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20231116

遠く婉曲したオゾン層の曲線
銭の話はぎざぎざすぎて、厭

こう考えるべきではないなどと
考えるべきではないなどと
考えるべきではない

水面に さかさの橋の映る
その橋を うろこを光らせた
死したさかなたちが往来する

さかなたちは 骨となり
歯や溶けた目玉を仄暗い水底に揺らし
いきたさかなの 横をすりぬける

死に鈍感になったひとびとが
アルコールで手をびしゃびしゃにし
病院の待合室に鮨詰めにされているのは
なぜだろうかと白色電球の乾いた疑問

死は得体の知れないものにされてしまった
それは生のすぐ隣にあって
だれの命とも繋がっている身近なものだったのに

死なない為に生きるひとびとは
無為に日々を消費し続けてゆく
まるで永遠があるかのようにして

あおの地平線にあかいどろどろした
ゆうやけが まざりあう

生きていく 続いていく
右足を出した後には
かならず左足を出さなければいけないように

そして心臓が動きをとめたあとは
次に死が続き
死の国が夕暮れ 翳るころには
また生のひかりがやってくる

気がつけば
母の羊水のなかで耳を澄ましていて
いまはここでこうしている

過去は記憶している物語のようなもので
これからくる未来は草案プロットのようなものでは
ないか

ならば 書き直してみたり
記憶を改竄してみてもなんら問題はあるまい

過去
ただそこには事象があるだけで
解釈は 思いの中で 無限に形を変える

いずれはすべて
死が洗い流してくれよう

いまは生き
まっとうすべきときだと地面が言う
いや地面が言ったように思っただけか
つちはなにもかたらない
おぼろな死の国ではできぬことを
ただ やり尽くしてしまおうではないか

騒がしさも 静けさも
ただの点に過ぎない
わたしたちは移動し続けている
今という 不確定な
瞬時にうつりかわってゆくのに
たしかにここにあるという
ふしぎな乗り物に乗って



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