確定しないけど、予算は確実に必要というものがあります。そういうものは項目だけ要求しておくので、「事項要求」といいます。事項要求の予算額も12月末には確定しますが、その分、予算総額は膨らむことが考えられます。

こども家庭庁は新しくできた省庁でもあり、政治の関心も強い分野であるため、新しい政策を実現できる環境にある省庁といえます。また、次元の異なる少子化対策で子ども関係の予算拡充の方針も出ています。こうした中で、新しい予算もたくさん打ち出されているため、民間団体や民間企業の方々もこども家庭庁の予算の活用を念頭において、子ども家庭庁や、自治体、さらには企業や民間団体への提案を行うことが必要になってきます。

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
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